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救出作戦決行出発前夜
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救出作戦の準備は猛ピッチで進められた。ほんの2週間しか準備期間が無い。ギルセナ王国に向かう行きの道中だけでも、どんなに急いでも3日はかかる。
クリスティーナは牢でおとなしくしているようで、レンブレント王からの連絡も無いようだった。もともと捨て駒としての価値しかなかったのだろう。見捨てられていることは、誰の目にも明らかだった。
結婚式に出席するのは6名。
アルフリード王子とクラウス騎士団総長、ユーリス騎士隊隊長、キアヌス騎士、マリス騎士、ヘル騎士の5名に、クリスティーナも連れて行く事になった。声が出せない彼女はその能力を封印されたのと同じである事と、アルフリードがクリスティーナをエスコートしていなければ、アルフリードらが彼女の転換の魔法の影響下にないことが、ばれてしまうからだ。
極力、敵には油断しておいて貰うほうが都合がいい。
我々はギルセナ国に秘密裏に小屋を用意した。セシリアを救出できたとしても、薬を使われている状態で、ウェースプ王国まで連れて帰るには、国内に入ってすぐ転移魔法を使ったとしても2日はかかる。ギルセナ国内で休める場所がどうしても必要だった。
ギルセナ国の王城からは少し距離があるが、立地条件で選ぶと自然とそこに決まった。そこなら敵が近づいてきたのも容易に確認でき、少し盆地になっているので、上からの攻撃に適している。万が一の可能性まで考えられて立てた計画だ。
ギルセナ王国に向かう前夜、全ての必要な準備の確認を終え、ユーリスはアルフリードがいるであろう部屋を訪ねてきていた。
「アルフリード王子。少しお話してもよろしいですか?」
ユーリスが問うと、アルフリードはユーリスを部屋に招きいれた。自分は一人掛けのソファーに座り、ユーリスをその隣のソファーに促す。そしてブランデーを侍女に届けさせるとユーリスにも勧めた。
二人は互いにグラスを手に持ちながら、話し始めた。ユーリスが口を開いたのが先だった。
「私がサクラに初めてあったのは騎士訓練場なんです。雑用係として紹介されて、とても威勢のいい輝く目をした少年だと思ったのが最初です」
アルフリードが微笑みながらいう。
「想像できそうだ・・・。あいつならそうだろうな」
「それから自然に目で追うようになって、気がついたら会うのを楽しみにしている自分に、気がついたのです。愛していると気がついたのは、ドルミグ副隊長の事件の時です。その時に彼女が女性であるとわかりました」
「奇遇だな・・・。オレもその事件の時に愛していると自覚した。ただ女と分かったのは随分後だったが。お陰で長い間、自分は少年が好きなのだと悩んだ」
二人が同時に苦笑する。グラスの中の琥珀色の液体が、体の揺れに合わせてまるで生き物のように揺れる。
「私は彼女を愛しています。たとえ彼女が誰を選ぼうとも、この気持ちは変わらないでしょう。この事件が終わったら、私はサクラにプロポーズしようと思っています。爵位も騎士の地位も捨てて、付いて来て欲しいと頼むつもりです。ですから、その時は私とサクラを見守っていただけないでしょうか」
アルフリードはブランデーを一口飲んで、いっとき思案した後で口を開いた。
「そうだな・・・。その時はオレが全面的にサポートしよう。それがサクラが望むことならばな」
ユーリスはそれを聞いて安心したような表情になり、その後ブランデーを一気に喉に流し込むと、最後に一言付け加えた。
「作戦の結果がどうなろうとも、お互い最優先はサクラということでお願いします。私は彼女のためなら、何だってやるつもりです」
アルフリードがユーリスの目を見つめブランデーを飲み干したと思ったら、グラスを持ったその腕を互いに絡ませる。これは古来から伝わる戦争に向かう前、戦友たちが共に交わす儀式だった。
「オレも同じ気持ちだ。心配するな。一緒にサクラを助けに行こう」
組んだ腕に力を込めながら、互いに決意を固くする
クリスティーナは牢でおとなしくしているようで、レンブレント王からの連絡も無いようだった。もともと捨て駒としての価値しかなかったのだろう。見捨てられていることは、誰の目にも明らかだった。
結婚式に出席するのは6名。
アルフリード王子とクラウス騎士団総長、ユーリス騎士隊隊長、キアヌス騎士、マリス騎士、ヘル騎士の5名に、クリスティーナも連れて行く事になった。声が出せない彼女はその能力を封印されたのと同じである事と、アルフリードがクリスティーナをエスコートしていなければ、アルフリードらが彼女の転換の魔法の影響下にないことが、ばれてしまうからだ。
極力、敵には油断しておいて貰うほうが都合がいい。
我々はギルセナ国に秘密裏に小屋を用意した。セシリアを救出できたとしても、薬を使われている状態で、ウェースプ王国まで連れて帰るには、国内に入ってすぐ転移魔法を使ったとしても2日はかかる。ギルセナ国内で休める場所がどうしても必要だった。
ギルセナ国の王城からは少し距離があるが、立地条件で選ぶと自然とそこに決まった。そこなら敵が近づいてきたのも容易に確認でき、少し盆地になっているので、上からの攻撃に適している。万が一の可能性まで考えられて立てた計画だ。
ギルセナ王国に向かう前夜、全ての必要な準備の確認を終え、ユーリスはアルフリードがいるであろう部屋を訪ねてきていた。
「アルフリード王子。少しお話してもよろしいですか?」
ユーリスが問うと、アルフリードはユーリスを部屋に招きいれた。自分は一人掛けのソファーに座り、ユーリスをその隣のソファーに促す。そしてブランデーを侍女に届けさせるとユーリスにも勧めた。
二人は互いにグラスを手に持ちながら、話し始めた。ユーリスが口を開いたのが先だった。
「私がサクラに初めてあったのは騎士訓練場なんです。雑用係として紹介されて、とても威勢のいい輝く目をした少年だと思ったのが最初です」
アルフリードが微笑みながらいう。
「想像できそうだ・・・。あいつならそうだろうな」
「それから自然に目で追うようになって、気がついたら会うのを楽しみにしている自分に、気がついたのです。愛していると気がついたのは、ドルミグ副隊長の事件の時です。その時に彼女が女性であるとわかりました」
「奇遇だな・・・。オレもその事件の時に愛していると自覚した。ただ女と分かったのは随分後だったが。お陰で長い間、自分は少年が好きなのだと悩んだ」
二人が同時に苦笑する。グラスの中の琥珀色の液体が、体の揺れに合わせてまるで生き物のように揺れる。
「私は彼女を愛しています。たとえ彼女が誰を選ぼうとも、この気持ちは変わらないでしょう。この事件が終わったら、私はサクラにプロポーズしようと思っています。爵位も騎士の地位も捨てて、付いて来て欲しいと頼むつもりです。ですから、その時は私とサクラを見守っていただけないでしょうか」
アルフリードはブランデーを一口飲んで、いっとき思案した後で口を開いた。
「そうだな・・・。その時はオレが全面的にサポートしよう。それがサクラが望むことならばな」
ユーリスはそれを聞いて安心したような表情になり、その後ブランデーを一気に喉に流し込むと、最後に一言付け加えた。
「作戦の結果がどうなろうとも、お互い最優先はサクラということでお願いします。私は彼女のためなら、何だってやるつもりです」
アルフリードがユーリスの目を見つめブランデーを飲み干したと思ったら、グラスを持ったその腕を互いに絡ませる。これは古来から伝わる戦争に向かう前、戦友たちが共に交わす儀式だった。
「オレも同じ気持ちだ。心配するな。一緒にサクラを助けに行こう」
組んだ腕に力を込めながら、互いに決意を固くする
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