《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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前聖女ハナ

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私は数日かけてなんとか内容を解読することができた。その内容はこうだ。

3種の宝飾は元は、前聖女ハナによって作られた1つの王冠だった。聖女ハナは魔力も有する聖女だったため、私よりもより多くの事が可能だった。

聖女ハナは自身の能力を、自分が死ぬ前に3つの宝飾に分けた。指輪は過去に戻れる能力、腕輪は未来に行く能力。そしてネックレスは空間を繋げる能力。それは次に現れる聖女ハナと同じ時を止める能力を持つ者の行動を監視、制限するために作られた。

その能力は聖女が時を止めた状態で、3種の宝飾のうちの一つを身に着けることで発現する。3種の宝飾を持つ者が呪文を唱えると、時を動かす能力を阻害することもできる。

「ということは、この本は前の聖女ハナが500年前に書いたものだってことね。それで聖女のあまりにも強大な能力が悪用されるのを恐れて、彼女が死ぬ前に残したものが3種の宝飾とこの聖女の書物・・・」

確かに過去や未来にまで自由に行きき出来た上に、空間まで繋げるという能力は、常識さえ覆してしまうほどの能力だ。世界を手に入れることも可能だろう。

だからこそ3種の宝飾を王家に託し、いつかは再び召喚されるであろう聖女の能力を制限するために使うつもりだった。

私はそこまで解読して、前聖女ハナに思いを寄せた。私と同じように、突然異世界に呼び出された幼い少女の事を・・・。彼女は幸せな人生を終えたのだろうか?

「何を考えているのですか?サクラ」

「ひゃっ・・・なに?!!」

そういえばユーリが同じ部屋にいることを、聖女の書物を解読することに熱中しすぎて忘れていた。この部屋に移動してから、ユーリは常に寝る時ですら私の部屋の前から動かないので、観念して私の寝室の隣の部屋にあるソファーで寝てもらっている。扉の前で寝られるよりも数段ましだからだ。ユーリ用に簡易ベットを用意してもらおうと思ったが、それはどうかと止められた。

私は突然現実に引き戻されて、びっくりしながらもなんとか返事を返す。

「あ・・・あの・・前の聖女の事が分かってきたというか・・・。やっぱり聖女の書物を読んでおいて良かったなって。いざとなったら過去に戻ればいいんだし、そうだ今のうちに未来に行ってみるのもいいかも。何が起こるかわかるじゃない?」

ユーリは一瞬考えて、答えた。

「未来に行くのはやめた方がいいですね。襲撃者が3種の宝飾を持つ者と同じ能力を有するというならば、彼らも君が見る同じ未来を見ることになる。ですから君が見た未来と同じ未来になるとは限らない」

「・・・・そうだよね。そこまでは考えていなかったかも」

「それに過去に行くという案ですが、それは君が死ぬ前でないと意味がないことを覚えておいてください。しかも過去に行くためには時を止めているときに、私の指輪を君がはめなくてはいけない。という事はその間、私は君を守ることができない。かなり危険を伴いますので、できればその手は使わない方向でお願いします」

「そうだね。そう考えると時を止める能力すら使わないほうがいいよね。だって襲撃者も時を動かす能力を阻害することができるかもしれないから。あの時、セイアレス大神官がやった時と同じように・・・」

私は前回のセイアレス大神官とエルドレッド第2王子との戦いを思い出して、背筋に冷たいものが走った。何とか気を取り直して、長椅子に腰掛けているユーリの方を向いて言った。

「色々、実験とかしてみたかったんだけどな。でも時を止めるのはやめておいた方がよさそうだから諦める。あと私がやらなきゃいけないリストに書いたのは・・・聖女であることを受け入れるって事なんだけど・・・」

これはもうかなり自分の中では認めるようになってきた。というか、こんなすごい能力があるというだけで、聖女以外の何者でもない気がする。かといって人々を助けることができるかと言ったら、それは別の問題だ。

大魔獣が出現したときに時を止めて、やっつける事位しかできそうなことはない。聖女の能力を見る限り、年々取れなくなってきた魔石をどうこうしたりもできない感じだ。さすが犯罪と殺人にしか取り柄のない地味な能力だ。

「サクラは立派な聖女様ですよ。私はこんなに綺麗な魂を持った人を見たことがありません。聖女様は人を助けるのではなく、人を救うものなのです。私はもう既に大魔獣から君に救ってもらいましたよ。それにイワノフ町の町民たちみんなもです」

そういって柔和な微笑みを返してくれる。相変わらずの甘々だなぁ、ユーリは・・・。私はこうやっていつもユーリに甘やかされてばかりだ。私が死ぬようなことになれば、恐らくユーリも死んでしまうだろう。それくらいユーリは私を、自分の人生の全てだと思ってくれている。それはとても甘くてこそばゆくて、そしてとても怖くて恐ろしい。

私はユーリに微笑みを返して、もう寝ることにした。私に用意された部屋は二間続きで一部屋は書き物ができたりする机や軽くお茶ができる丸テーブルなどが置かれている。扉を挟んで隣が寝室だ。

ユーリは寝室の隣の部屋で眠っている。つまり私の寝室はアルとユーリの寝ている場所で挟まれているということだ。これ以上安全な場所は王城にはないだろう。しかも私の部屋の扉の前では騎士様達が2名ずつ交代で護衛してくれている。

「ユーリ、おやすみなさい。また明日ね」

私はネグリジェを着てガウンを羽織った姿のまま寝室に移動する。そういえばユーリの寝間着姿を見たことがない。寝る前も同じ格好で、私が起きるころにはもう既に起きていて、すぐに戦闘を開始できる格好にまた戻っている。

「ちゃんと、ゆっくり寝てね。もしかしたらもう襲撃者なんて来ないのかもしれないし、いつまででもこんな生活していたら体を壊しちゃうよ」

私は念を押しておいた。ユーリがまたいつもの溺愛マックススマイルで返す。

「大丈夫ですよ。常に君の傍にいられるだけで、物凄く幸せですから体調も万全です。心配してくれてありがとう」

その後、私は定期的に開かれる非公式会議で、聖女の能力について知りえたことをみんなに伝えた。3種の宝飾を作った者が前聖女ハナであることは予測されていたようだが、腕輪とネックレスの能力については驚いたようだ。

結局、ユーリと話し合った時と同じ結論に達して、私は能力を使わないことがいいと結論づけられた。

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