《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか？

襲撃者 ジルとギア

赤やけの夕暮れ時、ウェースプ王国を代表する大都市、ヒルデン市で一番高い位置にある市庁舎の屋根の上で、二人の男が夕日を背にして立っていた。その男たちは若く精悍な顔つきをしていて、共に白い髪と赤色の目をしている。着ているものは動きやすそうな麻の上下で、腰のあたりに珍しい武器を下げている。

一人の長い白髪を後ろで一つにまとめている男が先に口を開いた。

「ジル、これからどうするんだ？あのユイカって女は例の聖女じゃなかったんだぜ。恐らくあの大神官がどこかに隠しているに違いないんだ」

そうすると、もう一人の白髪を肩まで伸ばしっぱなしにしている方の男がそれに答えた。

「そうだな。正体がわからなければ殺りようがない。時が止まったのも過去に戻ったのも確かだから、この王国のどこかには存在するはずだ。こうなったらあの手を使うしかないか・・・ギア」

ギアと呼ばれた男は屋根に腰を下ろすと、バルナス神殿の方角を見つめる。

「オレたちはこの為だけに生きてきたんだ。目的を達成しなければあの方に顔向けできない。そうだろ」

二人の男は顔を見合わせると、神殿の方角にその武器の照準を合わせた。ジルの二つの短剣と、ギアの円状の暗器が夕日に照らされて光を増す。

「行くぞ！！ギア！！」

「ああ！！ジル！！」

何分もしない内に、夕方のヒルデン市の神殿に爆音と人々の悲鳴が響き渡った。