勘違い聖女とドS鬼畜王の攻防 

南 玲子

文字の大きさ
5 / 43

イケメン デュークと出会う

しおりを挟む
私の異世界での就職活動は、結果的には惨敗だった。


2メートルの巨体ではさすがに町に降りると怖がられてしまうので、レオールには小さい犬サイズになってもらい町を案内してもらう。守護獣は獣の姿の時は人にも見えるらしい。ただ話ができるのが聖女だけというだけで・・・。なのでレオールは現在、日本の黒豆芝の姿になってもらった。

(これは私の趣味で・・・うへへ。ずっと黒豆芝、飼いたかったんだ)

町は比較的清潔で活気もあって、まるで大学の卒業旅行に行った中世のヨーロッパのような町並みだった。浮かれて職業案内所に入り、今日一日でもう5つも面接を受けたがどれも不採用。そりゃそうだよね。紹介状も無い身元も良く分からない人物を雇おうなんて人はそうもいないだろう。

私ってば日本でも異世界でもダメ人間なんだ・・・うぅぅ・・なんてね!!

こんなことで諦めてちゃ何百社の不採用通知を乗り越えてきた私の女が廃る。かくなる上はある物はなんでも使おうお涙作戦だ。私は豆芝に・・・・いやレオールに作戦を授けた。

私の作戦はこうだ。大通りに出て金持ちそうな馬車が通ったらレオールがその前に飛び出して、怪我をした振りをする。そこに涙ながらに私が出て行って、病院に連れて行くお金がないと泣く。仕事さえ見つかればレオールを病院に連れて行けるのに・・よよよ・・・。

これにいたく感動した馬車に乗ったお金持ちのおじ様が、私にお屋敷の仕事を世話してくれる。この作戦のキモは、いかに同情を引くかだ。私の妙に派手なワンピースと10センチヒールに気づかれないように、スライディング土下座張りにレオールに駆けつけよう。犯罪すれすれだが、お金を貰うわけじゃない仕事を貰うわけだから構わないだろう。そろそろ陽が落ちかけて暗くなってきたから、うまくいくに違いない!!

「ユリカ。本当に守護獣のわしにこんなことをさせるのか?宝石はいらないのか?」

レオールは今朝から事あるごとに、私に宝石を勧める。私は小さいサイズになって見下ろす形になった、黒豆芝・・・いやレオールを見下ろして史上最強にぞんざいに言い放った。

「しつこい。宝石はいらない。仕事が欲しいの。あなた私のガイドでしょう?レオールの演技力にもかかってるんだから宜しくね。これがうまくいったら3つのお願いしてあげてもいいから、頑張るのよ!!」

「・・・・!!!わ・わかった・・。善処する」

早速、大通りに面した路肩で、私はレオールを腕の中に抱っこしながら、お目当ての馬車を探す。おあつらえ向きに白色に金色の豪華な装飾をした馬車がこっちに向かってやってきた。私は小さい声でレオールに囁く。

「この馬車にしましょう。早くしないとまた野宿になっちゃう」

まあ野宿もレオールがいれば、何の問題も無いのだけれどね。だって護衛的にも安心だし、宿の代わりとしても完璧だ。あの金色の柔らかい毛。もふもふ。ぐふぅ。あれは癖になりそうだわ・・・。そう考えているうちに、その瞬間がきた!!

黒豆芝・・・もといレオールが馬車の前に飛び込み、2頭の馬が前足を大きく振り上げて突然その歩みを止める。そこに私が待ってましたのスライディングをかまし、豆芝を両腕にかき抱く。レオールはうまく死にそうな振りをしてくれている。よしよし。計画どおりだ!!

そこに馬車から、お金持ちのおじ様が降り・・・あれっ?訂正。そこに馬車から、お金持ちの超絶イケメン男子が降りてきた。

「大丈夫ですか?」

もうテンプレのイケメンだわね。輝くような金色の髪にターコイズブルーの眼、その引き締った体つきは服の上からでも、ちょうどいい筋肉がついていることが予測できる。しかも口を開けば、ものすごい甘い声で普通の女の子なら、腰を抜かして絶叫するレベルのテンプレイケメン。

私?私はイケメンには興味が無い。 というかお近づきになりたくすらない。なぜかというと、私の元彼も俗に言うイケメンだった。

身長は182センチの長身で、しかもその流れるようなストレートの黒髪に整った顔立ち。柔らかい身のこなし。実際、学生の時にモデルをしていた時期もあったらしい程の正統派イケメン。けれども奴はその柔和な顔に似合わず中身はドSの悪魔だったのだ。

あんな男に花の盛りの一番いい時期を4年も捧げてしまったことには、いまだ後悔してもし足りない。そのトラウマから、私はこの世のイケメンにはちっとも心を動かさない女になった。

イケメン、怖い。イケメン、怖い・・・。ぶるぶる・・・。


何とか気を取り直して、あらかじめ考えてあった台詞を言う。

「ああー私のレオール!亡くなった母が残してくれた唯一の犬なのに、死んじゃうなんて!!」

かなり芝居がかった台詞だが、そのくらいのほうが同情を引きやすいだろうと思って必死で考えた。

「私に仕事さえあれば・・・このこを病院に連れて行って上げられるのに・・・」

じとぉっと、金持ちイケメンを見つめる。どうだ!!参ったか!!はやく仕事くれっ!!!

私達の必死の演技にもかかわらず、イケメン様は私達を見つめたまま固まったように動かない。馬を操っていた御者の人が、その様子を見て口を挟む。

「デューク様・・・・」

その声で我に返ったように動き出したイケメン様は、こうおっしゃいました。

「それは大変だ。私の城で手当てをするといい。うちには優秀な獣医がいるから心配しなくていい。さあ、お乗りなさい」

え?まあ、ちょっとシナリオからは逸れているけど、仕事貰えるかも知れないからとりあえずついていってみよう。危ない目に合いそうなら、うちの護衛(レオール)がいるから心配ないし。と、私は何の考えも無しに、馬車にレオールと共に乗り込んだ。

そのときの私は全然気がついていなかった。この城下町のあちこちに刻まれているエンブレムとその同じ紋章のラペルピンを、このお金持ちイケメンがしていた事に・・・・。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...