勘違い聖女とドS鬼畜王の攻防 

南 玲子

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レオール 正体がばれる

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馬車から降りたら、そこにはたくさんの侍従と侍女が並んで、イケメン様とぶすくれ嬢を出迎えた。

イケメン様がぶすくれ嬢になにやら囁いた。そうしたら令嬢はにこやかに他の侍従と一緒に何処かに消えていった。

おお。後で寝室にでも行くよ。今夜は寝かさないよ・・ベイビー。みたいな事をおっしゃったんでしょうかね。リア充。恐れ入ります・・・。

私たちはイケメン様と数人の従者に連れられて部屋に案内された。やはり城と形容されるだけあって、そこまでにいたる廊下も部屋もすべてが絢爛豪華の一言に尽きる豪奢な建物だった。

案内された部屋は、部屋ひとつで私の日本で住んでいたアパートと同じ広さの大きさだった。

そこは応接室なのだろうか、向かい合わせにして置かれたソファーや隅のほうには丸テーブルと椅子がその周りに配置されている。大きな窓から見える庭は、薄暗くてあまり見えないがかなり広くてたくさんの花が咲いているようだった。

 < 同情するなら仕事くれ > と言うタイミングを見計らっていた私は、ぞろぞろついてきていた従者たちをイケメン様が下がらせたのに気がつかず、いまだにレオールを腕に抱いたまま数々の高級そうな調度品に感動していた。

ほぉ。こんなに金持ちなんて、どんな悪事をしてきたんだろうこのイケメン様は。

百合香には元彼のせいで根強い偏見があった。元彼は対外的には柔和なイケメンだけれども、実のところはドSの鬼畜野朗だった。

なぜか百合香にだけその仮面を脱ぎ捨て、惜しげもなくそのドSぶりを見せ付けられたトラウマで、金持ちになるのは悪事に手を染めたからだと思いこんでいた。

実際、元彼は犯罪すれすれの悪事を働き、親から譲られた小さな会社を10年で世界的企業にまで成長させた。

表面的にはにこやかに接していながら、裏ではその人物を陥れる算段を楽しげにしている元彼に、私が愛想を尽かせたのも無理からぬことだと思う。

腹黒ドS魔王の元彼と別れるために私はありとあらゆる手段を講じて、裏をかき、頼れるつては全部使い、最後になんとか逃げ切った。

もう同じ世界にすらいないと思うとせいせいする。やっぱり男は誠実でまじめで実直で、普通が一番だとあの時痛切に思った。

突然のイケメン様の声で現実に引き戻される。

「ところでその犬。怪我をしているのでしょう?獣医が来るまで私が少し具合を診てあげる」

おおっと。この人ただの極悪金持ちイケメン様じゃなくて、医療の真似事にも長けていらっしゃると??!でもまずい。診られるとピンピンしているのがばれてしまうかもしれない。心なしか腕の中のレオールがイケメン様の言葉にぴくっと反応した。

「あの・・・このような駄犬に貴方様のお手を煩わせる必要はございません。それより私に仕事を紹介してはいただけないでしょうか?どんな仕事でも構いません。あ・・・できれば正社員で終身雇用でお願いします」

私はできるだけ平静を装いながら、ここぞとばかりに仕事をねだった。イケメン様が破顔一笑する。

「はっはっはっ!!」

一体どうしたと言うのか・・?やっぱり正社員で終身雇用というのは欲深すぎてしまったのだろうか。私はお腹を抱えて爆笑するイケメン様に向かって、小さい声で言った。

「あのー。じゃ最初は契約社員でもいいです・・・派遣社員でも構いません。とにかく仕事ください・・・」

イケメン様は笑いすぎで目に浮かんだ涙を拭うと、こうおっしゃった。

「君は面白い女性だね。この犬のこと・・私が分からないとでも思った?」

すわっ。やっぱり怪我していないことがわかってたんだ!!レオールの奴、こっそり笑ってたからね。ぶすくれ嬢が見たんだから位置関係的にイケメン様が見ていたとしてもおかしくない。ここはとにかく退却だ!!と思いレオールにもとの姿に戻ってもらって・・・と考えている間にイケメン様が続ける。

「この犬。守護獣だろう?いやもう君の守護精霊になったのかな?聖女様」

私はあまりの衝撃に、腕の中に抱いていたレオールを床に落としてしまった。

バ・レ・タ?
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