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強引な男は騎士団長
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悲しく目を伏せた愛の頬にダグラスが指先を当てた。慰めようとでもしているのだろうか。愛は目線をあげて、彼を見た。
「よくわからんが、任務が終わったんなら国には戻らずに俺の世話係になれ。まぁ、嫌だといってもどのみち帰す気はなかったがな。いまは遠征中だが終わったら一緒に帝国に連れて行ってやる。どうだ、嬉しいだろう」
なんて強引な男なのだろうか。その言い方に沈んだ気持ちも吹きとび、代わりに苛立ちが募る。でも彼女に断るという選択肢はない。
「わかったわ、あなたの世話をすればいいのね。私、体育会系だからそういうのは得意よ」
愛の頭の中には、中学高校と続けてきた剣道部が思い浮かんでいた。後輩が先輩の防具や胴衣を片付けたり汚れを掃除したりするのだ。大会の時にはタオルの用意や水の支度。下級生が甲斐甲斐しく上級生のお世話をするのが習わし。
とにかく服を着なければとダグラスに要求すると、銃も含めて愛の身に着けていたものはあっさり返してもらえた。少なくとも銃は彼を傷つけた武器なので無理かと思っていたのに。拍子抜けする。
「そうだ、ほかの騎士にはお前が女だと知られない方がいいぞ。遠征中でみんな女不足だからな。今夜はこうして宿で眠れるがいつもそうとは限らない。テントで野営の夜もある。あっという間に妊娠してしまうぞ」
「わ、わかったわ。気を付けるようにする」
その言葉にぞくっとする。野獣のような男たちに襲われると考えただけで寒気がした。
そう答えた瞬間、いきなり手首を掴まれて引っ張られた。ダグラスの顔がすぐそばに見えてもう少しで触れそうになる。
ダグラスは自分が座っている椅子の背もたれに寄り掛かりながらそれを傾けた。そうして刹那、彼の唇が愛の唇に重なる。
「きゃっ! なにす……んんっ!」
柔らかい他人の肌の感触が、一番薄い皮を持つ部分で感じられる。ダグラスの手は節くれだって硬いが、意外にその唇は温かい。愛の頭の中は戸惑いと疑問で一杯になる。
(な、なに? 私、キスされているの?! どうして……?)
あまりのことに頭が回らない。愛がぼうっとしていると舌が唇の間をこじ開けられて侵入してきた。瞬間、愛は我に返って叫ぶ。
「やめてっ!」
愛はダグラスの舌にかみつくと、掴まれている方とは反対の手で肩の傷めがけて突きをくりだす。彼の手が緩んだすきを縫って椅子の背もたれを後ろに蹴飛ばし、すばやくベッドから出て立ち上がった。
それはあっという間の出来事。彼女の手には小さなナイフが握られていて、その切っ先はダグラスに向けられる。
「それはっ……俺のか。いつの間に……」
ダグラスは体勢を立て直すと、腰のあたりを確認している。それは彼が腰につけていたナイフだった。唇から流れる血をぬぐいながらダグラスは満足そうに笑う。
「はははっ、二度までも俺に血を流させるとはな。とにかく今日は服を着る必要はないだろう。このまま俺と寝るんだからな」
「寝るって、世話係だとしてもそんな世話まで引き受けたつもりはないわ! そこをどいてっ! あなたとそんなことするくらいならここから出ていく」
愛は憤然とダグラスにナイフを突きつけるが、彼はものともしない。
「もちろんその意味も含めた世話係だったんだが、まさかそんなに嫌がられるとは思ってもみなかった。普通の女なら大喜びするところだぞ。だが今日はさすがの俺も五時間ぶっ続けで魔獣と闘って疲れているんだ。やらないんならさっさと寝るぞ、アイ。お前はどうしたいんだ?」
「あなたとなんか、やるわけないじゃないっ!」
「そうか、わかった」
そう静かに答えたかと思うと、ダグラスは自分がさっきまで座っていた椅子を蹴り上げる。椅子が床に落ちる大きな音が部屋の中に響いた。
(私の気を逸らそうとする作戦ね。そんな手には乗らないわ!)
ナイフの柄を握りしめ、愛は自分の意識を椅子ではなく彼に集中させた。その途端、なぜか彼女の体を隠していたシーツがどこかに行ってしまう。
ダグラスがシーツを引っ張って奪ったのだ。まさかそんな戦術でくるとは思わなかった愛は混乱する。
「きゃっ! やだっ!」
あっという間に形勢逆転だ。真っ裸の愛はその場でしゃがみこむしかない。ナイフもあっけなく奪い返されてしまった。
(どうしよう! まだ戦うとしたら空手の技しかない。でも足を振り上げるのだけは絶対に嫌っ!)
「逮捕よ! 逮捕っ! ダグラスっ!」
ダグラスはそのまま愛の体を抱きしめるとベッドの上に乗せ、その上に自分の体を沈みこませた。いくら暴れてもダグラスの腕から抜けることはできない。
抵抗し続ける愛をものともせず、ダグラスは自分と彼女の体の上に、持っていたシーツをかけた。そうして大きなあくびをする。
「わかった、わかった。アイ。あぁ、いっておくがここから抜け出そうとしない方がいいぞ。俺の部下が四六時中見張っているし、外は魔獣もわんさかいる。俺に抱かれてから死ねばよかったと後悔する羽目になるからやめとけ。とにかくいまはおとなしく寝ろ。いいな」
魔獣という言葉にドキリとする。確かにここは彼女の知らない世界。どんな敵が潜んでいるかわからないのだ。
(や、やだ。あんな変な生き物がもっといるっていうの?!)
一気に反抗する気持ちを削がれる。ふと気が付いたときには、ダグラスは大きないびきをかきながら眠ってしまっていた。ダグラスに乗られている体勢だが、少し斜めに眠っているせいかそれほど重くは感じない。
もう寝るしかなさそうだ。愛は暴れるのは諦めて目を閉じた。
(ポ、ポジティブに考えよう。何か危ないことが起こっても先にダグラスがやられるはず。だから私は安全)
いい方に考えようとするが無理がありすぎる。やっぱりダグラスへの怒りしか湧いてこない。いろいろ考えなければいけないことがあるはずなのに、彼のいびきにつられたのか愛もそのまま眠ってしまった。
そうして愛は遠征中の騎士団とともに、騎士団長の世話係として同行することになったのだ。
「よくわからんが、任務が終わったんなら国には戻らずに俺の世話係になれ。まぁ、嫌だといってもどのみち帰す気はなかったがな。いまは遠征中だが終わったら一緒に帝国に連れて行ってやる。どうだ、嬉しいだろう」
なんて強引な男なのだろうか。その言い方に沈んだ気持ちも吹きとび、代わりに苛立ちが募る。でも彼女に断るという選択肢はない。
「わかったわ、あなたの世話をすればいいのね。私、体育会系だからそういうのは得意よ」
愛の頭の中には、中学高校と続けてきた剣道部が思い浮かんでいた。後輩が先輩の防具や胴衣を片付けたり汚れを掃除したりするのだ。大会の時にはタオルの用意や水の支度。下級生が甲斐甲斐しく上級生のお世話をするのが習わし。
とにかく服を着なければとダグラスに要求すると、銃も含めて愛の身に着けていたものはあっさり返してもらえた。少なくとも銃は彼を傷つけた武器なので無理かと思っていたのに。拍子抜けする。
「そうだ、ほかの騎士にはお前が女だと知られない方がいいぞ。遠征中でみんな女不足だからな。今夜はこうして宿で眠れるがいつもそうとは限らない。テントで野営の夜もある。あっという間に妊娠してしまうぞ」
「わ、わかったわ。気を付けるようにする」
その言葉にぞくっとする。野獣のような男たちに襲われると考えただけで寒気がした。
そう答えた瞬間、いきなり手首を掴まれて引っ張られた。ダグラスの顔がすぐそばに見えてもう少しで触れそうになる。
ダグラスは自分が座っている椅子の背もたれに寄り掛かりながらそれを傾けた。そうして刹那、彼の唇が愛の唇に重なる。
「きゃっ! なにす……んんっ!」
柔らかい他人の肌の感触が、一番薄い皮を持つ部分で感じられる。ダグラスの手は節くれだって硬いが、意外にその唇は温かい。愛の頭の中は戸惑いと疑問で一杯になる。
(な、なに? 私、キスされているの?! どうして……?)
あまりのことに頭が回らない。愛がぼうっとしていると舌が唇の間をこじ開けられて侵入してきた。瞬間、愛は我に返って叫ぶ。
「やめてっ!」
愛はダグラスの舌にかみつくと、掴まれている方とは反対の手で肩の傷めがけて突きをくりだす。彼の手が緩んだすきを縫って椅子の背もたれを後ろに蹴飛ばし、すばやくベッドから出て立ち上がった。
それはあっという間の出来事。彼女の手には小さなナイフが握られていて、その切っ先はダグラスに向けられる。
「それはっ……俺のか。いつの間に……」
ダグラスは体勢を立て直すと、腰のあたりを確認している。それは彼が腰につけていたナイフだった。唇から流れる血をぬぐいながらダグラスは満足そうに笑う。
「はははっ、二度までも俺に血を流させるとはな。とにかく今日は服を着る必要はないだろう。このまま俺と寝るんだからな」
「寝るって、世話係だとしてもそんな世話まで引き受けたつもりはないわ! そこをどいてっ! あなたとそんなことするくらいならここから出ていく」
愛は憤然とダグラスにナイフを突きつけるが、彼はものともしない。
「もちろんその意味も含めた世話係だったんだが、まさかそんなに嫌がられるとは思ってもみなかった。普通の女なら大喜びするところだぞ。だが今日はさすがの俺も五時間ぶっ続けで魔獣と闘って疲れているんだ。やらないんならさっさと寝るぞ、アイ。お前はどうしたいんだ?」
「あなたとなんか、やるわけないじゃないっ!」
「そうか、わかった」
そう静かに答えたかと思うと、ダグラスは自分がさっきまで座っていた椅子を蹴り上げる。椅子が床に落ちる大きな音が部屋の中に響いた。
(私の気を逸らそうとする作戦ね。そんな手には乗らないわ!)
ナイフの柄を握りしめ、愛は自分の意識を椅子ではなく彼に集中させた。その途端、なぜか彼女の体を隠していたシーツがどこかに行ってしまう。
ダグラスがシーツを引っ張って奪ったのだ。まさかそんな戦術でくるとは思わなかった愛は混乱する。
「きゃっ! やだっ!」
あっという間に形勢逆転だ。真っ裸の愛はその場でしゃがみこむしかない。ナイフもあっけなく奪い返されてしまった。
(どうしよう! まだ戦うとしたら空手の技しかない。でも足を振り上げるのだけは絶対に嫌っ!)
「逮捕よ! 逮捕っ! ダグラスっ!」
ダグラスはそのまま愛の体を抱きしめるとベッドの上に乗せ、その上に自分の体を沈みこませた。いくら暴れてもダグラスの腕から抜けることはできない。
抵抗し続ける愛をものともせず、ダグラスは自分と彼女の体の上に、持っていたシーツをかけた。そうして大きなあくびをする。
「わかった、わかった。アイ。あぁ、いっておくがここから抜け出そうとしない方がいいぞ。俺の部下が四六時中見張っているし、外は魔獣もわんさかいる。俺に抱かれてから死ねばよかったと後悔する羽目になるからやめとけ。とにかくいまはおとなしく寝ろ。いいな」
魔獣という言葉にドキリとする。確かにここは彼女の知らない世界。どんな敵が潜んでいるかわからないのだ。
(や、やだ。あんな変な生き物がもっといるっていうの?!)
一気に反抗する気持ちを削がれる。ふと気が付いたときには、ダグラスは大きないびきをかきながら眠ってしまっていた。ダグラスに乗られている体勢だが、少し斜めに眠っているせいかそれほど重くは感じない。
もう寝るしかなさそうだ。愛は暴れるのは諦めて目を閉じた。
(ポ、ポジティブに考えよう。何か危ないことが起こっても先にダグラスがやられるはず。だから私は安全)
いい方に考えようとするが無理がありすぎる。やっぱりダグラスへの怒りしか湧いてこない。いろいろ考えなければいけないことがあるはずなのに、彼のいびきにつられたのか愛もそのまま眠ってしまった。
そうして愛は遠征中の騎士団とともに、騎士団長の世話係として同行することになったのだ。
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