召喚された女刑事は強引騎士団長に愛でられる

南 玲子

文字の大きさ
18 / 36

帝王の驚くべき姿

しおりを挟む
城主に見送られて、愛たちは翼竜に乗って再び上空にのぼった。ここからは一直線に帝都を目指すのだそう。

いままでは深い森の間に時々街を見つける程度だったのに、帝国では森と街の比率がまるで逆だ。どこを見ても360度家並みが広がっている。

(隣国だというのにこんなにも国力が違うんだ。ここで国境沿いだっていうんだったら帝都は一体どうなるの?!)

「飛ばせば昼過ぎまでにはつくだろう。エヴァン! お前は先頭で進路を取れ!」

「はいっ! 団長!」

前方に翼竜を移動させたエヴァンが、含みのある目で愛を見た。その理由を愛は知っている。ダグラスは安全そうだと判断した場所ならば彼を先に行かせるのだ。

(そうすれば私にかかる風力が少なくなるから……本当に気遣いがなさそうに見えて優しいんだから……)

そっと顔を上げるとダグラスと目が合う。愛は昨日の夜のことを思い出して体が火照ってきた。すぐに顔を下ろしてミリリアにしがみつく。

もうこんな風に一緒にミリリアに乗ることもないのだと思うと、寂しくなる。

(ダグラスの腕の中は、すごく気持ちが落ち着くのに)

「町が見えてきたぞ、帝都だ!」

お昼を過ぎたころ、無事に帝都についた。翼竜を地面に降ろして、それからは翼竜の背に乗ったまま歩かせ王城に向かう。

そこも歓迎ムードでたくさんの人が彼らの帰還を祝っている。色とりどりの風船が宙を舞う様子は、まるで何かのパレードのよう。

帝都は大きな山を囲むように町が発達していて、その頂上に王城が堂々とそびえたっていた。

大きな湖にところどころで見かける噴水。王城から放射線状に広がる町並みは圧巻だ。そこで見かける人々はみんな生き生きと生活している。見たこともない犬型の使役魔獣を連れている人もちらほらと見かけた。

「すごい、ダグラス様。いままで見たところと全然違います!」

「ははっ、そうだろうアイ。ここが世界の中心、ギリア帝国の首都、帝都だからな」

王城の入り口に立つと、ダグラスは騎士達とともに翼竜から降りる。翼竜たちはすぐに体を小さくして騎士らの肩に飛び乗った。

ダグラスはトーマスらに愛のことを頼むといって、彼女を後方に下がらせる。近衛兵の勇ましい掛け声を合図に、重々しい門がゆっくりと開かれた。

そこには数名の男性が立っていて同時に騎士達に向かって深々と頭を下げた。城の外とはまるで違ってとても静か。

けれども見え得るどこの視界にも人がいて、騎士達の一挙手一投足を羨望の目で見守っている。そうしてその誰もが高貴な人々だと分かる服装をしていた。

愛と騎士隊らは、城の中に招きいれられどんどん奥に進んでいく。

さすがの騎士達も緊張しているようで先ほどから一言も話さない。いつもはあまり言うことを聞かないやんちゃな翼竜たちまでも、今回ばかりはおとなしくみんなの肩に乗っている。愛まで緊張してきた。

帰還を祝い廊下に並んでいる人たちが時々愛のことを不思議そうに見ている。

愛の肩にはダグラスの翼竜がのっているのだ。城内では使役魔獣を連れている人の割合がぐんと高くなったが、翼竜を連れているものはほんのわずか。しかも翼竜は契約者にしか懐かないはずなのに、何者なのだろうと考えるのは当然だ。

大きな柱が何本も建っている王の間に通されると、その場の空気がピンっと張りつめたものに変わった。なんの音もない緊張した場には、想像を上回るほどの人々が左右に並んでいる。

そうしてその一番先にある一段上がった場所にある、どう考えても王の座に座る者がいる。彼の右隣りにはライオンのような姿の魔獣が、小さく唸りながらこちらを睨んでいた。体はライオンだが尻尾は蛇のようだ。

「あれが帝王様の守護魔獣でカルラというんだ。奴らには実体がないが、その力は超大型魔獣をもしのぐといわれている。血の契約を結んだ主人のみが呼び出せる煙の化け物だ」

トーマスさんが愛に耳打ちして教えてくれた。確かに他の使役魔獣と違って、輪郭の部分が煙のようにゆらゆらと揺れている。まるで太陽のフラムのよう。

帝王は黄金色の髪に金色の瞳で、まるで人形のように整った顔をしている。けれども愛が驚いたのはそこではない。帝王は身長約百四十センチほどの少年だった。

(まさか、この少年が帝王様なの?! まだほんの子供じゃない)

王座に足を組んでひじ掛けに肘をつき、こめかみに拳をあてて威厳のある声を出す。この部屋のにいる誰よりも尊大で豪胆だ。

「ダグラス、よく無事で戻ってきたな。虹のオーブ採取に向かって、しかも騎士の誰一人も欠けずに戻ってきた遠征隊はしらん。相変わらずお前は俺を驚かせる天才だな。で、もちろんオーブは採ってきたんだろうな」

王の間にいるすべての人が跪く中、ダグラスが立ち上がった。

「オルレリアン帝王。お望みのオーブならここに……」

ダグラスが他の五つのオーブとともに虹のオーブを出すと、王の間はどよめきに湧いた。落ち着き払った様子の帝王も、さすがに顔色を変えて王座から立ち上がる。

「これが伝説の虹のオーブか、まさか本当に採ってくるとはな」

側近にオーブを手渡され、帝王はそれをじっくりと眺める。彼がオーブを覗き込んだ瞬間、オーブが虹色に輝き始めて部屋全体を虹色に染めた。

オーブを中心に空気が放射状に放出されたようだ。ぶわぁっと風が吹いてきたかと思ったら、虹色の幻想的な光景が広がる。愛は思わず息を呑んだ。

(すごい……すごく綺麗……!)

「黄金の瞳を持つ帝王様しかオーブの魔力を発現できないんだ。オーブの力で帝国の全土の動力源がまかなわれてる」

トーマスがまた小さな声で教えてくれた。ということはオーブは発電所みたいなものなのだろうか。

「よくやった、ダグラス。褒めてやろう。お前は帝国一の騎士だ」

「ありがとうございます、帝王様」

帝王はダグラスに誉め言葉をおくると、臣下に騎士達への褒美を読み上げさせた。愛にはよく理解できなかったが、参列している人たちの反応を見るにみんなかなり価値のあるものをいただいたらしい。

部屋から出るとき、愛はなんだか視線を感じたがすぐに忘れてしまった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。 彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。 そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。 幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。 そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい
恋愛
結婚十年、子どもも授かり、日々執務と子育ての毎日。 穏やかで平凡な日々を過ごしていたある日、夫が大切な人を離れに住まわせると言った。 偶然助けた私に一目惚れしたと言い、結婚し、可愛い子ども達まで授けてくれた夫を恨むことも憎むこともしなかった私。 初恋すら知らず、家族愛を与えてくれた夫だから。 でも、夫の大切な人が離れに移り住んで、私の生き方に変化が生まれた。 2025.11.30 完結しました。 スピンオフ『嫌われ悪女は俺の最愛〜グレイシアとサイファの恋物語〜』は不定期更新中です。 【2025.12.27追記】 エミリオンと先に出逢っていたら もしもの世界編は、諸事情により以下に移動しました 『今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜』 よろしければ、ご訪問くださいませ いつもありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

処理中です...