日々日常物語

エビフライ

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桜の季節、春ともに

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春である。桜を見上げて、キャッキヤッと騒ぐ季節である。無論、その中に自分は含まない。そして、何かとリア充が増殖する季節でもある。
先ほどから前を歩く男女を、康太は睨む。朝っぱらから、見せつけてきやがってこの野郎。しかも相手の男の方が、康太と仲がいい佐藤 巧実であるからよっぽど腹が立つ。巧実の後ろ姿を見て、追っかけてきたら隣に女子がいたので、近づきたくても近づけず。行く道も一緒なので、引き返すわけにもいかず。仕方なく少し距離を置いて、学校までの道を歩いていた。
なんだよあいつ。恋愛とか、女子とか、興味なさそうな振りしてるくせに。女子と登校しやがってこの野郎。しかも相手が、佐々木じゃねかよおい。めちゃくちゃ可愛いじゃないか。男子の中で人気な方に入る佐々木だぞ。
康太は2人を見ないように歩道にたくさん植えられている桜木を見上げる。康太は春が嫌いだ。別れと出会いの季節とゆう、カッコつけたフレーズも嫌いだし、花粉がわんさかと漂う地獄といってもおかしくない季節だ。そもそも、桜があまり好きではない。なんだか見下ろされている感じがしてそわそわしてしまう。
そして何よりも、周りでカップルができ始める事が多い季節。これが一番の理由だった。どこもかしこも甘い空気が漂っている。これは、ひがみな訳では無い。断じて、違う。確かに、自分だけが取り残されていくようで嫌だが。高三にもなって、恋愛のれの字も自分にはないが。ああ、なんだろう。悲しくなってきたぞ。きっと、コレはアレだな。うん、アレだ。アレってなんだ。花粉だな。花粉のせいで少し、自分はメランコリックな気分になってんだな。きっとそうだ。てゆうか、なんであいつらあんなに歩くの遅いんだよ。俺、今日、日直なんだけど。もう走って通り過ぎようか。
康太がそんなふうに考えていると、視線にきづいたのか巧実がふっと、振り返る。
あ。 
目と目があう。
やめろ。こっちを見るな。そしてそんなふうに微笑むな。
「康太じゃん。おはよ」そんな康太の気持ちをしらずに、巧実は爽やかな笑顔で挨拶をする。
「あ、あれ、巧実じゃん!おはよ」
康太はまるで、今まで気づかなかったように振舞った。
あ、もう、コレ、走って学校行くしかないわ。そう思い、通り過ぎようとする康太に巧実が声をかける。
「お前も一緒に、学校行こうよ」
何言ってんだ、こいつ。どう考えても、気まずいだろ。ちらりと、佐々木の方に目をやる。表情は隠しているが、明らかに不満げな顔をしている。当たり前だ。これが普通だ。なんで自分が、2人の間を割って入るような真似しなきゃいけないんだ。
「いや、いいよ。俺、今日、日直だしさ」康太が答える。
「あ、そうだったな。じゃあ、また後で学校でな」巧実がそう答えると、康太は、おう、と返事をししょうがなく走った。くっそ。
康太が走ると共に風が吹き、桜の木がさざめく。花びらがヒラヒラと舞う。ついでに俺にも春の風ふいてくんねえかな、とつくづく思う。
あー、花粉とんでんなー、と鼻を啜る。上を見上げると、桜の薄いピンク色と空の青空の色がうまく合っていて、綺麗だなぁと思ってしまう。
学校に着き、校舎の中に入ると、まだあまり生徒の姿が見えなかった。教室に寄る前に、先に職員室で日誌を取りに行こうとすると、前方で女子生徒が壁にポスターを貼ろうと必死になっているのを見かける。上の方まで手が届かないらしい。
2年生かな?上履きの色を見て判断する。
あまりにも必死に貼っているので、思わず手を伸ばす。目が合う。三つ編みをしていて、それが丸くて大きな瞳とあっていた。一瞬何が起こっているのか、理解出来なかったようで康太の手を見て慌てる。
「あ!ありがとうございます!すみません!!
目に見えたような慌て方をしてつい笑ってしまう。
「いや、全然平気だよ。これなんのポスター?」
康太が聞く。
「あ、新入生も入ってきたので生徒会募集のポスターです。そろそろ生徒集会も始まるので…」
顔を赤らめながら言う。
「ああ、生徒会入ってるの?」
「そっか。頑張れよ」
「え、あ、ありがとうございます」2年生は戸惑ったように言う。それじゃ、と康太はいい階段を上り、職員室の方向に行く。
気軽すぎたかな?そう思いながら廊下を歩く。廊下の窓が開いていて、そこから心地よい春の風が入ってきた。
康太は気づかなかった。先ほどの2年生が顔を赤らめながら、康太が上っていった階段を見上げるている事を。窓に、近づく。春の、甘い匂いがした。


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