かわいそうな旦那様‥

みるみる

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17、旦那様の帰宅


リリアがテオの両親の屋敷で過ごすようになって数日後、リリアの両親が訪ねて来ました。

「リリア、無事で良かった。‥公爵様のご両親が、わざわざうちを訪ねてきてくれたのよ。‥それにあなたの事は全て聞いたわ。」

「‥お母さん、お父さん‥ごめんなさい。迷惑をかけてしまってごめんなさい。」

リリアは母親に抱きついて子供のように泣きました。

これまで気を張って強く生きてきたリリアですが、このお屋敷でのんびりと過ごす中で、旦那様と結婚してから自分がいかに長い間気を張り詰めていたのか、いかに我慢をしてきたのかをようやく自覚したのです。

ここにきてリリアはやっと気を緩める事ができたのです。

これまでは大人びた表情しか見せなかったリリアが、子供のように泣く姿を見て、両家の親達はある決意をしました。そして‥‥

「リリア、君とテオの婚姻関係を解消しよう。‥近いうちにテオの所へ行って、テオの気持ちも確認した上で、離縁を勧めてくる。」

ついに、お義父さんがそう宣言しました。

リリアは、泣いて俯いていた顔を上げて四人の親達の顔を見上げました。‥皆んな笑顔で頷いてくれました。

「‥私、もう頑張らなくても良いの?もう我慢しなくて良いのね?」

リリアが子供のような無邪気な笑顔でそう言うと、皆んなが涙ぐんでしまいました。

リリアはキョトンとしていましたが、両家の親達には色々と思うところがあったのです。

テオの両親は、リリアにテオを押しつけて公爵家の経営や管理まで丸投げしまった事を猛省していましたし‥‥

リリアの両親は、リリアにテオとの結婚を押しつけてしまった事を気に病んでいたのです。


その後リリアと両家の親達で、婚姻関係の解消の事や、離縁の後にリリアはどこで暮らすのか、今やっている商売はどうするのか等を長い時間をかけて、相談しました。


まず婚姻関係解消の件は、テオの意思確認後に、テオに提出してもらう事になりました。‥婚姻関係の解消理由については、リリアが行方不明の為(死亡したものと思われる)と言う事にしました。

それと、リリアの商売はリリアの親の領地で引き続き行えるようになりました。

妖精達が言ったように、森の中の花畑や湖、工房をそのままリリアの親の領地へ移動する事にしたのです。

そして、リリアはテオとの婚姻関係の解消が正式に認められたら、妖精王と結婚して湖に住む事になりました。

これらの事は、王妹であられるテオの母から王様夫妻にだけ知らされる事になりました。

つまり、世間的にはリリアがいまだに行方不明になったまま‥もしくは死んだものと認識される事になったのです。

リリアが無事に生きている事が、リリアを誘拐した犯人に知られてはならない為の苦渋の決断でした。

いずれ犯人が捕まって、リリアの安全が確保されたら‥‥リリアの行方は、リリアを心配する公爵邸の皆んなには、知らせる事にしました。



一方、リリア達がテオの両親の屋敷でそんな相談事をしている事など知らないテオは、公爵邸へ戻ってからリリアが行方不明になった事を知ったのでした。

「‥リリアが行方不明?」

「‥ご主人様、何故奥様を夜会会場に置き去りにしたまま、ベラ様のお屋敷へ行ってしまわれたのですか。‥奥様の身にもしも何かあったら‥‥。」

「‥僕は悪くないからな!‥どうせどっかをほっつき歩いてるんだろ。それとも、男共にチヤホヤされて、良い気になってついていったのかもしれないな。‥‥チッ、勝手にすれば良いさ。」

テオは全く悪びれる様子もなく、そう言い放ちました。

執事や公爵邸で勤める者達は、そんなテオに対して冷ややかな視線を浴びせました。

これが‥‥我々のご主人様なのか?奥様を会場に置きざりにして、愛人のもとへ行ったと言うのか?‥‥それに行方の分からない奥様を心配すらしないとは‥‥なんて酷い男なんだ!

‥屋敷の者達は、もれなく皆んなそう思っていました。

そんなまわりの冷たい視線にも気付かないまま、テオは更に信じられない言葉を発しました。

「‥リリアの奴がこのまま戻らなかったら、僕はベラをこの屋敷に迎えるつもりだ!」

執事を始め、屋敷の者達は動揺しました。ご主人様の前だというのに、ざわざわと騒ぎ始めたのです。

「‥うるさい!黙って持ち場へ戻るんだ!」

「‥‥ご主人様、奥様をお探しにならないのですか?‥もし奥様が帰られないのでしたら、私はここの仕事を辞めます。」

「俺も辞めてやる!」

沢山の従業員達が、口々にそう言い始めました。

「‥ええい、黙れ!辞めたい奴はさっさと辞めればいい!」

テオは従業員達を睨みつけると、自分の部屋へ向かいました。そして、その日は結局仕事へは行かずに、そのまま部屋で寝て過ごしたのです。


その日を境に公爵邸では、仕事を辞めて他の職場へ移ったり、実家へ帰る従業員が後をたたなかったそうです。


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