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胡蝶の夢 前編
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「‥お嬢さん、目覚めたかい?」
見知らぬ田舎の畑の畔で私は目覚めました。
目の前にいる老人が私の腕を掴み上げ、体を起こすのを手伝ってくれました。
「‥ここは?」
「えっ、お嬢さん‥まさか記憶がないのかい。」
「‥‥ええっと、そうみたいです。自分が誰なのかも分からないです。」
「なんてこった‥。よし、私の家に連れていってやろう。好きなだけ滞在するといい。」
「‥はい、ありがとうございます。」
私は右も左も分からない状態で、この目の前の老人を信じてついていくことにしました。
老人の家につくと、窓のない暗い部屋に案内されました。
「‥すまないね、こんな部屋しか空いていなくて。」
「いえ、とんでもない。行くあてもない私を泊めて頂けただけでもありがたいです。
「‥まあ、食事は私が用意するし気兼ねなく過ごすと良い。」
「‥ありがとうございます。」
この見知らぬ村へ来てから一ヶ月。
私を家に住まわせてくれた老人が、この村の村長だという事がわかりました。
私は毎日村長と息子さん達の食事を作ったり洗濯をしながら、それなりに充実した日々を過ごしていました。
それにしても、不思議な事にこの村には女性のいる気配が一切ありません。
私は村長に家の外へ出ることを禁じられていた為、村人とは時折窓越しに少し会話をする程度の交流をしていたのですが‥私の知る限りこの村に女性は一人も見受けられませんでした。
私はそんな疑問を、この村で一番信頼できる友人の男ドナルドにぶつけてみました。すると、ドナルドは驚きの返答を返してきました。
「ここの村人は男しか産まない種族だからね。」
「‥うそ、男しか産まれないなんて変よ。だってそれならどうやって子孫を増やしていくのよ。」
「‥男達の中で一際体格の良いやつが繁殖期になると、一時的に女性の役割を果たすんだ。
その後、別の種族の女を捕まえて、その個体の子宮に卵を産みつけて育てさせているんだ。
‥だから君もそうなる前に早く村を出るんだ。なんなら僕も途中まで一緒に逃げてあげるから。」
私はドナルドから聞いた衝撃の事実に言葉を失いました。
このままここにいれば私は卵を子宮に産みつけられてしまうの?
「そんなの嫌!この村を出たい!」
「リリアン、落ち着いて。静かにするんだ。‥とにかく君が卵を産みつけられる前には必ずここから逃がしてあげるから。‥それまでは何も知らないふりをし続けるんだ。」
「分かったわ。」
「それから、甘ったるい香りがしてきたら、鼻を塞ぐんだ。その香りを嗅ぎつづけると、記憶や判断力を奪われてしまうから注意するんだよ。」
「分かった。気を付けるわ。」
私はその後もドナルドと秘密の会話を重ねて、少しずつ村から逃げ出す準備をしていきました。
そして、村に来てから2ヶ月後、ようやく村を出る日がやってきました。服の中に隠せるだけの食材と金品を持ち、ドナルドの迎えを待ちました。
コンコン、
誰かが私の部屋の窓をノックしました。窓の前に立っているのは、時々この窓の前に来ては挨拶を交わす程度の若者でした。
彼はニヤニヤしながら窓を叩き続けます。
『なんだか怖い‥。』
私が若者の異常な様子に怯えていると、部屋の扉が開かれて村長が入ってきました。
「リリアン、今まで部屋に閉じ込めていてすまなかった。‥さあ、今日は部屋の外に出る許可を出してあげるから、私と一緒に外へ行こう。遅ればせながら、君歓迎会の準備がしてあるんだ。」
村長はそう言って使用人に私を担がせて、歓迎会の会場へと私を連れて行きました。
「村長、準備できてますよ。早くその女をこの台に乗せましょう。‥もう我慢できません。」
「お前がこの役に決まったのか。フフフ、だいぶ張り切ってるな。」
「もちろんですよ!こんなチャンス何年に一度しかないんですから。」
そう言って、先程まで窓をノックしていた若者が上着を脱いで台の上に腰掛け、私を手招きしました。
男は手を伸ばして私を受け取ると、台の上へと乱暴に横たわらせました。
「やめて、何するの!」
「何って‥今から俺達の卵をお前の中に産みつけるんだよ。」
「いやよ!ドナルド、助けて!ドナルドー!!」
私は男に覆い被さられながらも必死に手足をバタバタさせて抵抗しました。
けれどもドナルドは私がいくら呼んでも助けには来てくれませんでした。
もしかしてドナルドは、村人を裏切って私を逃がそうとした事がばれて、殺されてしまったのかもしれません。
ドナルドもいない今、私一人の力でこの状態から村から逃げられるとは到底思えなくて、私は目を閉じ、死を覚悟しました。
見知らぬ田舎の畑の畔で私は目覚めました。
目の前にいる老人が私の腕を掴み上げ、体を起こすのを手伝ってくれました。
「‥ここは?」
「えっ、お嬢さん‥まさか記憶がないのかい。」
「‥‥ええっと、そうみたいです。自分が誰なのかも分からないです。」
「なんてこった‥。よし、私の家に連れていってやろう。好きなだけ滞在するといい。」
「‥はい、ありがとうございます。」
私は右も左も分からない状態で、この目の前の老人を信じてついていくことにしました。
老人の家につくと、窓のない暗い部屋に案内されました。
「‥すまないね、こんな部屋しか空いていなくて。」
「いえ、とんでもない。行くあてもない私を泊めて頂けただけでもありがたいです。
「‥まあ、食事は私が用意するし気兼ねなく過ごすと良い。」
「‥ありがとうございます。」
この見知らぬ村へ来てから一ヶ月。
私を家に住まわせてくれた老人が、この村の村長だという事がわかりました。
私は毎日村長と息子さん達の食事を作ったり洗濯をしながら、それなりに充実した日々を過ごしていました。
それにしても、不思議な事にこの村には女性のいる気配が一切ありません。
私は村長に家の外へ出ることを禁じられていた為、村人とは時折窓越しに少し会話をする程度の交流をしていたのですが‥私の知る限りこの村に女性は一人も見受けられませんでした。
私はそんな疑問を、この村で一番信頼できる友人の男ドナルドにぶつけてみました。すると、ドナルドは驚きの返答を返してきました。
「ここの村人は男しか産まない種族だからね。」
「‥うそ、男しか産まれないなんて変よ。だってそれならどうやって子孫を増やしていくのよ。」
「‥男達の中で一際体格の良いやつが繁殖期になると、一時的に女性の役割を果たすんだ。
その後、別の種族の女を捕まえて、その個体の子宮に卵を産みつけて育てさせているんだ。
‥だから君もそうなる前に早く村を出るんだ。なんなら僕も途中まで一緒に逃げてあげるから。」
私はドナルドから聞いた衝撃の事実に言葉を失いました。
このままここにいれば私は卵を子宮に産みつけられてしまうの?
「そんなの嫌!この村を出たい!」
「リリアン、落ち着いて。静かにするんだ。‥とにかく君が卵を産みつけられる前には必ずここから逃がしてあげるから。‥それまでは何も知らないふりをし続けるんだ。」
「分かったわ。」
「それから、甘ったるい香りがしてきたら、鼻を塞ぐんだ。その香りを嗅ぎつづけると、記憶や判断力を奪われてしまうから注意するんだよ。」
「分かった。気を付けるわ。」
私はその後もドナルドと秘密の会話を重ねて、少しずつ村から逃げ出す準備をしていきました。
そして、村に来てから2ヶ月後、ようやく村を出る日がやってきました。服の中に隠せるだけの食材と金品を持ち、ドナルドの迎えを待ちました。
コンコン、
誰かが私の部屋の窓をノックしました。窓の前に立っているのは、時々この窓の前に来ては挨拶を交わす程度の若者でした。
彼はニヤニヤしながら窓を叩き続けます。
『なんだか怖い‥。』
私が若者の異常な様子に怯えていると、部屋の扉が開かれて村長が入ってきました。
「リリアン、今まで部屋に閉じ込めていてすまなかった。‥さあ、今日は部屋の外に出る許可を出してあげるから、私と一緒に外へ行こう。遅ればせながら、君歓迎会の準備がしてあるんだ。」
村長はそう言って使用人に私を担がせて、歓迎会の会場へと私を連れて行きました。
「村長、準備できてますよ。早くその女をこの台に乗せましょう。‥もう我慢できません。」
「お前がこの役に決まったのか。フフフ、だいぶ張り切ってるな。」
「もちろんですよ!こんなチャンス何年に一度しかないんですから。」
そう言って、先程まで窓をノックしていた若者が上着を脱いで台の上に腰掛け、私を手招きしました。
男は手を伸ばして私を受け取ると、台の上へと乱暴に横たわらせました。
「やめて、何するの!」
「何って‥今から俺達の卵をお前の中に産みつけるんだよ。」
「いやよ!ドナルド、助けて!ドナルドー!!」
私は男に覆い被さられながらも必死に手足をバタバタさせて抵抗しました。
けれどもドナルドは私がいくら呼んでも助けには来てくれませんでした。
もしかしてドナルドは、村人を裏切って私を逃がそうとした事がばれて、殺されてしまったのかもしれません。
ドナルドもいない今、私一人の力でこの状態から村から逃げられるとは到底思えなくて、私は目を閉じ、死を覚悟しました。
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