令和百物語

みるみる

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第三十三夜 エレベーター

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今日は高校の同じクラスの男どもと俺の部屋で勉強会だ。俺の住むマンションは、初めてくる奴には分かりにくいと評判なので、下まで迎えに行くことにした。エレベーターを呼んで乗り込もうとすると、重量オーバーのブザーが鳴り響いた。

「クソッ、壊れてんじゃねーの?」

実は、俺はエレベーターとの相性が悪くて、このマンションのエレベーターにはまだ一度も乗れていない。

仕方なく階段で降りて行った。

 

「おーい、お前んちのマンションここだよな。」

階段をおりて外へ出ると、男ども三人はすでにマンションの下にいた。

「古いだろ、オートロックもないし。でもよくたどり着いたな。このマンションって奥まった所にあるし、結構分かりづらいのに。まぁ、いいや。行こうか。」

俺はそう言って、エレベーターに向かった。何となく皆んなと一緒だったら今度こそエレベーターに乗れそうな気がした。

「俺んち六階な。」

そう言って、エレベーターを呼んで全員が乗った時、ブザーが鳴った。

武が最後に乗ったので、一旦降りてみた。

ブー、ブー、ブー

次に則さんが降りてみた。

ブー、ブー、ブー

次に輝が降りてみた。

ブー、ブー、ブー

エレベーターは俺一人を乗せたまま、重量オーバーのブザーを鳴り響かせた。

俺も降りてみた。

ブザーはならなかった。

「うわ、このエレベーター壊れてんじゃねーの?」

武が言った。俺も同感だ。このエレベーターはおかしい。

「じゃあさぁ、今度は試しに先に降りた人から順番に乗ってみようぜ。」

則さんがそう言うと、早速武がエレベーターに乗り込んだ。

次に則さんが乗った。続けて輝が乗った。

ブザーは鳴らなかった。

次に俺が乗った。

ブー、ブー、ブー

「アハハハ、お前かよ。隠れデブかよ。一回降りろって。」

輝が笑って言った。仕方ないので、俺だけ降りるとエレベーターは閉まった。

俺は仕方なくいつも通り階段で六階まで上がった。

俺が六階まで上がってくると、奴らが笑っていた。

「ちょ、やべーよ。笑える。ゼーハー言ってんじゃん。体力まじでねぇな。」

「うるせー。」

俺達はふざけながら部屋に入った。

しばらくは真面目に宿題やテスト勉強をしてたが、すぐに皆んな飽きてしまった。

「ちょっと女子に電話してみようぜ。」

「なんで女子が出てくるんだよ。」

「暇じゃん。電話して向こうも暇ならどっか行こうぜ。」

そんなノリで武が女子に電話した。

「よぉ、奈央子。俺ら皆んなで集まって勉強してんだけど、もう終わって暇じゃんね。そっちって何してる?あっ、女子四人いるのか。俺らも四人だし。うん、ラインでビデオ通話?出来るよ。メンバー見せるわ。」

「武、女子何だって?」

「あっ、今ビデオ通話でお互いメンバー見せ合うから、お前らも寄って寄って。」

そう言って、俺達は武を中心に集まった。武の携帯の画面には、四人の女子達が映っていた。

『ねぇ、あんた達何人いるの?クラスの男子全員集まっちゃった感じ?アハハハ。楽しそうだけど、狭そう。じゃあ、うちらもう帰るから、またね。』

画面越しに奈央子がそう言ってビデオ通話が切られた。


「奈央子おかしいな、俺達四人でクラスの男子全員集まったの?だって。」

武がそう言うと、皆んなシーンとした。

「なぁ、なんかやばいモノ映ってたんじゃねぇの?一回俺らだけで写真撮ってみようぜ。」

則さんのその提案で、カメラの自撮りモードにして、写真を撮ろうとした時、俺らの背後に顔認識の枠が大量に出てきた。

「うわっ!何だよ、これ‥‥。俺らの後ろに何か沢山いるんだけど。‥‥なぁ、また一人ずつ画面から抜けて見ようぜ。」

則さんがそう言うので、とりあえず武が画面から抜けたが、俺達の背後の顔認識の枠はそのままだった。

次に則さん、次に輝が抜けた。それでも顔認識の枠はそのままだった。携帯は武へ渡された。武がカメラ画面を自撮りモードから通常に切り替えて、俺一人を映した。

「どう、枠消えた?」

「おい、お前の後ろにいったい何人いるんだよ!」

「え?」

武が持つ携帯の画面には、俺を中心にして、その背後にたくさんの顔認識の枠が表示されていた。
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