令和百物語

みるみる

文字の大きさ
57 / 100

第五十七夜 庭の人影

しおりを挟む

家には隣二軒に挟まれた庭がある。そしてその庭を、何故か見知らぬサラリーマンや子供が近道に使っている。新聞配達員や郵便局員はもう当たり前のように毎日通っている。 

これも、我が家が角地に建っており、敷地が尖ってる為と思われた。確かに、近道を通らずに普通に敷地沿いに道を行くと、何となく遠回りに感じてしまうのも分からないでもない。

「あっ、また知らないおじさんが通って行った。」

「‥そんなに近道したいのかな。一応これでも個人の敷地内なんだから、不法侵入にとかにならないのかな。」

「皆んなが通ってるから、自分もいいかってなるんじゃない?」

一日中こんなふうに人がしきりに通るし、おまけに庭側の大きなガラス窓から、隣近所の人も覗いたり、話しかけてくるから、迂闊に昼寝もできない。

「‥はぁ。家ってこんなに落ち着かないものだったっけ。」 

日中よく家に居る私と母は、よくぼやいていた。

「そうだ!鉢植えや塀を作って、人が通れなくしちゃおうか。」

そう言って、母と私は業者に相談してすぐに簡易的な柵を、近道の入り口二箇所に設置した。
 
すると、子供やおじさん達は、柵の所で文句を言いながらも引き返して行くようになった。

郵便局や新聞配達員は、何も言ってこないが、少しは困ったと思われた。何となくバイクを降りてバタバタと困惑する足音が聞こえたからだ。

これでやっと平和に日中をリビングで過ごせる、そう思った。


ところが、リビングで母と私が過ごしていると、庭を横切る人影が見えた。東にある玄関の方角から、西の方へと庭を横切る白い人影がひっきりなしに通って行った。

「‥‥。」

「そう言えば、昔私の父さん、あんたの爺さんが言ってたなぁ。東の川の方角から、西の新幹線の高架下へ向かうこの庭は霊の通り道になってるって‥‥。」

「あっ、また白いのが通ってったよ。」

「‥。」

それから何日か様子をみましたが、やはり毎日ひっきりなしに白い人影が見えるので、気持ち悪くなった。

結局‥‥

「‥これなら生きてる人間に通ってもらってた方がましか。」

そう言って、母と私は簡易式の柵をどかして人が通れるようにした。


それからは通る人の数は減ったが、生きてる人影を見ては、逆に安心するようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?

鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。 先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...