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ゲーテ王子は思い出した
しおりを挟むゲーテ王子は倒れたルナールを抱き上げ、自身のベッドへと寝かせてやりました。
ルナールが「ごん」の生まれ変わりだったとは‥‥。
まさかこんな形で同じ前世を生きた者同士が巡り合うとは、不思議なものだ‥‥
ゲーテ王子は、蘇ってきた記憶に混乱しながらも、少しずつ頭を整理していきました。
そして、目の前のリリーと向き合い、リリーを問い詰めました。
「リリー、これはどういう事なんだい?君は本当に聖女なのかい?本当はルナールが聖女なのでは?」
ゲーテ王子は鋭い眼差しでリリーを見つめます。
リリーはゲーテ王子に抱きつき、泣きながら言いました。
「私がルナールにゲーテ様を治すように頼んであげたのよ。私がゲーテ様を助けたの。」
「リリー、君が聖女なら聖魔法ぐらい自分で使えただろう?」
リリーは唇を噛み、一瞬顔をしかめましたが、すぐに笑顔をつくりゲーテ王子にしなだれかかりました。
「‥‥私だって魔法をかけたんですよ。ゲーテ様の症状が酷すぎるから、二人がかりで魔法をかけたんですよ。」
リリーはこう言うが、力尽きて倒れたルナールと元気なリリーを見比べれば、誰が聖なる魔法で自分を助けてくれたのかは一目瞭然だ。それに、リリーはルナールが聖魔法を使える事を以前から知っていたのではないか?そして、リリーは自分が聖女ではないのに、ルナールを利用して聖魔法を使わせて、あたかも自分の功績のように振る舞ってきたのではないのか?
そんな疑念がゲーテ王子に生まれました。
「‥リリー、すまない。ちょっとまだ体に力が入らないんだ。だから今日は一緒に寝てやれない。」
「‥‥その女はどうするの、まさか一緒に寝るの?」
「馬鹿な!僕が愛するのはリリー、君だけだ。」
それを聞いたリリーは満足気に微笑み、ベッドに横たわるルナールのもとへ近づいていきました。そしてルナールの脇の下に両腕を入れて持ち上げると、ズルズルと引きずりながら扉の外へ放り出してしまいました。
ゲーテ王子はリリーのこの行いを見て、呆気にとられました。
リリーは全く悪びれる様子もなく、可愛い笑顔で再びゲーテ王子に甘えてきました。
「私頑張ったのよ、朝まで一緒にいたい!」
リリーは上目遣いにゲーテ王子を見つめ、抱きついてきました。
ゲーテ王子も、リリーではなくてルナールが本物の聖女かもしれないとはいえ、リリーに対する愛情や欲情は多少は薄れても、まだ完全には消えていません。
リリーに対して不信感はしっかりと残りましたが‥‥
結局ゲーテ王子はリリーと朝まで過ごす事にしました。
ゲーテ王子とリリーがベッドの上で愛し合ってる間、ルナールは廊下で倒れたままでした。
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