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リリー視点
しおりを挟む私には幼い頃からいつも一緒に遊ぶ男の子達がいた。
ゲーテ様とバラード様とラッセン様。
私はこの三人と一緒に遊んでチヤホヤされる時間がとても楽しかった。
なのに、ゲーテ様に婚約者?信じられない!ルナール?噂だと、真面目で勤勉、それに聖女かもしれないですって?気に入らないわ。‥‥ならその噂を別の噂と変えてやろうじゃないの。
それから私は、ルナールに対して色々な罪を捏造して噂を広めた。この件に関しては、カッコ良いけどお馬鹿なバラード様とラッセン様の二人がとても頑張ってくれた。
そして、私はルナールが聖女だという噂に関しても、根も葉もない噂に過ぎないという事をバラード様とラッセン様に訴えた。それが瞬く間に世間へ広がり浸透した。
おかげで私は聖女として、世間からもチヤホヤされた。とっても気分が良いわ。
それにしても‥‥ルナールはしょっちゅう私達の遊びの輪の中に入ってこようとした。最初は邪魔に感じたが、バラード様やラッセン様にルナールが冷たくあしらわれるのを見るのは楽しかった。それにルナールの前で私だけが褒められて優しくされる優越感も心地良かった。
そんなある日、この国の第一王子のニーチェ様が留学先の隣国から戻ってきた。
‥私はニーチェ様が苦手だった。それにニーチェ様が戻ってきて王太子になったら、ゲーテ様は王様になれないし、私も王妃になれないかもしれないじゃないの。そんなの嫌!
ニーチェ様が隣国から戻って間もなく、ゲーテ様とルナールの婚約が破棄された。そしてニーチェ様とルナールの婚約が発表された。
‥どういう事なの。ルナールが将来の王妃?冗談じゃないわ!
グワァッ、グワッ
「キャーッ、ゲーテ様!大丈夫ですかっ。」
ゲーテ様の部屋で二人で寛いでいたら、ゲーテ様の足が急におかしくなったわ。ポキポキ音を立てて折れていってる。あのカッコ良かったゲーテ様が惨めにも床を這い、壁に手をついて足を引きずって歩いてる‥‥これは何の病気なの?何故急にこんな事になったの?
私はゲーテ様の部屋を飛び出して、急いでルナールを連れてこようと思った。ゲーテ様の病気を何が何でもルナールに治させなきゃ!
なのに、あいつ‥‥こんな時に呑気に王妃教育なんかして!
「はぁ、はぁ、ちょっとルナール、ついて来なさい。」
そういって私はルナールをゲーテ様の元へ連れて行った。そして聖女の持つ聖魔法でゲーテ様を治すように言った。
なのに、何、治せない?そんなの事言ってないで、いいからさっさと魔法使いなさいよ!
結局ルナールは、ゲーテ様の足を治した。そして力付きたルナールが倒れた。
ちょっと、用が済んだらさっさと部屋から出て行きなさいよね、気がきかないんだから!仕方ないから私が部屋から出してやるわ!
私はルナールを一生懸命持ち上げ、ゲーテ様の部屋から引きずり出した。
だって、ここはゲーテ様と私の部屋なの。
‥‥せっかく足が治って痛みも消えたというのに、ゲーテ様は少しいつもと様子が違った。今晩は私と離れて寝たいですって?何でよ!
‥‥でも、大丈夫。私が抱きついてせがめば、すぐに私を抱いてくれるわ。
だって私には人々を魅了する力があるって、お父さんとお母さんが言ってたもの。だから、その力で王妃にでもなれるって。
しかも、魅了の力は歳を取るとなくなっていくって聞いた。なら、若い内にたっぷり楽しまなきゃ。
ゲーテ様と一晩過ごした私は、バラード様やラッセン様にもすぐに会いに行こうとしました。
だって、魅了の力は頻繁に相手の体に触れなきゃ効かなくなってしまうもの。
急がないと!
ドンドンドン、ドンドン、
「リリー様、聖女様、そちらにいらっしゃるのでしょう?国の結界が崩れて、魔物達が国へ侵入してきました。結界をすぐに張りなおして下さい。聖女様!」
えっ何、国の結界って何の事なの?魔物が国へ侵入?‥‥今まで魔物なんていなかったじゃない。そもそも魔物なんて本当に実在したの?
私に結界を張れって何よ、もう訳が分からない!ああ、もう!煩い!
ゲーテ様の部屋で私は耳を塞いで震えていた。やだ、怖い!やめて!誰か何とかしなさいよ!
「知らない、知らないわ。結界って何よ、私にどうしろと言うの!?」
この時私は知りませんでした。
ゲーテ様がそんな私の事を冷たく見下ろしていた事を。
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