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突然の婚約破棄

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「婚約を破棄したい。すまない。」

文書であっさりと告げられた婚約破棄。
まさに晴天の霹靂でした。
何故?私達うまくいってたじゃない。

伯爵家の次女、私サリー・モアドは三ヶ月ほど前に、この国の大きな商会の三男ナダル様に婚約を申し込まれてから、これまでずっと仲睦まじい関係を維持してきました。

ナダル様は2歳歳上の大変社交的な方でした。巧みな話術で、大きな商談をいくつも成功させており、事業を拡大し、三男とはいえ将来の後継者になるのでは、と噂されるほどの素晴らしい方です。

そして、艶めいた青色の長髪がセクシーなイケメンでした。

ナダル様を目当てに大きな宝石やドレスを買い漁るご婦人も多いとか。

そんな方が、こんな冴えない私をどこかで見かけて一目惚れしたというのです。そして、婚約を申し込んでくれたのですから、私がこの婚約に浮かれてしまったとしても無理ない事だとは思いませんか?



ナダル様は会う度に私の手に口付けし、自身の手を絡ませて愛を囁いてくれるのです。

耳元で囁く彼の声に、毎回ゾクゾクしてしまいました。

「サリー、君にもっと触れたい。」

そう囁きながら、私の頬や耳、首筋をその大きな手で優しく撫でて下さいました。

「ナダル様‥‥私もナダル様にもっと触れていたいです。」

「サリー、可愛いよ。キスして良い?」

「‥‥!」

返事もしないうちに、ナダル様の大きな口が私の口を、顔を、食んでいました。

私は、想像と違った野生的?な口づけにびっくりして硬直してしまいました。

長いキス?の後、ナダル様は仰いました。

「サリー、知ってた?付き合ってから男はまず彼女の手を握って反応を見るんだ。黙って手を繋いでくれた女は、その後すぐにキスを許してくれる。

そして、キスを許してくれた後、彼女はすぐにその身体を男に許すんだ。」

私はカーッと顔が赤くなるのを感じました。とても恥ずかしい気持ちになりました。

それは、まるで私がナダル様に抱かれる事を望んでいるのを見透かされたようなバツの悪さがありました。

私みたいなはしたない女をナダル様は軽蔑するかしら。

私は恥ずかしさから、思わずナダル様から顔を背けてしまいました。

するとナダル様は、さっと私から離れて、紳士らしい振る舞いで私をエスコートし私を屋敷まで送って下さいました。

終始無言のナダル様に、私はどう対応したら良いのか分からずにいました。

私は何か彼の機嫌を損ねてしまったのかしら。どこが間違っていたの?分からない。でも、彼の機嫌を損ねないようにしなきゃ!

彼の喜ぶ事だけをしてあげたい。私をもっと好きになって欲しい。
そう願ってしまった私は、段々と恋の泥沼にはまっていくのでした。
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