捨てられたお姫様

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26、リナの仕事

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ラナンとリナは、今泊まっている宿にもうしばらく泊まる事にしました。

ラナンがまだ王都で個人的に調べたい事があるというのです。

その間にリナは、宿の食堂でお手伝いをして小銭を稼ぐ事にしました。

「じゃあね、リナ。行ってくるよ。」

「お父さん、行ってらっしゃい。」

リナは宿の食堂の入り口から、ラナンを見送りました。

「リナちゃん、お父さんと本当に仲が良いね。」

「うん、私はお母さんがいないから、お父さんだけが唯一の家族なの。だから、世界で一番お父さんが好き!」    

リナは食堂の女将さんに、満面の笑みでそう答えました。すると女将さんは、その豊満な体でリナを抱きしめて頭を撫でてくれました。

「あんた、可愛いのに苦労してるわねぇ。‥ここにいる間は私をお母さんだと思って、何でもわがままを言って甘えていいのよ!」
 
「うん、女将さん‥じゃなくてお母さん。ありがとう。‥でも、ちょっと苦しい‥。」

「あっ、ごめんねぇ。つい力が入っちゃった。」

「大丈夫。それより、お店の掃除を済ませちゃいますね。」

「ああ、頼むね。」

どうやら女将さんは、真面目なリナの事をとても気に入ったようでした。そして、リナも女将さんにはすぐに心を許したようでした。



一方、ラナンは昨日来ていた図書館にまた来ていました。今日は一般来館者として‥。

「こんにちは‥‥って、昨日の魔法使い!」

昨日ラナンに対して文句を言ってきた男の職員が、ラナンを見るなり気まずそうな顔を見せました。

「‥今日は、普通の来館者として来ました。」    

「‥そうですか。‥‥何か探し物やお困り事があれば手伝いますよ‥。」

彼はぶっきらぼうながらも、ラナンに好意的な言葉をかけてくれました。

ラナンはその事を嬉しく思い、早速その好意に甘える事にしました。

「ありがとう、助かります。‥‥では、本達が飛び回る様になった日の前後に誰か怪しい人が来ていなかったか、教えてくれませんか?」

「‥怪しい人ならいましたよ。黒いフード付きのマントを着た、占い師の女です。図書館の黒魔術の本を無断で持ち出そうとして、館長と揉めていたので、よく覚えています。」

「‥占い師?」

「‥はい、本人がそう言ってました。」

「‥‥館長と揉めて、その後どうしたんですか?」

「‥急に怒りだして、何か変な呪文を唱えていきました。‥そうしたら、占い師が帰った後に、本が勝手に動きだしていたんです。」

「‥嫌がらせに変な黒魔術をかけていったんだな。‥‥まさかあの時の占い師じゃないよな。」

「‥‥図書館に来た占い師に何か心当たりがあるんですか?」

「‥‥あっいや、ごめん。何でもないんだ。」

「そうですか。‥‥それよりも、昨日は済みませんでした。」

「‥えっ?」

「‥昨日は疲れたせいで苛々して、あんな失礼な事をあなたに言ってしまいました。‥‥後でとても後悔したんです。」

「気にしなくてもいいのに。‥でも、ありがとう。」 

ラナンはそう言って彼の肩を叩き、図書館を後にしました。



「あっお父さん、お帰りなさい。」

ラナンが宿に帰ると、一階の食堂がいつになく賑わっていました。

「‥今日はやけにお客さんが多いね。新メニューでも出したのかい?」

ラナンがそう言うと、女将さんが奥から現れて、興奮した様子で話し始めました。

「それがね、リナちゃんがお店に出た途端、お客様が次から次へとやってきちゃって、もう大変なのよ。」

ラナンが店内を見渡すと、確かに何人も男性客がリナに声をかけるタイミングをうかがっているのが見えました。

ラナンは、すぐにリナが働く事を許してしまった事を後悔しました。男慣れしていないリナが変な男に引っかかってしまうのではないかと思うと、心配でなりませんでした。

ですが‥‥リナにはそういった心配は無用のようでした。リナは、自分の体に触れようとする男性の手を優雅にかわしていましたし、しつこく声をかけてくる相手には、はっきりと拒絶する言葉をかけていたのです。

「‥リナちゃんは、仕事を覚えるのも早いし、接客も上手だし、あれならどの職に就いても大丈夫だろうね。良かったね、お父さん。」

「‥ああ、そうだね。」

ラナンは食堂でいきいきと働くリナの姿を見て、リナにここで働く事を許して良かったな、と思い直したようでした。
  
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