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第1章
第1章 4
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(遅い)
レイを待ち始めて既に5時間が経っている。
レイは、1、2本打ったら帰ると言っていたので、ここまで遅いとさすがに心配になってくる。
(何かあったのかな?まさか!誰かに捕まったとか!?)
絶対にないと分かっていてもそんな可能性が浮かんでしまう。でも万が一。こうだったら。こんな事が起こってしまったら。どんどんとその想像は増え続け、不安が増していく。気付いたら私の目の前には、先程まであった校門ではなく、骸が重なった戦場が見えていた。今までに戦ってきたもの達できた死体の山の中からその骸達と同じようになってしまったレイが這い出てくる。夢だと分かっていても、私に立ち向かう勇気はない。
逃れたい。この悪夢から逃れたい。その一心で声を出す。
「あ、う、あぁ……い、いやぁぁ」
『オマエガオレヲ』
呪詛のような声を出しながらレイは近づいてくる。
『オマエガオレヲ……オマエガオレヲ』
「い、いやぁ……お願い、お願いだから来ないでぇぇっ!」
死体の山にぶつかり動けなくなった私は叫ぶことしかできずにいる。
『オマエガオレヲ、コロシタンダ!』
トドメの一撃。そう言わんばかりの言葉が飛んでくる。この悪夢が何度か繰り返された後、私の視界は真っ黒に染まった。
目が覚め、体を起こすと、そこは見慣れた寮の一室、自分のベッドの上だった。部屋の一角にあるキッチンでは、レイがお粥を作っていた。だが、その手つきはいつものように良くはなく、時折ふらつくような動作もある。作ったお粥をもって私のベッドにきたレイは、やっと、私が起きたことに気付いた。
「…………ああ、ティナ、目が覚めたんだ。よかった」
レイの笑顔は、いつもの優しく包み込むような自然なものではなく、土気色の顔を隠すような無理の見える笑顔だった。
「よかったじゃないよ!こんなになるまでなにしてたの!」
自分が壊れかけるまでのことをしたのに、それでもいつも通りを装い声をかけてくるレイに対するあまりの怒りに、条件反射で反論する。
「何って、お前の看病だが……まあ少し無理はしたけどな」
そうやってレイが目を向けた方向にあったのはかなりの量の魔力回復剤、マナポーションだった。マナポーションは、魔力回復剤の中でもトップの魔力回復量なのだが、その代償と言わんばかりに体にとてつもない負荷がかかるのだ。それを大量に飲んだのだ、レイの体の中がもうボロボロなのは、誰が見ても分かるレベルだった。
「ヒ、『ヒール』っ!」
そう思った瞬間、呪文が口から出ていた。レイの体が淡い緑色の光に包まれ、外からでは見えない体内の傷の隅々まで癒していく。
「悪い、これは言うべきじゃなかったな」
苦虫でも噛みつぶしたような顔でレイはそう言った。
その言葉に、胸が締め付けられる。
おそらく、レイにとって私は、たった一人完全に心を許した幼馴染みであり、守るべき存在。そして、今現在唯一の存在理由。そこに、自分の犠牲など含まれていない。だって、レイにはある意味自分がないから。だからあんな無茶ができる。
私は、そんな風に自分を省みずに守ってくれるレイが好きだ。でも、だからこそそれが、幼馴染み以上にも以下にもなれないという呪縛になって私につきまとう。それが、レイに「好き」の一言を言えない理由の一つでもある。
「ティナ、今日の鍛練は休んで安静にしとけ。俺は茜達のとこに行ってくる。今が四時だから……そうだな、八時には帰ってくる。その間、ここで待っててくれ」
レイのその言葉で、私は現実へと引き戻され、私は、「行って良いよ」と口を開いた。
「今日は、行っちゃダメ」
……つもりだったが、出てきた言葉は、全くの別物だった。そしてそのまま、口からこぼれ出すように、言葉はどんどん紡がれていく。
「ずっと、我慢してた。だから、今日だけでも、皆とじゃなくて、ふたりだけで、昔みたいに一緒にいて?」
それを聞いて、一瞬レイは驚いていたが、すぐに笑顔をつくって了承するように頷いてくれた。
レイを待ち始めて既に5時間が経っている。
レイは、1、2本打ったら帰ると言っていたので、ここまで遅いとさすがに心配になってくる。
(何かあったのかな?まさか!誰かに捕まったとか!?)
絶対にないと分かっていてもそんな可能性が浮かんでしまう。でも万が一。こうだったら。こんな事が起こってしまったら。どんどんとその想像は増え続け、不安が増していく。気付いたら私の目の前には、先程まであった校門ではなく、骸が重なった戦場が見えていた。今までに戦ってきたもの達できた死体の山の中からその骸達と同じようになってしまったレイが這い出てくる。夢だと分かっていても、私に立ち向かう勇気はない。
逃れたい。この悪夢から逃れたい。その一心で声を出す。
「あ、う、あぁ……い、いやぁぁ」
『オマエガオレヲ』
呪詛のような声を出しながらレイは近づいてくる。
『オマエガオレヲ……オマエガオレヲ』
「い、いやぁ……お願い、お願いだから来ないでぇぇっ!」
死体の山にぶつかり動けなくなった私は叫ぶことしかできずにいる。
『オマエガオレヲ、コロシタンダ!』
トドメの一撃。そう言わんばかりの言葉が飛んでくる。この悪夢が何度か繰り返された後、私の視界は真っ黒に染まった。
目が覚め、体を起こすと、そこは見慣れた寮の一室、自分のベッドの上だった。部屋の一角にあるキッチンでは、レイがお粥を作っていた。だが、その手つきはいつものように良くはなく、時折ふらつくような動作もある。作ったお粥をもって私のベッドにきたレイは、やっと、私が起きたことに気付いた。
「…………ああ、ティナ、目が覚めたんだ。よかった」
レイの笑顔は、いつもの優しく包み込むような自然なものではなく、土気色の顔を隠すような無理の見える笑顔だった。
「よかったじゃないよ!こんなになるまでなにしてたの!」
自分が壊れかけるまでのことをしたのに、それでもいつも通りを装い声をかけてくるレイに対するあまりの怒りに、条件反射で反論する。
「何って、お前の看病だが……まあ少し無理はしたけどな」
そうやってレイが目を向けた方向にあったのはかなりの量の魔力回復剤、マナポーションだった。マナポーションは、魔力回復剤の中でもトップの魔力回復量なのだが、その代償と言わんばかりに体にとてつもない負荷がかかるのだ。それを大量に飲んだのだ、レイの体の中がもうボロボロなのは、誰が見ても分かるレベルだった。
「ヒ、『ヒール』っ!」
そう思った瞬間、呪文が口から出ていた。レイの体が淡い緑色の光に包まれ、外からでは見えない体内の傷の隅々まで癒していく。
「悪い、これは言うべきじゃなかったな」
苦虫でも噛みつぶしたような顔でレイはそう言った。
その言葉に、胸が締め付けられる。
おそらく、レイにとって私は、たった一人完全に心を許した幼馴染みであり、守るべき存在。そして、今現在唯一の存在理由。そこに、自分の犠牲など含まれていない。だって、レイにはある意味自分がないから。だからあんな無茶ができる。
私は、そんな風に自分を省みずに守ってくれるレイが好きだ。でも、だからこそそれが、幼馴染み以上にも以下にもなれないという呪縛になって私につきまとう。それが、レイに「好き」の一言を言えない理由の一つでもある。
「ティナ、今日の鍛練は休んで安静にしとけ。俺は茜達のとこに行ってくる。今が四時だから……そうだな、八時には帰ってくる。その間、ここで待っててくれ」
レイのその言葉で、私は現実へと引き戻され、私は、「行って良いよ」と口を開いた。
「今日は、行っちゃダメ」
……つもりだったが、出てきた言葉は、全くの別物だった。そしてそのまま、口からこぼれ出すように、言葉はどんどん紡がれていく。
「ずっと、我慢してた。だから、今日だけでも、皆とじゃなくて、ふたりだけで、昔みたいに一緒にいて?」
それを聞いて、一瞬レイは驚いていたが、すぐに笑顔をつくって了承するように頷いてくれた。
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