最弱の少年は、最強の少女のために剣を振る

白猫

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第2章

第2章 3

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「で、どうやってつくるんだ?レイ」
 特別棟に入るとすぐにスルトが声をかけに来た。最初に出た言葉はこれだったが、一応「みんな待ってる」ということを伝えに来たらしい。俺達のスペースはかなり奥にあるので、特別棟に入ってからもそれなりに時間がかかる。二人とも無言でいるには長い距離。だが、話題が見つからず、話し掛けることができない。
「なぁ、レイ」
 こういうときに話し掛けることができるスルトは本当にすごいと思う。今度どうやるのか聞いてみようと思う。
「ん?なんだ」
「いや、その、なんだ。その擬似魔剣ってのはどうしてつくろうと思ったんだ?」
「スルトがまじめな事を聞いてきた。意外だな」
「声に出てるぞ。……お前の中での俺の評価はどうなってんだよ」
 スルトは、項垂れるように下を向いているが、どう思っているのか聞きたいというのも本当のようだった。
 本音で言うのであれば、なにに対してもセンスがあるのにそれを活かそうとしない奴なのだが、もう少しオブラートに包んだ方が良さそうだ。
「あー、…………力の見せ所を間違う馬鹿、かな?」
「ちょっと待て、その悩むような時間と考えましたと言わんばかりに疑問で返すのはやめてくれ。……どうせセンスを活かさない奴とでも思っているんだろうが……」
 正直驚いた。まさか考えを読まれるとは思ってもいなかった。顔には出していないはず……。
「レイ。顔に出てる。顔に出てるから。驚きが隠れてないから。まさか当たってるとは思わなかったんだよ。当たったら当たったでこっちは悲しいんだけどさ」
 スルトが悲しそうな顔でこちらを見ている。俺と目が合うと前を向き、大きくため息をついた。
「……まあそんなところだとは思っていたけどな」
「自覚があったなら直せよ」
「たまにはちゃんと役に立ってるだろ」
「そうとは言ってもなぁ……」
 俺の言葉に聞く耳を持たず、スルトは話を変える。
「ルカとかリアはどうなんだ?」
「安心しろ。お前より格段に評価は高いぞ。というか圧倒的に鍛冶以外はあいつらの方が優秀だぞ」
だんだんと剣の話題から話が逸れていく。言わなくてもいい状況がつくれるのであればそっちの方がいい
。理由はないが、あまり言いたくはない。
「で、なんでつくろうと思ったんだ?」
 あっさり話を戻されてしまった。若干睨んでみたが、スルトは気にもとめていないようだった。
「……大切な人を守るため。いや、大切な人達を、だな」
「スミスなのに?」
 苦笑いを浮かべながら、スルトは聞いてきた。スルトはきっと、どうして自分で守る必要があるのかが聞きたいのだろう。言葉からそんな気配を感じる。
「これは小さい頃から自分の中で決めていることだ。俺が大切な人だと思った人は、どんな形であり俺自身で守ると決めた。スミスだとか、そんなことは関係ない」
 あの時のティナとの約束。大切なものを失わないために、俺は剣を振る。
「かっこいいこと言ってくれるじゃねえか!」
 スルトが思いっきり背中をたたいてくる。それも、何回も。ビリビリと痛みが走る。
「……痛ぇよ」
 思わず声が漏れる。隣から、「お、わりぃわりぃ」と、謝る気の全くない謝罪が聞こえてくる。
「勿論俺もその大切な人達に入ってるんだよな?」
「…………入ってるぞ」
 白々しくそう言ってくるスルトに、目線を逸らし、わざとためをつけて返す。本当はその通りだが、仕返しに演技をしてやった。「冗談だよな?おい!冗談だろ!?」なんて声が、横から聞こえてくるが、聞こえないふりをする。
「……く、くく。ははははっ」
 堪えきれず笑いが漏れる。
「あ!この野郎騙しやがって!」
 スルトもつられて笑いがこぼれる。二人して笑いが収まる頃には、俺達のスペースに着いていた。
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