最弱の少年は、最強の少女のために剣を振る

白猫

文字の大きさ
14 / 22
第2章

第2章 4

しおりを挟む
 三人に『擬似魔剣』のつくり方を教え、槌を打ち始めてからずっと、横から視線が突き刺さっている。
「何だ、リア。なんか用か?」
 声をかけた途端、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。声をかけずに待っていたのは、リアなりの気遣いと思って良いのだろうか。
「質問です。何故レイは私達に『擬似魔剣』のつくり方を教えてくれたのですか?」
 何故だろうか。聞かれてみると言葉が出ない。別に三人を戦争に送り出したい訳でもないし、実力がしっかりあるのだから二対一を保つことが出来ればランク戦でも十分戦える。
「……理由がないな」
 思わず声に出てしまった。念のためってほど使用者の能力が上がるわけでもないからそうとも思えなかった。隣でリアが笑っている。そんなにおかしいことだろうか。
「もう一つ、質問です。この『擬似魔剣』をつくる刻印を弓に付けたらどうなるんでしょうか?先程の説明では、魔力経路パスを剣まで通す様なことだと言っていましたが、弓の場合、攻撃に使うのは矢であって弓ではないです。そうなると、弓に刻印をするのは無駄なのかもと思いましたが、どうなるんでしょうか?」
 自分の武器のことばかりでそんなことまで考えてなかった。だが、これも気になる。
「…………試しにつくるか」

 試作した弓を持って俺とリアは闘技場に戻ってきていた。さすがに、オリハルコンや俺がつくった『擬似魔剣』の多くに使われているミスリルを使うわけにはいかないので銀で代用した。その弓を持ったリアの藍色をした魔力がオリハルコンの時よりはかなり薄くではあるものの、しっかりと流れている。
 弓を構え、弦を引き絞り、的を狙う。リアが行ったこれだけの動作に、俺は思わず見とれてしまった。間違いなく、今までみてきた中で一番綺麗だ。
 的までの距離は二百メートル程。普通の弓なら威力減衰が激しく、そもそも当たることなどほぼないが、当たっても的に刺さらないほどの距離だ。
 リアが弦を押さえていた指を離す。瞬間、
「は?」
 遅れて衝撃波が俺とリアの身体を叩く。危険な域まで達したものではないが、矢を放って衝撃波ができるとはどういうことだろうか。しかも、この距離で的に当たった弓が的を砕く程の威力を出せるなんて、見ていなかったら信じなかっただろう。
「………………」
 リアは、口を開けて、放心状態で自分の放った矢が砕いた的の方を見ている。
「……驚き。自分でも放った矢が見えなかった」
「!!」
 放った本人でさえ見えない程の速さとは一体何なのか。刀の時も思ったが、これで再現なのだ。馬鹿げてる。人間の扱える魔力でこれだけの威力を出せるものに、最上位に数えられる天使や悪魔が封印されていると思うと、憧憬より畏怖の感情に近くなってくる。それはリアも同じようで、的の方を見るのをやめて、自分の弓を見ている。
「これで知りたかった事はわかったな。しかも、かなり強いこともわかった。ありがとな、リア」
「むふん。褒めてくれて嬉しいです。ありがとうございます、レイ」
 ぽすんと頭に手をのせてやると、リアは誇らしげにそう言った。その姿は小動物を思わせ、こちらの気持ちが和む。
「けど、その、むふんってなんだ?」
「…………」
 ………………ぽすん。
「むふん」
 …………ぽすぽす。
「むふん、むふん」
そういう原理か。
 ちらりと目を向けると、リアが、顔をうつむかせて顔を隠す。だが、耳が真っ赤なせいで顔まで真っ赤なのは容易に想像できる。この間も、俺はリアをぽすぽすし続けているので、横でリアはむふんむふん言っている。
「あの、……むふん、すみま……むふん、せん。恥ず……むふん、かしい……むふん、ので……むふん、やめ……むふん、ていた……むふん、だけます……か?……むふん、むふん」
 わかりづらいが、「あの、すみません。恥ずかしいので、やめていただけますか?」だろうか。
「小動物みたいで可愛いから無理だ」
「っ!?~~~~!!」
 更に顔を真っ赤にして、怒っているのだろうか?ほっぺたを膨らませようとして、むふん、と言って中の空気が抜けてしまう。この動作を何回も繰り返している。
 一頻りリアで遊んだので、そろそろ切り替えなければいけない。また『擬似魔剣』をつくりに戻らなければいけない。
「戻るぞ、リア。弓にもその刻印をつけるかは自分で決めてくれ。俺としては欲しいが、その判断はリアに任せる」
 俺の言葉に、リアは意外な反応を見せた。
「少し、怒っています。なんで私には、レイにあれだけ遊ばれて、何にも見返りがないんですか。不公平です!平等じゃないです!」
 まさかそんなことを言われるとは想像もしてなかった。でも、確かにその通りと言えばその通りだ。ここは俺が悪い。素直に認めるべきだろう。
「わかった。じゃあ何が欲しい?」
「…………回答です。恥ずかしかったですけど、とっても嬉しかったので、またこんな風に、頭をぽんぽんしたり、なでなでして欲しい、です」
 思わず、「は?」と声が漏れそうになった。まさかまたしてくれなんて頼まれると思わない。普通ならではあるが……。
 リアの方を見ると、リアは、上目遣いにこちらを見ていた。こんな風に見られたら断ることが出来るわけがない。
「……わかった。今度からも、こうしてやればいいんだな」
「わかれば良いのです。わかれば。さあ特別棟に戻りましょう」
 リアの言葉に頷き、特別棟に足を向けた。
「レイはバカです。女誑しです。鈍感です」
 後ろを歩いていたリアの小さな呟きは、俺には聞こえなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...