最弱の少年は、最強の少女のために剣を振る

白猫

文字の大きさ
16 / 22
第2章

第2章 6

しおりを挟む
 日をまたいでクレア先輩との試合当日。試合前の選手控え室は、ピリピリと緊張した空気が流れていた。
「今日までオーダーを隠していたのは謝る。どうか、俺に力を貸して欲しい」
 俺の一言に、三人が目を丸くする。パーティーごとに予選トーナメントのオーダーは配られていたのだが、俺は、三人にそれを見せず、隠していたのだ。三人が試合の前にやる気を失うことがないようにという考えでやったことだったのだが、それが逆効果であることは、目の前にいる三人の雰囲気を見れば簡単に予想できることだった。
「疑問です。隠していたから何なのですか?私達はパーティー、仲間です。少し、悲しいとは思いましたが、それぐらいで逃げ出すのなら、昨日みたいなハードスケジュールな一日を一緒に過ごしてないですよ」
「っ!!」
 リアの言葉が、深く心に刺さった。そして、他の二人も頷いてくれたことに、思わず、熱い物がこみ上げそうになる。リアが言ったとおり、昨日はかなりのハードスケジュールだった。あのあともう一度闘技場に行き、全員が俺に一撃を与えられるまで一対一での試合を続けるという地獄の様な鍛練を行い、三人の能力の底上げをしたのだ。確かに、普通なら途中で投げ出すような事を三人はやり遂げてくれた。
「ありがとう」
 思わずその言葉が口から零れた。別に恥ずかしいことではないはずのに、顔がカッと熱くなり、三人から顔を背けてしまう。三人は、そんな俺を見て声を上げて笑った。
「レイが本気でありがとうって言ったぞ!あのレイが、本気で!」
「ボクも初めてだよ。レイが本気で人にお礼するの見たの!いやーまさかお礼をするだけであんなに恥ずかしがるとは思ってなかったけどね!」
「同感です。まさか、こんな所に弱点があったとは驚きです」
 別にいつも本気でお礼していないわけでもないのに、ひどい言いがかりだな。とは反論できない。確かに周りから見たら気持ちがこもってないようにとれるような言い方だった気がしなくもない。
「……まぁ、そもそも怒ってないし、オーダー表のことは知ってたよ。というか、拡大コピーされて張り出されてたから今日の試合で当たることは知ってるよ。多分、君以外の全校生徒が」
「え?」
 ルカの一言で、時が止まったような感覚に陥る。オーダーヒョウノコトハシッテタ?ゼンコウセイトガシッテル?
「まじで?」
「まじで」
「まじか……」
 自分の努力がいかに無駄だったか痛感する。やはり誰に対してどうやっても隠し事はうまくできない。俺の顔を見て、ルカが「普通にみんな緊張してただけだよ」と付け足した。
「………………」
「………………」
「…………それじゃあ、緊張も解けたようだし、今日の作戦会議だ」
 誤魔化せるとは思っていないが、出来るだけ誤魔化そうと努力はする。……後ろで「誤魔化しましたね」という声が聞こえたのは気のせいだ。
「今日のランク戦の試合は、知っての通りクレア先輩達との試合になる。こちらからしてみればかなりの格上が相手のように見えるが、勝機は、ある」
 言っているこちらの方が緊張で身体が強張る。その身体をほぐすように息をしてもう一度口を開く。
「今回は二人一組ツーマンセルで戦う。ただし、相手には俺が一人だけでクレア先輩と、残りの三人が他の奴らと戦う構図になるようにだ。……そして、今回の作戦で一番重要なことが二つ。必ず二対一になるように戦え。そして、姿
 リアが手を挙げる。俺が頷くと、それを確認し、当然の疑問を口にする。
「質問です。何故、レイと私なのですか?ここは、前衛向きのスルトさんの方が良いのでは?」
「確かに、スルトが前衛でリアとルカが後ろから叩いた方が良いかもしれない。だが、今回は違う。……正直、前衛として、今のままではスルトは力不足だ。多分二人目を倒しきる頃にはかなりの被弾をしている可能性がある。それなら、リアを前に置いて中距離戦を中心に叩く。それから──」
 リアの質問に答え、そのまま作戦の細かい説明をし終えた頃には試合開始の放送がなっていた。
『今日最期の試合です!ついに我が学園の誇る【氷妃ひょうき】が、登場します!果たしてどんな美しい戦いを見せてくれるのか!?それでは両選手の入場です!!』
 勿論、スミスである俺たちに紹介文はない。だが、それでいい。

 この戦いに勝つための一歩目を俺は踏み出した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

処理中です...