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第2章
第2章 7
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俺は、目の前にそびえるビル群に目を細める。
空間投影型闘技場第6ステージ、大型都市。10まである闘技場のステージの中で最大の大きさを誇り、唯一現代的な建造物のあるステージとなっている。その直径は3キロあり、今回のランク戦では、全員がランダムにこのステージの中に配置されるようになっている。そのため、生徒にはインカムが配られ、そのインカムでやりとりが出来るようになっている。
だがそんなことよりも、今は一昨日の夜クレア先輩にひどいことを言ってしまったことが気にかかる。いざ当日になり、思考がクリアになってみると、あの時クレア先輩が挑発してきたとはいえ、それ以外には特に何もされていないことに気付いてしまい、朝から若干気が重い。あんな言葉を放ってしまった俺が悪いのだが、だとしてもクレア先輩が気に病んでいないか心配な面がある。
「だが今は、そんなことをいってられないな」
口に出して、気持ちを整理する。この試合に勝たなければ、ティナと同じように戦場に出ることはできない。個人的な恨みがないことに気付いたにせよ、クレア先輩のことを倒さなければいけないことに変わりはない。
『今回の試合は特別に、解説にクヴィナ理事長先生に来てもらいました!理事長先生から見て、どんな試合展開になると思われますか?』
実況のアナウンスが入り、その声の後ろから、会場の熱気が伝わってくる。
『どうだろうな?そんなことはどうでも良いことだ。さっさと始めてくれ』
実況の生徒の問いにクヴィナはぶっきらぼうに答える。生徒は、「あはは、そうですか」と、苦笑いを浮かべ、試合開始を宣言する。
『さぁここからは真剣勝負!実況の音声も聞こえなくなる。集中して、思う存分戦ってくれ!…………3、2、1スタート!!』
「こちらレイ。聞こえてるか、リア」
インカムを叩き呼びかける。
『大丈夫です。聞こえています』
すぐに返事が返ってくる。コレが出来なきゃ話にならない。特に今回の作戦では。
「今回は俺とリアが主軸だ。気を引き締めていくぞ。作戦開始だ!」
そう言った瞬間、視線の先、かなり遠方に見えるビルの屋上で、何かが光った。
「ッ!」
瞬時に抜刀し、そのまま切り上げる。心臓の前辺りで、金属と金属が当たるような音が鳴り、後方のアスファルトが爆発する。それと同時に、今度は頭上から周囲を囲むように短機関銃の銃弾が着弾。落下の勢いで威力の増した蹴りが飛んでくる。
「銃やら仕込み武器なんか使ってたら自慢のスピードが鈍るんじゃないですか?クレア先輩」
刀で靴のかかとから飛び出た刃を受けながら笑ってみせる。
「貴方こそ、これほど簡単な作戦にかかるなんて刀を多く持ちすぎて動けないのではなくて?レイ君」
飛び退きながら、クレア先輩も同じように笑う。
数瞬の後、同時に静から動に切り替わる。10メートルほどあったクレア先輩との距離は一瞬でなくなり、剣戟の応酬が始まる。
一撃、二撃、三撃。打ち合う数が増すほどに思う。この人は、正真正銘今まで戦ってきた相手で一、二を争うほどに強い。両手持ち一刀で刀を振るう俺に対して片手持ちの細剣一本でその勢いを殺し、すぐさまカウンターを入れてくる辺り流石と言えるだろう。
だが──。
「まだ剣術では負けてない!」
細剣を弾き、決定的なチャンスが出来る。
「でも、まだ剣術だけしか勝てていないでしょう」
この状況でクレア先輩は、そう言って笑った。
身体中に悪寒が走る。咄嗟に横に跳ぶが、もう遅かった。機関拳銃が左の脇腹に風穴を幾つか空けていった。
もう一度距離をとり、崩れた体勢と呼吸のリズムを整える。
『撃破報告です。パラディンの先輩を一人、倒しました。二人目も発見済み。そちらの位置もわかる場所にいます。首尾はどうですか?』
「あー、こっちは結構厳しいな。リアの方も覚悟しておいてくれ」
一つ目の合図を送る。気付かれないように、慎重に。「了解です。ではまた」と言って、リアとの通信が切れる。
「よくそんな傷を庇いながら平然と話せますわね」
クレア先輩が少し引いたようにそう言った。
「コレも一つの戦いである以上、味方にも敵にも自分が弱っていることがわかれば戦況が傾きますからね」
実際は合図としてあの言葉を言っているのでリアは俺の傷の状況も知っているのだが。
「……本当に、それだけですの?」
「さぁ。どうでしょうか?俺が勝ったら教えてあげますよ」
はぐらかしながら、しかし否定は出来ずにそう返す。
「もう一度、今度はコレで行きます」
もう一本。今度は西洋剣を抜き、二刀を構え、追求される前に強引に話を変える。
「二刀流、ですか貴方の得意分野は一刀流ではなくて?」
「生憎、出血のせいで時間がないので、それに関してもノーコメントでお願いします」
どうせ剣を交えているうちに分かることだ。言わなくても良い。
そしてまた、同時に相手に向かって駆け出す。第2ラウンドの開始だ。
空間投影型闘技場第6ステージ、大型都市。10まである闘技場のステージの中で最大の大きさを誇り、唯一現代的な建造物のあるステージとなっている。その直径は3キロあり、今回のランク戦では、全員がランダムにこのステージの中に配置されるようになっている。そのため、生徒にはインカムが配られ、そのインカムでやりとりが出来るようになっている。
だがそんなことよりも、今は一昨日の夜クレア先輩にひどいことを言ってしまったことが気にかかる。いざ当日になり、思考がクリアになってみると、あの時クレア先輩が挑発してきたとはいえ、それ以外には特に何もされていないことに気付いてしまい、朝から若干気が重い。あんな言葉を放ってしまった俺が悪いのだが、だとしてもクレア先輩が気に病んでいないか心配な面がある。
「だが今は、そんなことをいってられないな」
口に出して、気持ちを整理する。この試合に勝たなければ、ティナと同じように戦場に出ることはできない。個人的な恨みがないことに気付いたにせよ、クレア先輩のことを倒さなければいけないことに変わりはない。
『今回の試合は特別に、解説にクヴィナ理事長先生に来てもらいました!理事長先生から見て、どんな試合展開になると思われますか?』
実況のアナウンスが入り、その声の後ろから、会場の熱気が伝わってくる。
『どうだろうな?そんなことはどうでも良いことだ。さっさと始めてくれ』
実況の生徒の問いにクヴィナはぶっきらぼうに答える。生徒は、「あはは、そうですか」と、苦笑いを浮かべ、試合開始を宣言する。
『さぁここからは真剣勝負!実況の音声も聞こえなくなる。集中して、思う存分戦ってくれ!…………3、2、1スタート!!』
「こちらレイ。聞こえてるか、リア」
インカムを叩き呼びかける。
『大丈夫です。聞こえています』
すぐに返事が返ってくる。コレが出来なきゃ話にならない。特に今回の作戦では。
「今回は俺とリアが主軸だ。気を引き締めていくぞ。作戦開始だ!」
そう言った瞬間、視線の先、かなり遠方に見えるビルの屋上で、何かが光った。
「ッ!」
瞬時に抜刀し、そのまま切り上げる。心臓の前辺りで、金属と金属が当たるような音が鳴り、後方のアスファルトが爆発する。それと同時に、今度は頭上から周囲を囲むように短機関銃の銃弾が着弾。落下の勢いで威力の増した蹴りが飛んでくる。
「銃やら仕込み武器なんか使ってたら自慢のスピードが鈍るんじゃないですか?クレア先輩」
刀で靴のかかとから飛び出た刃を受けながら笑ってみせる。
「貴方こそ、これほど簡単な作戦にかかるなんて刀を多く持ちすぎて動けないのではなくて?レイ君」
飛び退きながら、クレア先輩も同じように笑う。
数瞬の後、同時に静から動に切り替わる。10メートルほどあったクレア先輩との距離は一瞬でなくなり、剣戟の応酬が始まる。
一撃、二撃、三撃。打ち合う数が増すほどに思う。この人は、正真正銘今まで戦ってきた相手で一、二を争うほどに強い。両手持ち一刀で刀を振るう俺に対して片手持ちの細剣一本でその勢いを殺し、すぐさまカウンターを入れてくる辺り流石と言えるだろう。
だが──。
「まだ剣術では負けてない!」
細剣を弾き、決定的なチャンスが出来る。
「でも、まだ剣術だけしか勝てていないでしょう」
この状況でクレア先輩は、そう言って笑った。
身体中に悪寒が走る。咄嗟に横に跳ぶが、もう遅かった。機関拳銃が左の脇腹に風穴を幾つか空けていった。
もう一度距離をとり、崩れた体勢と呼吸のリズムを整える。
『撃破報告です。パラディンの先輩を一人、倒しました。二人目も発見済み。そちらの位置もわかる場所にいます。首尾はどうですか?』
「あー、こっちは結構厳しいな。リアの方も覚悟しておいてくれ」
一つ目の合図を送る。気付かれないように、慎重に。「了解です。ではまた」と言って、リアとの通信が切れる。
「よくそんな傷を庇いながら平然と話せますわね」
クレア先輩が少し引いたようにそう言った。
「コレも一つの戦いである以上、味方にも敵にも自分が弱っていることがわかれば戦況が傾きますからね」
実際は合図としてあの言葉を言っているのでリアは俺の傷の状況も知っているのだが。
「……本当に、それだけですの?」
「さぁ。どうでしょうか?俺が勝ったら教えてあげますよ」
はぐらかしながら、しかし否定は出来ずにそう返す。
「もう一度、今度はコレで行きます」
もう一本。今度は西洋剣を抜き、二刀を構え、追求される前に強引に話を変える。
「二刀流、ですか貴方の得意分野は一刀流ではなくて?」
「生憎、出血のせいで時間がないので、それに関してもノーコメントでお願いします」
どうせ剣を交えているうちに分かることだ。言わなくても良い。
そしてまた、同時に相手に向かって駆け出す。第2ラウンドの開始だ。
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