19 / 22
第2章
第2章 9
しおりを挟む
「あらあら、どんどんと余裕がなくなっていますわねぇ」
クレア先輩が細剣を突き出しながらそう言った。
「剣技だけなら、勝てるのではなくて?」
余裕の笑みを浮かべるクレア先輩。本来なら安堵することができるその顔を見ても、俺の心が安らぐことはない。【仁王】に使う集中力は、尋常なものではない。しかも、出血のこともあり、短期決戦は必須。このままではジリ貧だ。
『こちらの準備は整いました。後はレイのタイミング次第です』
リアからの通信の言葉に、少しだけほっとする。後は、自分だけ。
最大限集中力を高め、刀のほころびにクレア先輩の突きを当て、その刃が砕けるのを見届ける。
近距離での射撃をもう一本の刀で弾き飛ばし。魔術戦の間合いまで飛び退く。それと同時に、クレア先輩の魔術によってつくられた氷で出来た剣山が、着地地点に出来上がる。
土台は仕上がった。後は一言。インカムのマイクをオンにし、呟く。
「『起動』」
「ッ!『誉れ高き守護神よ その聖盾を此度眼前に与えたまえ』」
爆発、轟音。
その瞬間、暴力の塊のような衝撃波が身体にたたきつけられ吹き飛ぶ。スルトに用意させていた五重の結界によって、ダメージは極限まで抑えているが、それでも実験的につくった弓よりかなり強力な衝撃波が飛んできた。
クレア先輩の方を見やると、固有魔術である【女神の聖盾】と共に、転移されていくガートレン先輩の姿が見えた。
やはり、ガートレン先輩がここで出てくるか、できればクレア先輩諸共転移してくれれば良かったのだが、そうはならなかったか。この作戦は、基本的に結界の中にいる俺と、ぼろぼろの状態のリアしか残れないからな。
『撃破報告です。こっちにいた敵は転移しました。ルカさんも同様です』
「こっちはガートレン先輩とスルトが転移した。後はこっちに任せろ」
『了解です。私も転移した方が良いですか?』
「いや、万が一俺が負けたら戦うやつがいないとだから休んでてくれ」
リアとの通信を終わって、先輩達が居た方向を見ると、瓦礫を押し退け、クレア先輩が這い出るようにして立ち上がる。その身体は、先程の攻撃で、あちこちに傷かついていた。
「……全部、計算通りですの?」
「まぁそうですね。【仁王】にかかってくれるかどうかは賭けでしたけどね」
俺の言葉を聞いて、クレア先輩は笑った。
「【仁王】ですか……。ちゃんと対策はしたはずなのですけれど」
「まあ、ここからは俺の本分ですが、しっかりついてきてくださいよ?」
俺がクレア先輩に突きつけるのは、今日持ってきた三本のうち最期の一刀、擬似魔刀。玉虫色の刃からは、既に純白の魔力が漏れ出している。恐らくこの刀が普通とは違うということには気付いているだろう。
「えぇ、勿論ですわ。貴族の女性の多くは、男性の望みを叶えるのが本望なのですから」
クレア先輩も得物の細剣を構え、笑みを浮かべて見せた。
クレア先輩の姿が消える。飛んでくる攻撃の方向は、おそらく、左!
金属同士がぶつかり合い、甲高い音を鳴らす。細剣が弾かれたことでクレア先輩の体勢が崩れる。
脇腹を狙って一撃。だがその攻撃は、超人的な反射神経によって弾かれる。
一度距離をとってもう一度。次に狙うのは剣を持たない左腕!
「セァッ!!」
右手で上段からの斬り払いでフェイント、左手に持ち替え真横に振り切る。
切断された腕が宙を舞い、クレア先輩の顔に驚愕と焦燥の色が映る。
「これで、タイムリミットは同じぐらいですか?」
クレア先輩のなくなった左腕を見ながら嗤ってみせる。
「そうかもしれないですわね」
これでクレア先輩のアドバンテージもなくなった。ここからは、どちらの体力が先に尽きるかの勝負。絶対に負けられない。
擬似魔刀の纏う純白の魔力の輝きが呼応するように強くなる。
「『付加魔術、身体能力強化、全能力強化』──行きますよ」
先程とは比べものにならないほどの速さで距離を詰め、一撃。カウンターの刺突を身体をひねって回避し、そのまま斬り結んでいく。剣がぶつかるたびに周囲に衝撃波が発生し、更地になっていく。
隙のないクレア先輩の剣の、普段なら隙と呼べないほどの隙を探して、剣を振る。
「そこ、だぁぁぁ!!」
剣戟音の後、静寂が訪れる。クレア先輩の細剣は、後方へ弾き飛ばされ、カラリと音を立てた。
「……私の負けですわね」
一言だけ言って、クレア先輩は首を差し出す。
「後でクレア先輩の所に行きますね。話したいこともあるので」
刀を振るうと、首に当たる寸前で、命の危険性のある攻撃と判断され、クレア先輩が強制転移されていく。
勝利が決まった瞬間、全身の力が抜けて崩れ落ちてしまった。
「ははっ、ははははっ!」
勝てた。その事実が嬉しい。これでまた、ティナの前に立つことが出来る。
元の円形の闘技場に戻り、観客席の声が聞こえてくる。
『鳳レイ、クレア・ラナ・シュタイン撃破……これにより、二回戦出場は、鳳レイ率いるスミスチームに決まりましたぁぁ!!!』
実況の声に応えるように、観客達が、一斉に歓声を浴びせてくる。
その後まもなくして、俺とリアは医務室に運ばれ、生徒からすれば大番狂わせの結果で今日の試合は幕を閉じた。
クレア先輩が細剣を突き出しながらそう言った。
「剣技だけなら、勝てるのではなくて?」
余裕の笑みを浮かべるクレア先輩。本来なら安堵することができるその顔を見ても、俺の心が安らぐことはない。【仁王】に使う集中力は、尋常なものではない。しかも、出血のこともあり、短期決戦は必須。このままではジリ貧だ。
『こちらの準備は整いました。後はレイのタイミング次第です』
リアからの通信の言葉に、少しだけほっとする。後は、自分だけ。
最大限集中力を高め、刀のほころびにクレア先輩の突きを当て、その刃が砕けるのを見届ける。
近距離での射撃をもう一本の刀で弾き飛ばし。魔術戦の間合いまで飛び退く。それと同時に、クレア先輩の魔術によってつくられた氷で出来た剣山が、着地地点に出来上がる。
土台は仕上がった。後は一言。インカムのマイクをオンにし、呟く。
「『起動』」
「ッ!『誉れ高き守護神よ その聖盾を此度眼前に与えたまえ』」
爆発、轟音。
その瞬間、暴力の塊のような衝撃波が身体にたたきつけられ吹き飛ぶ。スルトに用意させていた五重の結界によって、ダメージは極限まで抑えているが、それでも実験的につくった弓よりかなり強力な衝撃波が飛んできた。
クレア先輩の方を見やると、固有魔術である【女神の聖盾】と共に、転移されていくガートレン先輩の姿が見えた。
やはり、ガートレン先輩がここで出てくるか、できればクレア先輩諸共転移してくれれば良かったのだが、そうはならなかったか。この作戦は、基本的に結界の中にいる俺と、ぼろぼろの状態のリアしか残れないからな。
『撃破報告です。こっちにいた敵は転移しました。ルカさんも同様です』
「こっちはガートレン先輩とスルトが転移した。後はこっちに任せろ」
『了解です。私も転移した方が良いですか?』
「いや、万が一俺が負けたら戦うやつがいないとだから休んでてくれ」
リアとの通信を終わって、先輩達が居た方向を見ると、瓦礫を押し退け、クレア先輩が這い出るようにして立ち上がる。その身体は、先程の攻撃で、あちこちに傷かついていた。
「……全部、計算通りですの?」
「まぁそうですね。【仁王】にかかってくれるかどうかは賭けでしたけどね」
俺の言葉を聞いて、クレア先輩は笑った。
「【仁王】ですか……。ちゃんと対策はしたはずなのですけれど」
「まあ、ここからは俺の本分ですが、しっかりついてきてくださいよ?」
俺がクレア先輩に突きつけるのは、今日持ってきた三本のうち最期の一刀、擬似魔刀。玉虫色の刃からは、既に純白の魔力が漏れ出している。恐らくこの刀が普通とは違うということには気付いているだろう。
「えぇ、勿論ですわ。貴族の女性の多くは、男性の望みを叶えるのが本望なのですから」
クレア先輩も得物の細剣を構え、笑みを浮かべて見せた。
クレア先輩の姿が消える。飛んでくる攻撃の方向は、おそらく、左!
金属同士がぶつかり合い、甲高い音を鳴らす。細剣が弾かれたことでクレア先輩の体勢が崩れる。
脇腹を狙って一撃。だがその攻撃は、超人的な反射神経によって弾かれる。
一度距離をとってもう一度。次に狙うのは剣を持たない左腕!
「セァッ!!」
右手で上段からの斬り払いでフェイント、左手に持ち替え真横に振り切る。
切断された腕が宙を舞い、クレア先輩の顔に驚愕と焦燥の色が映る。
「これで、タイムリミットは同じぐらいですか?」
クレア先輩のなくなった左腕を見ながら嗤ってみせる。
「そうかもしれないですわね」
これでクレア先輩のアドバンテージもなくなった。ここからは、どちらの体力が先に尽きるかの勝負。絶対に負けられない。
擬似魔刀の纏う純白の魔力の輝きが呼応するように強くなる。
「『付加魔術、身体能力強化、全能力強化』──行きますよ」
先程とは比べものにならないほどの速さで距離を詰め、一撃。カウンターの刺突を身体をひねって回避し、そのまま斬り結んでいく。剣がぶつかるたびに周囲に衝撃波が発生し、更地になっていく。
隙のないクレア先輩の剣の、普段なら隙と呼べないほどの隙を探して、剣を振る。
「そこ、だぁぁぁ!!」
剣戟音の後、静寂が訪れる。クレア先輩の細剣は、後方へ弾き飛ばされ、カラリと音を立てた。
「……私の負けですわね」
一言だけ言って、クレア先輩は首を差し出す。
「後でクレア先輩の所に行きますね。話したいこともあるので」
刀を振るうと、首に当たる寸前で、命の危険性のある攻撃と判断され、クレア先輩が強制転移されていく。
勝利が決まった瞬間、全身の力が抜けて崩れ落ちてしまった。
「ははっ、ははははっ!」
勝てた。その事実が嬉しい。これでまた、ティナの前に立つことが出来る。
元の円形の闘技場に戻り、観客席の声が聞こえてくる。
『鳳レイ、クレア・ラナ・シュタイン撃破……これにより、二回戦出場は、鳳レイ率いるスミスチームに決まりましたぁぁ!!!』
実況の声に応えるように、観客達が、一斉に歓声を浴びせてくる。
その後まもなくして、俺とリアは医務室に運ばれ、生徒からすれば大番狂わせの結果で今日の試合は幕を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。
三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。
……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」
その言葉は、もう何度聞いたか分からない。
霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。
周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。
同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。
――俺だけが、何もできない。
反論したい気持ちはある。
でも、できない事実は変わらない。
そんな俺が、
世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて――
この時は、まだ知る由もなかった。
これは――
妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる