月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第15話 沙更 古代遺跡を探検す

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月の魔女とよばれるまで

第15話 沙更 古代遺跡を探検す

沙更は、姿見で姿を確認した後に今の身体がかなり異常なのに気付いた。

お腹が減らないのもそうだが、何というかいろいろな物が必要ないそんな感じがしていたのだ。実際、今の沙更の身体はセーナの物だが、人形薬と大量の魔力を保持している結果人間を辞めてしまったようだ。

体内にある大量の魔力のおかげで、食事もほとんど必要ないし、水分もそこまで必要ない。成長はするものの不老というまさに人間を超えた何かになってしまっていたのだった。

「何というか、凄い身体になっちゃってる。セーナちゃんの時からじゃなさそう。いろいろとあった結果ってところなのかな?」

沙更としては、そう考察するしかない。結合する前の記憶はセーナの方で守ってしまっているからかあまり流れてこない。それだけ悲惨だったという証でもあった。

「ずっと、ここに居るわけにも行かないよね。さっき、ワンドと短刀が出てきたけど今はないね。意識すればでるのかな?」

疑問に思ったことを口にする。すると目の前にワンドと短刀が現れる。どうやら、意識をすれば勝手に出てくるようだ。便利だなあと思いつつも沙更は今の自分の身体がどれだけ規格外なのか、苦笑を浮かべる。

そのまま、ワンドを手に取って部屋の扉を開ける。部屋の外は古代遺跡であり、モンスターがはびこる場所。

「ものすごく古い建物だって言うのは分かったかな。でも、何というかものすごく不気味な感じ」

独り言になってしまうが、それでも声を出しておかないと雰囲気に飲み込まれそうな感じがしていた。

姿見の部屋から出ると扉に魔方陣が描かれていた。どうやら、姿見の部屋と魔方陣の部屋はモンスターから保護されていたらしい。かなり昔に描かれた魔方陣だが、今でもはっきりと確認できるあたりものすごく高度な技術を使っているのだろうと言うのは分かる。

何というか、エーベルから教えてもらった知識の中に魔方陣に関しての物もあったようでなんとなく理解出来てしまうのだ。古代魔法士の知恵と言うのは膨大な物なのだと気付く。

姿見の部屋から少し移動すると、古代遺跡の別の部屋からデスハウンドが三体ほどこちらに襲いかかってきた。狭い通路からの不意打ちだった。

いきなりのことに、沙更は固まってしまう。本当なら、その時点で命取りになるのだがエーベルに魔力の使い方を教えてもらった沙更は例外だ。

飛びかかってきたデスハウンドから魔力の障壁が沙更を守ってくれた。魔力障壁は、術者が持つ魔力に対して硬くなる性質を持つ。膨大な魔力を持つ沙更だからこそ、デスハウンドの牙でも傷一つ付いていないほどの強度を持っていたのだ。

魔力障壁で守ってくれたことに気持ちが落ち着いた沙更は、エーベルから教えてもらった初級魔法の一つファイアーを頭に思い浮かべる。すると、右手に持つワンドの先に燃えさかる炎が顕現した。

そのまま、ファイアーを放つ。デスハウンドに向かう炎。

デスハウンド三体はそれを避けようとするが、狭い通路だったのが災いして一体に命中するとその身体を一瞬にして灰にしてしまった。どれだけの高温だったのかは分からないが、少なくても2000度以上の炎であったのはなんとなく理解した。

魔物の身体でも灰に出来る程の炎の温度なら、鉄くらいは溶かせるくらいじゃなければ耐えきってしまうだろうと思ったからだ。

仲間を灰にされたデスハウンドは今度は素早く爪で、沙更を狙って動く。が、それも魔力障壁に弾かれてしまう。

デスハウンドの攻撃が通らないのを改めて確認したところで、沙更は次に風の刃を思い浮かべる。そして、生み出されたのは真空の刃、ウィンドカッターだった。

ワンドの先から生まれた真空の刃は、三つに別れてデスハウンドに襲いかかる。音速に到達するほどの速度で迫る刃に、デスハウンドも避けることは叶わない。そのまま、一体は首を叩き落とされて絶命し、もう一体は身体を三枚に捌かれてしまった。

いきなりの遭遇で驚いたものの、なんとか撃退できた事にほっとする。そこで疑問に思ったのは、モンスターとは言え生き物の殺生をしたのになんの思いも浮かばなかったことだ。

精神が強い沙更とは言え、殺生をすることに躊躇いがないなんて言うことは無い。それだけに、何の感慨も浮かばないことに変だと気付いたのだ。

(この身体と言い、モンスターを倒してなにも思わないことと言い。ものすごくこの身体は私に、この世界の辛いところを軽減してくれてるのかな)

沙更がそう思うのも無理はない。実際で言うとセーナの過酷な状況をなんとかした結果、いろいろと副作用がありすぎて人間としていろいろと越えてしまっていたと言うのが正しいのだが、それを知るのはしばらく経ってからのことになる。
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