月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
19 / 365
古代遺跡の出来事

第16話 冒険者たち7

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第16話 冒険者たち7

オーガ二体を倒したところで、既にミリアは大怪我を負い、ヘレナもある程度の怪我を負う事態となっていた。

ガレムがオーガを潰した格好だが、それでも無傷とは言えない。ある程度の反撃を受けたことで、それなりの怪我を負っていたからだ。

パウエル一人で、サイクロプスを抑えられているからまだこの程度で済んでいると言って良い。もし、そこにサイクロプスまで混ざっていたら確実に全滅の憂き目にあっていただろう。

本来ならば、サイクロプスを一人で相手するのはCランク成り立ての冒険者では荷が勝ちすぎると言って良い。だが、パウエルは盾スキルと剣技を併せて使うことで両立させていたのだ。

そういう点、パウエルはかなり有能な冒険者と言って良かった。武器が鋼鉄ならば、ここまで苦戦もしなかっただろう。惜しむべきは、武器が鉄の剣であったことだ。

ガレムの筋力増強と違い、パウエルの剣技はそこまでの威力を持たない。

が、サイクロプスとの一騎打ちは彼の剣の才能を更に高め、洞察力などもかなり向上することになるのだがそれは後の話。

鉄の剣で、サイクロプスとやり合うパウエル。普通の冒険者なら、この時点でさじを投げるところだがパウエルは今使っている鉄の剣にかなりの愛着と使いこなす技術を併せ持っていた。

(くっ、鉄の剣では弾かれる。が、そうだとしても皮膚の同じところに切りつける事が出来ればあるいは)

そう思うのも分かるが、本当の意味でそれを実践する事が出来るのはそれなり以上の腕を持っていると言う証でもある。パウエルは剣技中のスキルを持っているが、実際は剣の扱い大をこの時点で習得していた。

長きにわたる鉄の剣での剣の扱いを身体に染みこませた事で、普通の冒険者が手に入れることの出来ない剣の神髄の一部に触ったのだった。

サイクロプス相手に、鉄の剣を振るうパウエルに迷いは一切見えない。実際、ラウンドシールド自体の損傷が激しいがそれでもパウエル自身の怪我はほぼなかった。

それだけ上手く盾を使えている証でもある。実際、サイクロプスはパウエル相手に攻めあぐねていた。

拳や蹴りの攻撃に対して、盾で打点を変えたり受け流したりと完全に受け止めると言うことをしていなかった。もし、受け止めたら盾の方が持たないと言うのは、パウエルにとって身体で理解していたからだ。

だからこそ、盾で受け流したり打点を変えてそらしたりとしている。そうでなければ、鉄を貼り付けただけの木製のラウンドシールドがそこまで持つわけがないのだから。

一度ならず二度と同じ場所に鉄の剣で切りつける。ほぼ同じ場所から同じ場所に切りつけられるようになるまで、かなりの時間がかかっているがそれでもじわじわとサイクロプスにダメージを与えていく。

ガレムが動けるようになる頃には、パウエルの鉄の剣が限界を迎えつつもサイクロプスにとどめを刺すところだった。

何度も切りつけた場所は既に皮膚に切れ目が出来ており、そこから剣を深く差し込んでいく。

一気に肉まで切られたことに、サイクロプスが耐えきれなくなって膝をついたところに、切れ目から抜いた剣を開いた口元に突き刺して脳まで傷つけたところで勝負は決まった。

だが、この戦闘でパウエルの剣は限界を迎えてしまい、口元から剣を抜いた際に半分から折れてしまう。

「流石に、限界か・・・」

「お疲れだぜ、リーダー。と言っても俺のハンドアックスもそろそろ限界だ。ミリアも怪我を負ったし、ヘレナの怪我もそれなりにひどいぞ。ヘレナの治癒魔法だけじゃ治療しきれないだろ?」

「確かに厳しいな。この剣が折れた以上、これ以上の戦闘は厳しい。予備の剣は持っていないのが徒になったか」

「まあ、男の俺らくらいしか立っていられないんだから消耗激しすぎだろうよ」

そこまで話をしたところで、ミリアが立ち上がる。かなりの怪我を負ってはいるが、立ち上がる元気はあるようだ。

「流石に、ここから先は厳しいかな。リーダーもガレムもそろそろ限界なんでしょ?手助けを呼ばないとダメだよね」

「ミリア、その怪我で動く気か?無理をしすぎてるだろう」

「この中で、動けて身軽なのはあたしくらいでしょ?それに、ヘレナの治療はリーダーとガレムが優先で受けなきゃ。元々そう言う約束だったよね」

「確かにそう言う約束だが、お前を死なせるつもりはないぞ?」

パウエルはミリアを見て。止めようとするがそれにミリアは首を振った。

「あたしのことは気にしないの。リーダーとガレムが居ない時点で、あたしが生き残れるわけがないの分かっているよ。だから、誰かがいるかどうか探ってくるくらいはさせて」

「だが・・・」

「ヘレナの治癒魔法で、回復できる回数も限界があるでしょ?この古代遺跡だと足手まといになるあたしが、治療を受けるわけには行かないのは分かって欲しい」

一番現実を見ているのはミリアなのはパウエルも理解はしていた。が、感情はそれと別の判断を下す。長く冒険者としてやってきたのだから、死なせたくはないと思ってしまうのだ。

が、今回ばかりはミリアは首を縦に振らず。その場から、別の部屋へと動いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...