月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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古代遺跡の出来事

第27話 虚空庫

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月の魔女とよばれるまで

第27話 虚空庫

魔方陣から魔力が消えたのを確認すると沙更とミリアは姿見の部屋に戻ってきた。

魔方陣の部屋でいろいろとあったが、ミリアにはさらなる力が与えられて、沙更もマジックプラチナの腕輪を預かったりと戻ってきたことが非常に良かったと思えた。

「なんか、本当にあたしがあたしじゃないみたい。こんな感じは初めてかな」

「ミリアお姉さん、身体が慣れてないと思います。それに、あれだけの魔力を身体に入れたのですから少し休んでくださいね。魔力酔いしてもおかしくないですから」

「そうさせてもらおうかな。それにしても、古代魔法士って凄いね。今だと言い伝えしか残ってないけど、あんなことが出来るなんて驚いたよ」

ミリアからしてみれば、エーベルの力は自分より遙か上の存在に映っていた。魔力だけでも数十万以上を誇るのは、なんとなく感じていたからだ。そういう点でも古代魔法士の力は、今の魔法士よりも遙かに上に感じられる。

そんな、エーベルが守って欲しいと言ったセーナ。約束したし、命を助けてもらったお礼も出来ていない。そのことを考えれば、そのくらいお安いご用だった。

「セーナちゃん、あたしもの凄く頑張るから守らせてね」

「ミリアお姉さんがそう望むのなら、私は拒否しません。こちらこそ、よろしくお願いしますね」

「うん、よろしくお願いされました。それじゃあ、ちょっともらった物を見てみようかな」

そう言って、エーベルから渡された幻影の衣を取り出す。生地としてもそこまで厚くないが、ものすごい魔力が込められていることが分かる。

「うん、ものすごい魔力がこもってる。普通の衣服じゃないよ、これ。今までのと比べても全然違う」

セーナの魔力をエーベルの知識で紡いだ糸で作り上げた幻影の衣は、ミスリルの糸よりも頑丈で魔法にも対抗力を持つまさに一級品の代物だった。そこまで厚みがない布地であるが、防御力は鋼鉄製のプレートアーマーすら遙かに超えていたのだから。

「触れば触るほど、ものすごい代物だって理解出来ちゃうんだけど本当に良いの?」

「その丈だと私は着られませんよ?ミリアお姉さんのために作った物ですから、素直に着てください。その方が服も喜びますよ」

「それでも気が引けるというか、凄い物過ぎて気後れしちゃう。慣れたら、気にしなくなるんだろうけど」

余りにも高価な代物だと気付くと怖じ気づいてしまうのは、ミリアが孤児だったからだろう。妙に、頭が回ってしまうのは苦労しているからだと沙更は思う。

他の三人は寝ていることから、ミリアは思い切ってレザーアーマーとその下に着ていた服も脱いでしまう。沙更としては大胆だなあと思いつつ、誰も見てないから大丈夫とも思う。

素肌から直に幻影の衣を着ると幻影の衣は、すんなりとミリアの身体に収まった。幻影の衣は沙更の影響か、着物に近い感じで動きやすい感じだ。強いて言うと足は若干膝の上までの丈で、腕は手首までの長さではあるが動きを阻害しないゆったり目の作りであった。

見た目は着物のように見えるが、多分パウエルたちが起きたら別の物に見えるんだろうと沙更は思う。今は、二人だけだから着物風に見える。だが、魔力が込められていることから別の物に見えてもおかしくはないと推測出来てしまう。

「いらなくなったレザーアーマーどうしますか?」

「もう、ボロボロだから捨てても良いけどセーナちゃん何かに使う?」

「何かの素材で使えるかも知れませんし、預かっても良いですか?」

沙更がそう言うとミリアはボロボロになったレザーアーマーを渡してくれる。それをそのまま沙更は、空間魔法のディメンションボックスを唱えた。

そもそも、異世界人の沙更にその手の知識は豊富にある。ネットゲームなどもかじっていた事もあるからか、イベントリのイメージが出来ないわけがない。

が、しかし膨大な魔力によって古代詠唱されたそれはまだに巨大な倉庫と言うしかなかった。

「えっと、思って詠唱してみましたけど大きすぎますね。これ」

「セーナちゃん、これまさか失われた魔法!?」

「空間魔法って失われてるんですか?確かに、かなりの魔力を使っていますけど私に取っては全然余裕ですよ?」

沙更の言葉に、ミリアは驚きの表情だ。それもそのはず、この時代重力魔法にしろ、空間魔法にしろ、失われた魔法であり、使い手など誰も居ない。

ある意味、言い伝えや魔導書などで記述が残るくらいでしかこの時代に残っていないのだ。

「空間魔法、ディメンションボックス改め虚空庫ってところでしょうか」

「セーナちゃん、まじめにこれは凄すぎると思うけど・・・。この倉庫って、もの凄い量が入るけど埋められる?全体埋まりきらないと思うんだけど、これ」

余りの大きさにミリアの想像を超えているが、それでも気絶したりしないあたりは頭が柔らかいのだと沙更は思う。普通の人なら頭が理解を拒否するだろうと言うところまで来ているからだ。
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