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古代遺跡の出来事
第44話 地上に向けて8
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月の魔女とよばれるまで
第44話 地上に向けて8
イメージが固まった沙更は、パウエルにコートを。ガレムにジャケットという風に分けることにした。魔力を糸に変換してからの糸巻きを作っていくのだが、その速度がヘレナの神官服の時よりもかなり高速になっていたのは慣れてきたからだろう。
それを見たミリアとヘレナが呆れた表情を浮かべる。
「セーナちゃんの糸巻きを製造する速度がまた上がってる」
「あの糸、売ったらいくらになるか考えるだけで恐ろしいわ。多分、他の人間に扱える代物じゃ無いのは分かっているけれど、もし扱えるのなら途轍もない高値が付きそうで」
出来る事が多すぎる沙更は、本当にその技能が分かった瞬間に商人か、貴族か、王族に狙われてしかるべきだったのだ。時間が止まった無限の倉庫は、商人たちの垂涎の的であったし、凄腕の治癒士でもあるから貴族や王族に狙われるのは確定事項と言って良かった。
「俺としては、むしろ同業の方が怖い気がする」
「あー、それは俺も思った。武器を失って、全滅とか良く聞く話だしな。それに、治癒魔法が一番まずいだろ。ばれたらまじめに勧誘しゃれにならないぜ?」
実際、冒険者に治癒士が同行していることは滅多に無い。後衛として、優秀と言いがたいのもあるけれど治癒魔法自体が多少の怪我を治せる位のものでしかないからだ。
だが、沙更の治癒魔法は重傷を負ったパウエルやヘレナ、ガレムですらあっさり癒やせる程の腕前だ。その時点で争奪戦になるのは目に見えている。更に言えば、虚空庫がばれた場合もっと大変なことになるのも言うまでも無いことであった。そんな事が出来る幼女に、魔の手を伸ばそうとする輩は山ほど出てくるのは想像に難くなかった。完全に金のなる木なのであるから。
そんな物騒な話を四人がしているとはつゆ知らず、沙更はパウエルのコートから作り始めていた。鎧の代わりになる上着をイメージして作っていく。
魔力の糸から作り上げるコートは、騎士でもうらやむ程の出來映えとなって30分後に出来上がった。出来上がったのは特殊なフロックコートで、やはり重みが無い。そして、鎧に比べれば可動部が多いように沙更がイメージしたため剣を振るうにも邪魔にならないそんな代物だった。丈は、膝までいかないくらいの大きめで言うまでも無く魔法にも耐性を持っていて、ミリアの幻影の衣やヘレナの神官服よりも糸の厚みが多い為、魔力自体もかなり強力に内包されていた。
そんな出來映えになったフロックコートをパウエルに渡す。
「パウエルさん、これどうぞ。今までの鎧よりも動きやすいのを頭に入れて作りました」
沙更から受け取ったパウエルは早速着てみることにする。着てみると重みが無いのとある程度風を通すらしい。普通ならあり得ないのだが、魔力の糸だけにそのくらいは可能と言うことのようだ。
「流石に重みが無いと言われたけれど、ここまで感じないと違和感があるな。それに鎧を着ている感じでも無いし、動きやすい」
パウエルにそう言われて、沙更としてはほっとする。どうしても、鎧では重みがある為動きを阻害しやすい。それを考慮に入れて作ったフロックコートだっただけに、内心無事に出来て良かったと思っていたのだった。
そうなってくるとガレムがパウエルを羨ましそうに見るのは当然の話だった。
「リーダー、その服良さそうだ。かなりの防御力もあって、動きやすくて魔法に耐性があるって思うけど凄いよな」
「それに関しては同感。本当に、セーナちゃんって凄すぎだよね」
「魔力で服を作るなんて、発想が出来るあたりが凄いと思うんだが」
「それを出来るだけの魔力操作スキルの高さもね。普通の魔法士にあれを望んじゃいけないわ、出来るわけがないもの」
四人してそう言いつつ、沙更に賛辞を送る。それを聞きつつも、ガレムのためのジャケットを作る。
なんだかんだで、一番地が厚めにイメージしていたのもあり腰までのジャケットながら、パウエルに渡したフロックコートよりも糸の厚みがある作りになってしまった。
沙更が不慣れと言うこととどうせなら地が厚い方が良いと思ったのを魔力の方で感じ取ったからだ。それでなくても沙更の魔力は沙更が思ったことに反応する。
本来ならば、魔力自体を操ると言うのはなかなかに骨が折れるのだが、そんなことお構いなしで魔力操作が出来てしまう為の弊害と言うべきだろうか?
フロックコートを作った経験があるからか、今度は15分ほどでガレムのジャケットが出来上がる。上半身を防護するウエスタン風のジャケットで長袖で腰までの丈だがやはり重みは無い。更に言うと、糸の厚みが一番あるからか常時回復促進の付与までされていた。
「あっ、ガレムさんのジャケットに付与がされています。傷を負っても徐々に回復させる回復促進が付いているみたいですね。って、付与魔法付いちゃったの?」
沙更としてもそこは予想外だったらしい。鎧に回復効果が付いているなんてなれば、その鎧の金額は跳ね上がる。怪我を治す手助けをするなんて代物は、まさに教会が追い求めそうな代物だからだ。
「はあ!?付与魔法付きで、効果が回復促進ってどれだけ跳ね上がってんだ?これはよ!」
「まさかとは思ったけど、ガレムのジャケットに糸をふんだんに使ったからだよね。これ」
「まさか付与魔法まで付いてるとはなあ。全く凄い品だよ、これは」
「はあ、セーナちゃんったらまたとんでもない物を作ってくれちゃって、どうするのよこれ!!」
四人とも付与付きと聞いて、驚きの表情を浮かべるしかなかった。
第44話 地上に向けて8
イメージが固まった沙更は、パウエルにコートを。ガレムにジャケットという風に分けることにした。魔力を糸に変換してからの糸巻きを作っていくのだが、その速度がヘレナの神官服の時よりもかなり高速になっていたのは慣れてきたからだろう。
それを見たミリアとヘレナが呆れた表情を浮かべる。
「セーナちゃんの糸巻きを製造する速度がまた上がってる」
「あの糸、売ったらいくらになるか考えるだけで恐ろしいわ。多分、他の人間に扱える代物じゃ無いのは分かっているけれど、もし扱えるのなら途轍もない高値が付きそうで」
出来る事が多すぎる沙更は、本当にその技能が分かった瞬間に商人か、貴族か、王族に狙われてしかるべきだったのだ。時間が止まった無限の倉庫は、商人たちの垂涎の的であったし、凄腕の治癒士でもあるから貴族や王族に狙われるのは確定事項と言って良かった。
「俺としては、むしろ同業の方が怖い気がする」
「あー、それは俺も思った。武器を失って、全滅とか良く聞く話だしな。それに、治癒魔法が一番まずいだろ。ばれたらまじめに勧誘しゃれにならないぜ?」
実際、冒険者に治癒士が同行していることは滅多に無い。後衛として、優秀と言いがたいのもあるけれど治癒魔法自体が多少の怪我を治せる位のものでしかないからだ。
だが、沙更の治癒魔法は重傷を負ったパウエルやヘレナ、ガレムですらあっさり癒やせる程の腕前だ。その時点で争奪戦になるのは目に見えている。更に言えば、虚空庫がばれた場合もっと大変なことになるのも言うまでも無いことであった。そんな事が出来る幼女に、魔の手を伸ばそうとする輩は山ほど出てくるのは想像に難くなかった。完全に金のなる木なのであるから。
そんな物騒な話を四人がしているとはつゆ知らず、沙更はパウエルのコートから作り始めていた。鎧の代わりになる上着をイメージして作っていく。
魔力の糸から作り上げるコートは、騎士でもうらやむ程の出來映えとなって30分後に出来上がった。出来上がったのは特殊なフロックコートで、やはり重みが無い。そして、鎧に比べれば可動部が多いように沙更がイメージしたため剣を振るうにも邪魔にならないそんな代物だった。丈は、膝までいかないくらいの大きめで言うまでも無く魔法にも耐性を持っていて、ミリアの幻影の衣やヘレナの神官服よりも糸の厚みが多い為、魔力自体もかなり強力に内包されていた。
そんな出來映えになったフロックコートをパウエルに渡す。
「パウエルさん、これどうぞ。今までの鎧よりも動きやすいのを頭に入れて作りました」
沙更から受け取ったパウエルは早速着てみることにする。着てみると重みが無いのとある程度風を通すらしい。普通ならあり得ないのだが、魔力の糸だけにそのくらいは可能と言うことのようだ。
「流石に重みが無いと言われたけれど、ここまで感じないと違和感があるな。それに鎧を着ている感じでも無いし、動きやすい」
パウエルにそう言われて、沙更としてはほっとする。どうしても、鎧では重みがある為動きを阻害しやすい。それを考慮に入れて作ったフロックコートだっただけに、内心無事に出来て良かったと思っていたのだった。
そうなってくるとガレムがパウエルを羨ましそうに見るのは当然の話だった。
「リーダー、その服良さそうだ。かなりの防御力もあって、動きやすくて魔法に耐性があるって思うけど凄いよな」
「それに関しては同感。本当に、セーナちゃんって凄すぎだよね」
「魔力で服を作るなんて、発想が出来るあたりが凄いと思うんだが」
「それを出来るだけの魔力操作スキルの高さもね。普通の魔法士にあれを望んじゃいけないわ、出来るわけがないもの」
四人してそう言いつつ、沙更に賛辞を送る。それを聞きつつも、ガレムのためのジャケットを作る。
なんだかんだで、一番地が厚めにイメージしていたのもあり腰までのジャケットながら、パウエルに渡したフロックコートよりも糸の厚みがある作りになってしまった。
沙更が不慣れと言うこととどうせなら地が厚い方が良いと思ったのを魔力の方で感じ取ったからだ。それでなくても沙更の魔力は沙更が思ったことに反応する。
本来ならば、魔力自体を操ると言うのはなかなかに骨が折れるのだが、そんなことお構いなしで魔力操作が出来てしまう為の弊害と言うべきだろうか?
フロックコートを作った経験があるからか、今度は15分ほどでガレムのジャケットが出来上がる。上半身を防護するウエスタン風のジャケットで長袖で腰までの丈だがやはり重みは無い。更に言うと、糸の厚みが一番あるからか常時回復促進の付与までされていた。
「あっ、ガレムさんのジャケットに付与がされています。傷を負っても徐々に回復させる回復促進が付いているみたいですね。って、付与魔法付いちゃったの?」
沙更としてもそこは予想外だったらしい。鎧に回復効果が付いているなんてなれば、その鎧の金額は跳ね上がる。怪我を治す手助けをするなんて代物は、まさに教会が追い求めそうな代物だからだ。
「はあ!?付与魔法付きで、効果が回復促進ってどれだけ跳ね上がってんだ?これはよ!」
「まさかとは思ったけど、ガレムのジャケットに糸をふんだんに使ったからだよね。これ」
「まさか付与魔法まで付いてるとはなあ。全く凄い品だよ、これは」
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四人とも付与付きと聞いて、驚きの表情を浮かべるしかなかった。
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