月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
73 / 365
古代遺跡の出来事

第67話 セーナの家にて

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第66話 セーナの家にて

眠る沙更に、魂を修復しているセーナが頭を下げた。

(沙更お姉さん、セーナのお母さんとお父さんを天へとかえしてくれてありがとう。村のみんなを救ってくれてありがとう。お礼しかいえないけれど、本当にうれしいの)

(セーナちゃん、みんな天に帰してあげたけどこれで良かった?でもね、ミリアお姉さんが教えてくれたよ。もしかしたら村の人、生きているかもって)

(えっ、それ本当!?)

沙更の言葉に、沙更にさらに近づくセーナ。その表情を見ていれば、生き残った人を助けてあげて欲しいと願っているのは言うまでもなく理解できた。

自分の魔力が引き寄せてしまった惨劇に、救える人が居るのなら救ってあげて欲しいとそう願う。五歳と言えど、起こしてしまったことを考えれば呪われたとしてもおかしくはない。

が、自身が呪われたとしても救って欲しいと願うことに、沙更は応えてあげたいと思う。

この子が背負う呪われた運命に、沙更が介入したことでセーナは邪神の生け贄から脱したのだから。本来の筋書きならば、あの時点で邪神がセーナに降りてこの世を破壊したのだろうと思う。

月女神としては拒否するかも知れないが、月女神の眷属があれだけの魔力を得れば神にたどり着く可能性は否定できない。

だが、先祖のエーベルが沙更の魂を呼び寄せて、介入したことにより邪神復活は阻止された。だが、今度は人の興味を誘ってしまう結果となってしまった。

もし神が居るのならば、多分嘲笑っているだろう。愚かな人間ども、我が筋書きをそう簡単に覆せると思うなと。だが、この世界に神は居ない。なりかけならたくさん居るみたいだけれども。

沙更として、ひ弱な魂だがセーナの味方で居ることをこの瞬間決めた。手助けはすると決めてはいたが、完全に味方になると決めたのだ。

そして、沙更と同じ気持ちになっているのがミリアだ。

(あたしがセーナちゃんに出会ったのは、この子を助けるためなんだと感じた。だから、これからも一緒に行こうと思う。リーダーやヘレナと別れたとしても、あたしはセーナちゃんと一緒に居たいから)

セーナが持つ荷物の重さを感じているからこそ、味方で居ようと決めたようだ。白の直刀がミリアを認めたのも、セーナのことを気にかけてくれるからかもしれない。

ミリアの膝でセーナが眠ってから一時間後、疲れが取れたからなのかセーナが起き上がった。精神的にも落ち着いたのと、使った魔力がもう回復したからだった。

「ごめんなさい、ミリアお姉さん。膝を貸して貰ってたなんて」

「あたしの膝で喜んでくれるならいつでもどうぞ。セーナちゃん、お疲れ様だったね。ゆっくり休めた?」

「はい、ミリアお姉さんにガレムさんとパウエルさんとヘレナさんが手伝ってくれたから。本当にありがとうございました」

セーナの言葉に、ミリアは何も言わずに頭をなでる。大丈夫、その気持ちは伝わっているよとばかりに優しく指を動かす。その思いはセーナに届いて、嬉しそうな表情を浮かべる。数分間、セーナの頭をなでるとセーナもそれに甘えるように抱きつく。ミリアはそれを拒まずに、したいようにさせてあげる。本当の姉妹のように。

それを見たガレムとパウエルとヘレナは、苦笑を浮かべていた。

「やっぱ、ミリアはセーナちゃんを気に入ってるのがよく分かるぜ」

「本当に、ミリアはセーナちゃんが好きなんだな。セーナちゃんもミリアのことを気に入ってるみたいだ」

「ミリアのセーナちゃんを見る目を見ていると、あれだけ膨大な魔力を持っている子なんて言う意識は無いと思うわ。特別な子って思ってない。だからこそ、セーナちゃんもミリアに素直に甘えられるんだと思うの」

そういう風に話をしていると流石に時間が経っていて、夕暮れ時になっていた。あれだけの重労働をしたのだから、良い休憩時間だったのだ。が、この村から出発するのは無理になってしまっていたのだ。

流石に、この状態で野営は選択肢には入らない。セーナは四人に、ここで泊まることを勧める。セーナの家だけは、まだ回収する荷物があることで、ホワイトフレイムで焼かずに残っていたからだ。

「ミリアお姉さん、ガレムさん、パウエルさんとヘレナさん。良ければ、私の家に泊まっていきませんか?他の家は、ホワイトフレイムで焼いてしまいましたが、うちは残ってますから」

「えっと、セーナちゃんはいいの?お邪魔じゃない?」

「変に遠慮しないでも大丈夫です。むしろ、保存食ばかりじゃ栄養が偏ります。少しなら野菜も出せますから、出来れば食べていってくれると嬉しいです」

 セーナがそこまで言うのならとミリアは頷く。ガレムとパウエルとヘレナも地面で寝るよりはと二つ返事を返した。冒険者にとって、なかなか野宿以外の選択肢があることはなかなか無い。休める時に休んでおくのが基本となっていた。

セーナの家に、ミリアとガレムとパウエルとヘレナの四人を呼びこむ。

「ミリアお姉さんたち、今日はこちらへどうぞ」

「セーナちゃん、お邪魔するね。でも、良かったの?」

「ミリアお姉さん、一人でここに寝たら確実に泣いてしまいます。もう、これ以上泣けるかってほど泣きましたけど、それでも一人だったらまた泣いてしまいそうで」

セーナの言葉に、ミリアはここに着いてから頑張りながらも泣き続ける姿を見たからそれに口を挟むことはしない。だけど、セーナの頭をぽんぽんと優しくなでる。気持ちは分かっているよと言わんがばかりに。

パウエルもヘレナもガレムも、セーナが泣いて村人を弔っていたのを知っているから何も言わない。が、寂しいのは言うまでもなく理解できた。だからこそ、何も言わないのだが。

「ごめんなさい、今の状態で一人で寂しく寝られないのです。出来れば、甘えさせてください」

「セーナちゃんが頑張ってきたの分かっているから、本当なら泣いたって良いんだけどね。押しつぶされそうって言うのなら、あたしが一緒に寝てあげる。その前に、晩ご飯だね」

ミリアの言葉に、セーナは頷く。昼とは違い、簡易型でもかまどがあるのはかなり違った。セーナの家に残っていた野菜でも、傷んでいない物を水で洗って、塩を入れて茹でていく。さらに、ミリアたちに干し肉を分けて貰ってそれも投入。

野菜と干し肉を煮込んでいる間、麦をおかゆにするために鍋に水を入れ軽く塩を入れて炊き込む。塩に頼るしかない為、調味料が足りないなと思ってしまう。塩だけでは味の幅が出ないのもそうだが、どうしても淡泊な感じになってしまうのだ。

(塩だけだと味付け的にも辛いかな。醤油とか味噌、なくてもトマトケチャップとかがあればまだ料理の幅が出るんだけど)

沙更の魂的にそう思ってしまうのは無理はない。異世界出身で、あれだけの調味料に囲まれていたのだ。足りないと思ってしまうのは致し方なかった。それだけ、異世界は調味料が豊富だったし、しかも安価だったのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...