月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
76 / 365
古代遺跡の出来事

第69話 辺境を取り巻く環境

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第69話 辺境を取り巻く環境

お父さんの形見とも言える鋼鉄の剣が聖鋼の細身の長剣に切り替わったことで、ミリアたちが驚くが流石に誰も欲しいとは言わなかった。

強いて言うなら、言う権利は無いからと言うのが本音であった。形見を欲しがるのは気持ちを考えないことだと思ったと言うのもある。

父親の形見である聖鋼の細身の長剣は、そのまま沙更が預かることにした。実際、古代魔法士としての知識や技術は持ち合わせるものの扱いは全然知らなかったからだ。

「やっぱり、セーナちゃんは凄すぎるよ。折れてた剣を素材を跳ね上げて再生しちゃうんだから」

「そうだな、剣が望んだのかも知れねえ。相応しい姿にしてほしいってな」

「ガレムはそう思うのか、俺は逆にセーナちゃんが望んだからだと思ったよ。じゃなければ、俺の剣が魔鉄になるわけがないんだ」

「鉄が魔鉄に、鋼が聖鋼になるなんて普通ならあり得ないことですわ。いかに魔力が多くても修復魔法は修復するだけ。それが、素材の質が上がっているあたりがセーナちゃんの魔法の凄さなのかもしれない」

推測が推測を呼ぶが、沙更はセーナの両親がセーナに残した物だろうと推測していた。形見として、使って貰いたかったのかも知れない。

どちらにしろ、包丁も剣も持って行く。しばらくしたら、剣も覚えた方が良いのかも知れないと思う。今すぐにと行かないのは、今はやることがまだ残っているからだ。

「そう言えば、セーナちゃんはこの開拓村があるあたりの事情って知らないよね?」

「はい、そう言えば教えて貰ってません。小さい子だから伝えてなかったんだろうと思います」

「なら、あたしが話してあげる」

ミリアはそう言うと、このあたりの事情を話してくれた。

セーナの開拓村は、実はこの国の最辺境に位置する。ここから先は未踏の地であり、古代には魔法文明があったが魔王によって滅ぼされたこととその際に土地に呪いがかけられたと言われ、忌避されてきた。

セーナたちが所属する国の名前はシルバール王国と言い、この世界にある中でも一、二を争うほど古い歴史を持つ国だ。無論、長い統治で大分内部が腐敗しているのが否めないところではあったが。

シルバール王国がこの世界での北の果てであり、セーナの開拓村はその中でも一番西に位置する。そして、シルバール王国は島国だった。

島の西側は、古代魔法文明と魔王の激戦区だったことから未だにその土地に呪いがかかっていると言われているのだそうだ。

で、この辺境の地を治めている辺境伯は、実際かなりの重要ポストなのだが、現在の領主はあまりにも使えない人のようで、先代が有能な人だったこともあり、無能と揶揄されているそうだ。

実際、開拓村が一つ壊滅したにも関わらず、兵士一人すら見ていない。邪教の集団が暗躍していたとはいえ、あまりの体たらくとも言える。情報自体が遅いというのもあるのかもしれないが。

確かに、開拓村だけに危険はつきまとう物ではある。が、兵士一人すら出していないあたりで開拓に行っている人間をなんとも思っていないことが明白だった。

セーナはその話を聞いて、呆れた表情を浮かべざるを得ない。沙更の感覚から言えば、領主失格と言うしかなかったからだ。異世界ならばリコールか革命か、どちらにしろ、ひっくり返す人間が現れてしかるべき状態だと思われた。

だが、貴族であり辺境伯というのはかなりの力を持つ為、下手な力ではひっくり返すことすら出来ない。その分、かなりの責任を負わなければならないのだが、それを果たしているかすら疑問だった。

「おかしいとは思ったんですよね。あれだけの武装集団を野放しって時点で」

セーナはヘレナとミリアから聞いた話を理解して、まとめたところでため息をついた。せめて、領主の兵士たちが居たらここまでのことにはならなかったのでは無いかと思ったからだ。

セーナの思考に気づいたのか、ミリアが首を振る。

「セーナちゃん、悲しいけどそうはならないと思う。今の領主の兵士たちってあたしたちより弱いんだよ。だから、厳しいかなと思うんだ。それに相手が邪教の集団でしょう?裏で暗躍や、領主に賄賂を送っておいて無罪になったとかの話すらあるの」

「ウェストエンドの兵士だろ?ちょっと訓練受けただけのど素人だぜ?あんなんで、戦えるのかって思うくらいだ」

「冒険者よりも兵士が弱いのは、ほとんどの領地で事実なので、セーナちゃんが思う自体にはならなかったと思うわ。しかも邪教の集団じゃ熟練冒険者でも苦戦するわね」

「確かに、俺たちはCクラス成り立てって前に言ったけどここの兵士たちって良くてDクラスが精々だ。少なくても、俺と相手するならば兵士10人は欲しいってところか。そんな兵士じゃ邪教の集団相手では刃が立たない。」

「兵士の人ってそんなに弱いんですか?対魔物で、鍛えてそうなイメージがあったんですけど」

セーナは、ミリアたちの言葉に苦笑を浮かべつつも疑問を口にする。

確かに、この世界は魔物などの脅威が目立つ。それだけに鍛えないとなることが出来ないのではと思ったのだが、案外そうでも無いらしい。

「この辺境領の兵士は剣が扱えて、兵士として一年の訓練を積んでいたら誰でもなれる。だから、兵士自体はそんなに強くない。そこから騎士に上がるとなると大変らしいけどね。騎士ならば、俺と同等かそれ以上って人もいなくはない。けれど、騎士は数が少ない上に切り札的存在だからあまり出てこないのさ」

「なんか、それって開拓村あたりじゃ助けてやれないぞって言っているのと同義な気がします。最初から見捨てられてると言うのもなんだか困りものですね」

その事実に困った顔をするしか無いセーナではあったが、領主がそんなだからこんな風になったのはなんとなく納得が出来た。理不尽だとも思うが、今更失われた命は帰ってこないので、それ以上は言わない。

セーナが居た開拓村は、最果てであるが領都までの道はそれなりに整備されている。それ故、行き来はそこまで辛くは無い。問題があるとすれば、距離がかなり離れていること。徒歩で十日はかかるし、馬を使ったとしても二日以上はかかる。

なので、領都から来る領主の兵士たちもセーナたちを捕捉することは困難だった。大体、入れ違いになる上にここ周辺の開拓村での領主の評判はあまりよろしくないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

私が目覚めたのは断罪劇の真っ最中でした

アーエル
ファンタジー
「今北産業、説明ぷりーず」 「「「…………は?」」」 「今北産業、状況説明ぷりーず」 だれか説明してくださいな ☆他社でも公開しています

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...