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古代遺跡の出来事
第70話 開拓村とのお別れ
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月の魔女とよばれるまで
第70話 開拓村とのお別れ
包丁が使えるようになったことで、包丁の件は終わった。そのおかげで、この村でやることもすべて終わったことになる。セーナがここから出るのに心残りが何一つ無い状態になったことを意味していた。
明日になれば、近隣の村の面々が来ないとも限らない。そのこともあり、早めに出発することにした。その前に、セーナの両親が残した品と食べられる麦や野菜、そしてセーナ自身の品を虚空庫に収めていった。
セーナは、ミリアたちの寝床を用意すると自分も用意した寝床の一つに入り込む。入り込んだ先は言うまでもなくミリアのところだった。
「ミリアお姉さん、一緒に寝させて貰っても良いですか?」
「セーナちゃんがあたしで良いならどうぞ。って、あたしもセーナちゃんが来ると思ってたんだけどね。だって、ひとりぼっちなのは寂しいでしょ?だから、あたしで良ければ暖めてあげる」
「もう、ミリアお姉さん。あたしで良ければじゃないです。ミリアお姉さんだから、私が素直に甘えられるんです。凄く助かってるんですから」
「ごめんね、試すようなことを言って。実はあたしも嬉しいの。こんな妹が居たら楽しいだろうなあって思ってたら、理想像にぴったりはまるセーナちゃんに出会って、こうやって仲良くなれて、嬉しくないわけじゃない」
ミリアとしてもセーナを気に入っていると言うか、既に家族として認定していた。セーナもミリアのことを頼りになる姉だと認識してるし、互いに良い相棒だと思っていた。
出会ってまだ一日も経たないのに、邪神の眷属の時のあの連携はまずもって無理だと言うしかない。本当に、数時間前に知り合ったとは思えないほどの息の合った連携に、カバーリングだったのだから。
「ミリアお姉さん、私はいろいろと迷惑をかけると思います。それでも、一緒に居てくれると嬉しいです」
「大丈夫、それを鑑みてもあたしはセーナちゃんを助けるよ。エーベルさんにも託されたのは、それだけの実力を持つ可能性があるって認められたからだと思うんだ。それに、白の直刀にかけてあたしはセーナちゃんを守るって決めているからね」
静かに、二人ともそう言うと双方ともに手を握る。決意の表れというか、その気持ちを再確認しただけとも言う。
「ふう、セーナちゃん疲れたね。一緒にお休み」
「はい、ミリアお姉さん。お疲れ様でした、明日もよろしくお願いします」
二人がそう言うと同時に手を握ったまま、眠りにつく。
ホワイトフレイムによって浄化されたことで、村に付けられていた月女神の眷属の呪いは解除されていた。ホワイトフレイムで浄化していなければ、ここで呪いが発動して五人とも息絶えていただろう。その二重トラップですら、セーナの弔いたいと言う気持ちが打ち破ったのだ。
両親を大切に思う気持ちが、月女神の眷属の呪いに打ち勝ったと言うしかない。純粋故に、読めそうなものだが月女神の眷属としてはそこまで読み切れなかったようだ。
(我の罠を両親への弔いという形で打破するとはな。ますます面白い小娘よ。貴様がどこまで行くか、高みの見物と決めさせて貰う。だが、小娘。貴様は、我が贄なのだ。それは絶対に揺るがぬ)
別次元から村の様子を確認しつつ、邪神の眷属はディバインブレードの傷を癒やしていた。流石に空間を遮蔽して防御したものの、流石に神の刃はそれすら貫いて浄化の力を解放していた。その光に焼かれた傷は並大抵のものではなく、高位の魔族ですら一発で即死するほどの威力を誇っていた。
その破壊力の前に、月女神の眷属といえど大怪我を負う羽目になったのだ。沙更とセーナの二人の魂が集めた魔力が呼び出した光は、人間を超えた力を発揮していた。それを甘く見たために、大火傷を負ったわけだが。
月女神の眷属としては、あれだけの魔力を集めることが出来れば己の格を更にあげることが出来ると踏んでいた。それ故に、沙更とセーナの魂を欲することになる。
ミリアと一緒に寝て、起きると既に日が昇る時間になっていた。開拓村の朝は実際早い。
家畜の世話や薪を取りに行くなどやることが山ほどある。が、壊滅したことでそれらのことを行う必要性も無くなっていた。それでも、セーナは寝ている三人のために、軽い朝食を作り始める。
麦粥に、野菜の塩茹で、塩スープ。やはり、塩以外の調味料が欲しいラインナップである。強いて言うと、野菜の種類も足りない感じではあった。
(開拓村の近くで取れる野菜は、土地に力がないからあまり良い野菜じゃない。その辺は他の開拓村でも一緒。土地に力が無いのは、やはり土地がやせているからなのかな?)
前世の記憶がある故に、土地に力が無いことをなんとなく察する。だが、それを改善するにも今の沙更では一朝一夕に出来る話ではなかった。そもそも、肥料という概念がこの世界にはない気がしたからだ。
開拓村付近は樹木も針葉樹が大半であり、葉が落ちることもあまりない。土地に栄養が回る状態ではないように見えた。かと言って、沙更がここに残るというのは愚策だけに、今はどうしようも無いと思うほか無かった。
食事の支度を終えるとミリアたちが起きてくる。セーナは、起きてきた四人に白湯が入った木のコップを渡す。
「おはようございます、ミリアお姉さん、パウエルさん、ガレムさん、ヘレナさん。食べる前に、軽く白湯を飲んでくださいね。もう、食事の支度は終わっていますから食べられますよ」
「おはようセーナちゃん。ごめんね、食事の支度までして貰って。昨日寝床を貸してくれてありがとう。野宿するつもりだったからぐっすり眠れて助かったよ」
「地べたに寝るより全然暖かかったぜ。風もこないし、おかげでゆっくり休めた」
「本当に野宿するつもりだったから、わらの布団でも全然ありがたかったよ。寒さを防ぐことが出来るだけでも、全然違うからね」
「温かいご飯に、温かい寝床にありつけるだけでも贅沢と言う物です。ですが、セーナちゃんの好意は本当にありがたいと思っていますわ」
「そう言ってくれてありがとうございます。少しお節介かなとは思ったのですけど、そう思ってくれて良かった」
セーナは三人の言葉にほっとするとミリアが頭をなで始め、ヘレナがセーナを抱きしめる。パウエルは苦笑を浮かべつつも、セーナの手を握って感謝を伝える。ガレムも照れた表情を浮かべつつも三人の後に頭をガシガシと撫でていた。
すでに、沙更は開拓村から旅立つ支度を終えていた。部屋に残っていた衣服を回収しておいて、身につけていた。
流石に、エーテルドレスでは目立ちすぎるからだ。あれだけの生地のドレスは他には多分無いだろう。それに、白銀の髪の色は目立ちすぎることこの上ない。なので、そっちも魔法で偽装することにしたのだった。
「あの姿のままだったら目立ちすぎてしまうから、普通の村娘に偽装しておきますね」
「確かにあのドレスは生地が良すぎるから、下手な勘ぐりを入れられかねない」
「あのドレスは、セーナちゃんの魔力で作った奴だろう?一点物だしな」
「と言っても、わたくしの神官服もリーダーのコートもガレムのジャケットもミリアの幻影の衣も同じ生地でしょう?確かに、あのドレスは目を引きつけるのは分かるけれど」
「セーナちゃんが決めたことならそれで良いと思う。確かに目立ちすぎるのはあたしたちもちょっと遠慮したいしね」
四人ともセーナの行動に異議を唱えることはしない。なにもしないままのセーナはまさに美幼女と言うしかないからだ。おかげで悪目立ちどころの話じゃない話になりかねない。それ故、普通の村娘に偽装すること自体に意見を挟むなんてことはなかったのだ。
村から出る前に、生まれ育った家もこの地に返すことにした。セーナが小さくホワイトフレイムを唱え、家を焼いたところで出発することになった。
「セーナちゃん、生家を焼いちゃって良かったの?」
「はい、もう戻ってこられないと思うのです。それに、ただ朽ちるだけの家だったら大地に還してあげた方が良いし、下手に悪人に使われるのも癪ですから」
「それだけの覚悟ってことか、本当にセーナちゃんには驚かされてばかりだな」
パウエルは、セーナの言葉にここを大事にしている気持ちを感じていた。大切だけど、出て行かなければならなくなってしまったから、思い出もなにもかも置いて旅に出るのだと。
そんな覚悟を持って旅立つ旅人など、知っている中では居なかった。だから、セーナの覚悟が目立って見えたのだ。
既に必要な物は、空間魔法の虚空庫にしまってある。虚空庫では、時間の経過が無いため経年劣化は起きない。生ものだろうが何だろうが入れることが可能で、唯一の制限は人間を入れられないところだった。
空間魔法や時魔法は既に伝承の彼方の魔法だけに、扱えるセーナが飛び抜けているのは言うまでもなかったのだ。
第70話 開拓村とのお別れ
包丁が使えるようになったことで、包丁の件は終わった。そのおかげで、この村でやることもすべて終わったことになる。セーナがここから出るのに心残りが何一つ無い状態になったことを意味していた。
明日になれば、近隣の村の面々が来ないとも限らない。そのこともあり、早めに出発することにした。その前に、セーナの両親が残した品と食べられる麦や野菜、そしてセーナ自身の品を虚空庫に収めていった。
セーナは、ミリアたちの寝床を用意すると自分も用意した寝床の一つに入り込む。入り込んだ先は言うまでもなくミリアのところだった。
「ミリアお姉さん、一緒に寝させて貰っても良いですか?」
「セーナちゃんがあたしで良いならどうぞ。って、あたしもセーナちゃんが来ると思ってたんだけどね。だって、ひとりぼっちなのは寂しいでしょ?だから、あたしで良ければ暖めてあげる」
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ミリアとしてもセーナを気に入っていると言うか、既に家族として認定していた。セーナもミリアのことを頼りになる姉だと認識してるし、互いに良い相棒だと思っていた。
出会ってまだ一日も経たないのに、邪神の眷属の時のあの連携はまずもって無理だと言うしかない。本当に、数時間前に知り合ったとは思えないほどの息の合った連携に、カバーリングだったのだから。
「ミリアお姉さん、私はいろいろと迷惑をかけると思います。それでも、一緒に居てくれると嬉しいです」
「大丈夫、それを鑑みてもあたしはセーナちゃんを助けるよ。エーベルさんにも託されたのは、それだけの実力を持つ可能性があるって認められたからだと思うんだ。それに、白の直刀にかけてあたしはセーナちゃんを守るって決めているからね」
静かに、二人ともそう言うと双方ともに手を握る。決意の表れというか、その気持ちを再確認しただけとも言う。
「ふう、セーナちゃん疲れたね。一緒にお休み」
「はい、ミリアお姉さん。お疲れ様でした、明日もよろしくお願いします」
二人がそう言うと同時に手を握ったまま、眠りにつく。
ホワイトフレイムによって浄化されたことで、村に付けられていた月女神の眷属の呪いは解除されていた。ホワイトフレイムで浄化していなければ、ここで呪いが発動して五人とも息絶えていただろう。その二重トラップですら、セーナの弔いたいと言う気持ちが打ち破ったのだ。
両親を大切に思う気持ちが、月女神の眷属の呪いに打ち勝ったと言うしかない。純粋故に、読めそうなものだが月女神の眷属としてはそこまで読み切れなかったようだ。
(我の罠を両親への弔いという形で打破するとはな。ますます面白い小娘よ。貴様がどこまで行くか、高みの見物と決めさせて貰う。だが、小娘。貴様は、我が贄なのだ。それは絶対に揺るがぬ)
別次元から村の様子を確認しつつ、邪神の眷属はディバインブレードの傷を癒やしていた。流石に空間を遮蔽して防御したものの、流石に神の刃はそれすら貫いて浄化の力を解放していた。その光に焼かれた傷は並大抵のものではなく、高位の魔族ですら一発で即死するほどの威力を誇っていた。
その破壊力の前に、月女神の眷属といえど大怪我を負う羽目になったのだ。沙更とセーナの二人の魂が集めた魔力が呼び出した光は、人間を超えた力を発揮していた。それを甘く見たために、大火傷を負ったわけだが。
月女神の眷属としては、あれだけの魔力を集めることが出来れば己の格を更にあげることが出来ると踏んでいた。それ故に、沙更とセーナの魂を欲することになる。
ミリアと一緒に寝て、起きると既に日が昇る時間になっていた。開拓村の朝は実際早い。
家畜の世話や薪を取りに行くなどやることが山ほどある。が、壊滅したことでそれらのことを行う必要性も無くなっていた。それでも、セーナは寝ている三人のために、軽い朝食を作り始める。
麦粥に、野菜の塩茹で、塩スープ。やはり、塩以外の調味料が欲しいラインナップである。強いて言うと、野菜の種類も足りない感じではあった。
(開拓村の近くで取れる野菜は、土地に力がないからあまり良い野菜じゃない。その辺は他の開拓村でも一緒。土地に力が無いのは、やはり土地がやせているからなのかな?)
前世の記憶がある故に、土地に力が無いことをなんとなく察する。だが、それを改善するにも今の沙更では一朝一夕に出来る話ではなかった。そもそも、肥料という概念がこの世界にはない気がしたからだ。
開拓村付近は樹木も針葉樹が大半であり、葉が落ちることもあまりない。土地に栄養が回る状態ではないように見えた。かと言って、沙更がここに残るというのは愚策だけに、今はどうしようも無いと思うほか無かった。
食事の支度を終えるとミリアたちが起きてくる。セーナは、起きてきた四人に白湯が入った木のコップを渡す。
「おはようございます、ミリアお姉さん、パウエルさん、ガレムさん、ヘレナさん。食べる前に、軽く白湯を飲んでくださいね。もう、食事の支度は終わっていますから食べられますよ」
「おはようセーナちゃん。ごめんね、食事の支度までして貰って。昨日寝床を貸してくれてありがとう。野宿するつもりだったからぐっすり眠れて助かったよ」
「地べたに寝るより全然暖かかったぜ。風もこないし、おかげでゆっくり休めた」
「本当に野宿するつもりだったから、わらの布団でも全然ありがたかったよ。寒さを防ぐことが出来るだけでも、全然違うからね」
「温かいご飯に、温かい寝床にありつけるだけでも贅沢と言う物です。ですが、セーナちゃんの好意は本当にありがたいと思っていますわ」
「そう言ってくれてありがとうございます。少しお節介かなとは思ったのですけど、そう思ってくれて良かった」
セーナは三人の言葉にほっとするとミリアが頭をなで始め、ヘレナがセーナを抱きしめる。パウエルは苦笑を浮かべつつも、セーナの手を握って感謝を伝える。ガレムも照れた表情を浮かべつつも三人の後に頭をガシガシと撫でていた。
すでに、沙更は開拓村から旅立つ支度を終えていた。部屋に残っていた衣服を回収しておいて、身につけていた。
流石に、エーテルドレスでは目立ちすぎるからだ。あれだけの生地のドレスは他には多分無いだろう。それに、白銀の髪の色は目立ちすぎることこの上ない。なので、そっちも魔法で偽装することにしたのだった。
「あの姿のままだったら目立ちすぎてしまうから、普通の村娘に偽装しておきますね」
「確かにあのドレスは生地が良すぎるから、下手な勘ぐりを入れられかねない」
「あのドレスは、セーナちゃんの魔力で作った奴だろう?一点物だしな」
「と言っても、わたくしの神官服もリーダーのコートもガレムのジャケットもミリアの幻影の衣も同じ生地でしょう?確かに、あのドレスは目を引きつけるのは分かるけれど」
「セーナちゃんが決めたことならそれで良いと思う。確かに目立ちすぎるのはあたしたちもちょっと遠慮したいしね」
四人ともセーナの行動に異議を唱えることはしない。なにもしないままのセーナはまさに美幼女と言うしかないからだ。おかげで悪目立ちどころの話じゃない話になりかねない。それ故、普通の村娘に偽装すること自体に意見を挟むなんてことはなかったのだ。
村から出る前に、生まれ育った家もこの地に返すことにした。セーナが小さくホワイトフレイムを唱え、家を焼いたところで出発することになった。
「セーナちゃん、生家を焼いちゃって良かったの?」
「はい、もう戻ってこられないと思うのです。それに、ただ朽ちるだけの家だったら大地に還してあげた方が良いし、下手に悪人に使われるのも癪ですから」
「それだけの覚悟ってことか、本当にセーナちゃんには驚かされてばかりだな」
パウエルは、セーナの言葉にここを大事にしている気持ちを感じていた。大切だけど、出て行かなければならなくなってしまったから、思い出もなにもかも置いて旅に出るのだと。
そんな覚悟を持って旅立つ旅人など、知っている中では居なかった。だから、セーナの覚悟が目立って見えたのだ。
既に必要な物は、空間魔法の虚空庫にしまってある。虚空庫では、時間の経過が無いため経年劣化は起きない。生ものだろうが何だろうが入れることが可能で、唯一の制限は人間を入れられないところだった。
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