月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第82話 ゴブリンとの遭遇2

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月の魔女とよばれるまで

第82話 ゴブリンとの遭遇2

数が少なければ、ゴブリンごときCランク冒険者パーティーの荒野の狼に掛かれば余裕で殲滅できる。が、数が50を越えてくると結構怪しくなってくる。しかも、今回は数が200だ。

確実に、ホブゴブリンどころかゴブリンジェネラルあたりが闊歩していておかしくない。下手をすればゴブリンロードが居るラインだった。もし成長してゴブリンキングにでもなろうものなら、Cランク冒険者では手出しが出来ない。

が、今回パウエル達にとって沙更の存在はかなり大きい。遠距離魔法を扱えて、付与も強化魔法をも扱える魔法士はほぼいないのだ。それ故に、一人で何役もこなせる魔法士の存在は切り札とも言えた。

しかも、まだゴブリンたちはパウエルたちに気付いていない。気配察知極に、沙更の探知魔法でゴブリンの居場所は既に網羅されていたからだ。

「本当にこういう時のセーナちゃんだよね。大規模戦で、魔法士がいるかいないかなんて相当大きいんだから」

「私はそこまで凄くは無いと思いますが…」

ミリアの言葉に、困ったように話す沙更だがそれに口を挟んだのがパウエルだった。

「セーナちゃんは、下手な魔法士を遙かに超えてる。自信を持てとは言わないが、どれだけ桁外れなのか分かって貰った方が良いとは思っているよ。いろいろと手助けして貰って、こういうのはフェアでは無いと思っているが、あえてそう言わせて欲しい」

「セーナちゃんがいなきゃ、俺らとっくに死んでるしな。助ける能力もあるんだし、そこまで気にするもんでもねえよ」

「むしろ、セーナちゃんを基準にされちゃうと他の魔法士達の肩身が狭いわね。少なくても、わたくしも神官だけれど治癒士としてならセーナちゃんの方が遙かに上よ。そこは認めているわ」

ガレムにもヘレナにもそう言われ、ますます困った顔をしてしまった沙更だが、それでも決めたことは口にした。

「ごめんなさい、みなさんを困らせるつもりは無かったのです。でも、後方からの援護だけで大丈夫ですか?強化魔法もマイティアップにウィンドウォークだけじゃ厳しいと思ったら言ってください」

「マイティアップに速度補正のウィンドウォークを使ってもらえていれば、あたしは十分だよ」

「ゴブリンジェネラルまでは、その二つがあれば安心して戦える。それ以上が出たらその時にだろう」

「リーダーの剣の腕なら、ゴブリンジェネラルと一騎打ちしても大丈夫。それ以上になったらセーナちゃんの援護が必要になると思うわ」

四人の言葉に、沙更は頷く。

ゴブリンは進化すれば進化するほど強くなる。亜人の中でも進化で強くなりやすい種族であり、ゴブリンキングともなれば一国を相手取れるとまで言われている。それほど危険度が高いモンスターなのだ。

最初の一匹を視界に収める前に、沙更は全員にマイティアップを唱えて一気に戦力を増強しておく。それだけでも、Cランクのパウエルたちが一ランク上の冒険者たちに肩を並べられるほどの能力に跳ね上がった。

万全の状態で、ゴブリンたちとの戦端を切れるのは行幸と言うしか無かった。
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