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第88話 ゴブリンとの遭遇8
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月の魔女とよばれるまで
第88話 ゴブリンとの遭遇8
ゴブリンロードの一撃に、対応したのは沙更だった。スターサファイアのロッドに流した膨大な魔力は、聖鋼のハルバードの一撃を抑えきる。魔法士とは思えない身のこなしとその力に四人と対峙するゴブリンロードを驚愕させた。
が、そもそも沙更の中に眠る神の器が目覚めている上に、半分神に足を突っ込んでいることから身体能力が高いのは、ある意味当然の話であった。
それに、パウエルの一騎打ちが終わったところでのゴブリンロードの動きにミリアもガレムも対応できなかった。唯一、後ろで見ていた沙更だからこそ動けたとも言える。
マイティアップが掛かった沙更は、ゴブリンロードが振るうハルバードの一振りにしっかり対応してみせる。ロッド自体もそれなりに長いが、ハルバードはそれ以上に長い。
Bランクモンスターが聖鋼のハルバードを使う時点でAランクモンスターと同等と見て良かった。が、その動きに付いていける沙更も同レベルはあると思って良い。
鋭く突きだしたハルバードをスターサファイアのロッドで打って、突く面をずらすと言う高等技まで使っていた。だが、これも沙更自身この場になって使おうと思って使い始めた物だと言うから笑えない。
防戦を徹底しているせいか、沙更自身は余り動いては居ない。むしろ、ゴブリンロードが攻めを急ぐ感じになっていた。たかが魔法士の子供に、攻撃を全てそらされているのが気にくわないのだ。だが、そのことは、戦いにおいて冷静さを欠いていると言う弱点になる。そういう点、沙更はヘレナを守る盾になることを決めていた。それだからこその不動だったのだ。
ゴブリンロードの攻めが苛烈になっていく。突きに払い、上からの叩き切りなども駆使するがそれにも沙更は対応していく。突きならば打点をずらし、払いならば一歩後ろに下がり、振り下ろしならば前に出てその間合いから外れる。完全に見切っているからこその対応であり、武器の利点と欠点を知っていなければ出来ない動きでもあった。
長柄物は相手から離れたところからでも攻撃できるが、攻撃できる範囲はそれほど広いわけでは無い。突くなら一直線、払いならば柄の長さの角度180度叩けるかどうか、振り下ろすのならどうしても刃がある面を外されてしまえばそこまでの打撃を与えることは出来ない。
沙更が守りに入っている間に、パウエルがヘレナを邪魔にならないように側につれていく。
「セーナちゃんの動きが凄いな。あの鋭い一撃ですら打点を変えているし、相手の攻撃に完全に対応しきっている」
「いきなりのことだったから、身体が固まってしまったわ。セーナちゃんにまた助けて貰ってしまった。恩が積もり積もるわね」
ヘレナとして、申し訳なさがあふれてくる。あのままだったら倒れていたのは自分であった。そこを沙更が助けてくれたのだからそう思うのも無理は無かった。
防御に専念している沙更に、ゴブリンロードはその防御を抜くことが出来ない。その苛立ちで、攻めが雑になってきて体勢を崩したその隙を付いたのがミリアだった。
沙更に気を取られている間に、ゴブリンロードを白の直刀の間合いに収めていて、放つは鞘走りからの一閃。ハルバードをもつ腕を肘から下を切り飛ばし、さらに返す刀で胴体と首を切り飛ばした。
マイティアップで速度が速くなっているとは言え、その速度は人間が捉えることが出来ないほどの速度で繰り出されている。そのことは、ミリアが白の直刀に慣れたと言う事と今の身体能力を完全に使えると言う証であった。
実際、今のミリアの動きは速度だけならAクラス冒険者を越えていたのだから。
第88話 ゴブリンとの遭遇8
ゴブリンロードの一撃に、対応したのは沙更だった。スターサファイアのロッドに流した膨大な魔力は、聖鋼のハルバードの一撃を抑えきる。魔法士とは思えない身のこなしとその力に四人と対峙するゴブリンロードを驚愕させた。
が、そもそも沙更の中に眠る神の器が目覚めている上に、半分神に足を突っ込んでいることから身体能力が高いのは、ある意味当然の話であった。
それに、パウエルの一騎打ちが終わったところでのゴブリンロードの動きにミリアもガレムも対応できなかった。唯一、後ろで見ていた沙更だからこそ動けたとも言える。
マイティアップが掛かった沙更は、ゴブリンロードが振るうハルバードの一振りにしっかり対応してみせる。ロッド自体もそれなりに長いが、ハルバードはそれ以上に長い。
Bランクモンスターが聖鋼のハルバードを使う時点でAランクモンスターと同等と見て良かった。が、その動きに付いていける沙更も同レベルはあると思って良い。
鋭く突きだしたハルバードをスターサファイアのロッドで打って、突く面をずらすと言う高等技まで使っていた。だが、これも沙更自身この場になって使おうと思って使い始めた物だと言うから笑えない。
防戦を徹底しているせいか、沙更自身は余り動いては居ない。むしろ、ゴブリンロードが攻めを急ぐ感じになっていた。たかが魔法士の子供に、攻撃を全てそらされているのが気にくわないのだ。だが、そのことは、戦いにおいて冷静さを欠いていると言う弱点になる。そういう点、沙更はヘレナを守る盾になることを決めていた。それだからこその不動だったのだ。
ゴブリンロードの攻めが苛烈になっていく。突きに払い、上からの叩き切りなども駆使するがそれにも沙更は対応していく。突きならば打点をずらし、払いならば一歩後ろに下がり、振り下ろしならば前に出てその間合いから外れる。完全に見切っているからこその対応であり、武器の利点と欠点を知っていなければ出来ない動きでもあった。
長柄物は相手から離れたところからでも攻撃できるが、攻撃できる範囲はそれほど広いわけでは無い。突くなら一直線、払いならば柄の長さの角度180度叩けるかどうか、振り下ろすのならどうしても刃がある面を外されてしまえばそこまでの打撃を与えることは出来ない。
沙更が守りに入っている間に、パウエルがヘレナを邪魔にならないように側につれていく。
「セーナちゃんの動きが凄いな。あの鋭い一撃ですら打点を変えているし、相手の攻撃に完全に対応しきっている」
「いきなりのことだったから、身体が固まってしまったわ。セーナちゃんにまた助けて貰ってしまった。恩が積もり積もるわね」
ヘレナとして、申し訳なさがあふれてくる。あのままだったら倒れていたのは自分であった。そこを沙更が助けてくれたのだからそう思うのも無理は無かった。
防御に専念している沙更に、ゴブリンロードはその防御を抜くことが出来ない。その苛立ちで、攻めが雑になってきて体勢を崩したその隙を付いたのがミリアだった。
沙更に気を取られている間に、ゴブリンロードを白の直刀の間合いに収めていて、放つは鞘走りからの一閃。ハルバードをもつ腕を肘から下を切り飛ばし、さらに返す刀で胴体と首を切り飛ばした。
マイティアップで速度が速くなっているとは言え、その速度は人間が捉えることが出来ないほどの速度で繰り出されている。そのことは、ミリアが白の直刀に慣れたと言う事と今の身体能力を完全に使えると言う証であった。
実際、今のミリアの動きは速度だけならAクラス冒険者を越えていたのだから。
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