109 / 365
領都へ
閑話6 辺境伯の兵士&司祭アレク
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
閑話6 辺境伯の兵士&司祭アレク
沙更たちが大森林をウエストエンドに向かっている頃、辺境伯の兵士30人が馬車を使ってエンシェントゲートに到着していた。
「辺境伯様に言われ、ここまで来たがここまで誰も会わなかったのはおかしいと思わないか?」
「確かに、街道を遡ったのだからこちらから来る人間は必ず通るはずなのだがな」
兵士長とその部下は、街道に開拓村の人間らしい人が居なかったことを怪しむ。が、それは沙更の思惑が当たっていた証であった。今頃、大森林を南東にウエストエンドに向かっているなどとは考えが及ばない。
そもそも、開拓村側からの人の流れはごくわずかの商人か貴族の代官くらい。たまに、ランクの高い冒険者が混ざるかどうかなのだ。
それを考えれば、街道を通らないと言う選択肢を取れた沙更の魔法とそれに支えられた荒野の狼のメンバーが凄いと言うしかなかった。非常識故に、兵士達の裏をかいた結果なのだから。
エンシェントゲートで、光魔法の使い手の話を聞いてもそんな魔法士なら有名になっているだろうと返されるだけで、収穫はまるで無かった。
そう、エンシェントゲートで聞き込みをしたところでわかるはずもない。使い手の沙更はここで光魔法を使った訳ではない。それ故に、情報が集まらないのは当然のことだった。
強いて聞けたのは、古代遺跡から立ち昇った光の剣の噂位だ。誰が唱えたのかなどの詳しい情報は出てこない。
ある意味見通しが甘かったのが露骨に出てしまった。情報が集まらないので、噂の元である古代遺跡に直接足を踏み入れるしかない。が、ある程度の訓練を積んだ程度の兵士に開拓村側の古代遺跡は荷が重すぎた。
だが、辺境伯からの情報を手に入れるまで帰ってくるなと言う指示がなけなしの兵士たちを死に追いやる事になるとは辺境伯は思ってもいない。
ウエストエンドでふんぞり返るだけの貴族に、辺境の古代遺跡の恐ろしさなど理解出来ない。その一点で、なけなしの兵士たちを失う形になったのだった。
一方、その頃王都の聖堂を出たアレク司祭は数人のシスターと見習いシスター一人を連れて、ウエストエンドを目指すことにした。
こちらは、光魔法を熟知しているその一点だけで辺境伯の兵士たちよりも有利であった。
「聖女様が辺境から向かうとすれば、ウエストエンド以外にはあり得ないと思うけど、シスターたちはどう思う?」
アレクに意見を聞かれた十代後半のシスターは同意する。辺境で暮らすのはかなりの苦労を要するし、その間に確実に噂になると思ったからだ。
その考えは間違ってはいない。開拓村側で暮らすつもりは今の沙更にはない。それに、開拓村の側は暮らし辛い。物資の量がウエストエンドまでと比べると格段に減ってしまうのが致命的だった。
盗賊が跋扈していて、それを放置してしまっているのも拍車を掛けていた。先代の辺境伯なら屈強な兵士たちを送り込んで排除していただろうが、今の辺境伯は上役に付け届きを送る腰巾着の為、領民には嫌われていたのだ。
「ウエストエンドで、聖女様を待ちましょう。ウエストエンドの孤児院から、救済を求める書状も来ていますしね」
アレクはそう言うと聖堂を振り返る。
(上役が糞なのは、どこの世界も変わりなしと言ったところなのだろう。少しずつでも教会の空気を変えねば、教会は権力を追い求める亡者になりかねない。少なくとも司教以上の人間は、既に権力欲に取り憑かれてしまっている)
アレク自身、まだ二十代ながら司祭に実力で上り詰めた異才だ。それ故に、上役からすれば煙たいことこの上なかった。優秀なのが鼻につくし、自分を失脚させようとしているのでは無いかと考えられるほどには優秀だった。
世襲で司祭以上の地位にいる人間は、特に毛嫌いするようだ。自身を脅かすと思っている当たり、完全に思考が硬直化してきている証でもあるのだから。
それ故に、アレクは聖女を探すことにしたのだ。その事は教会のみならず、この国に変化をもたらす事になるのだと信じて。
閑話6 辺境伯の兵士&司祭アレク
沙更たちが大森林をウエストエンドに向かっている頃、辺境伯の兵士30人が馬車を使ってエンシェントゲートに到着していた。
「辺境伯様に言われ、ここまで来たがここまで誰も会わなかったのはおかしいと思わないか?」
「確かに、街道を遡ったのだからこちらから来る人間は必ず通るはずなのだがな」
兵士長とその部下は、街道に開拓村の人間らしい人が居なかったことを怪しむ。が、それは沙更の思惑が当たっていた証であった。今頃、大森林を南東にウエストエンドに向かっているなどとは考えが及ばない。
そもそも、開拓村側からの人の流れはごくわずかの商人か貴族の代官くらい。たまに、ランクの高い冒険者が混ざるかどうかなのだ。
それを考えれば、街道を通らないと言う選択肢を取れた沙更の魔法とそれに支えられた荒野の狼のメンバーが凄いと言うしかなかった。非常識故に、兵士達の裏をかいた結果なのだから。
エンシェントゲートで、光魔法の使い手の話を聞いてもそんな魔法士なら有名になっているだろうと返されるだけで、収穫はまるで無かった。
そう、エンシェントゲートで聞き込みをしたところでわかるはずもない。使い手の沙更はここで光魔法を使った訳ではない。それ故に、情報が集まらないのは当然のことだった。
強いて聞けたのは、古代遺跡から立ち昇った光の剣の噂位だ。誰が唱えたのかなどの詳しい情報は出てこない。
ある意味見通しが甘かったのが露骨に出てしまった。情報が集まらないので、噂の元である古代遺跡に直接足を踏み入れるしかない。が、ある程度の訓練を積んだ程度の兵士に開拓村側の古代遺跡は荷が重すぎた。
だが、辺境伯からの情報を手に入れるまで帰ってくるなと言う指示がなけなしの兵士たちを死に追いやる事になるとは辺境伯は思ってもいない。
ウエストエンドでふんぞり返るだけの貴族に、辺境の古代遺跡の恐ろしさなど理解出来ない。その一点で、なけなしの兵士たちを失う形になったのだった。
一方、その頃王都の聖堂を出たアレク司祭は数人のシスターと見習いシスター一人を連れて、ウエストエンドを目指すことにした。
こちらは、光魔法を熟知しているその一点だけで辺境伯の兵士たちよりも有利であった。
「聖女様が辺境から向かうとすれば、ウエストエンド以外にはあり得ないと思うけど、シスターたちはどう思う?」
アレクに意見を聞かれた十代後半のシスターは同意する。辺境で暮らすのはかなりの苦労を要するし、その間に確実に噂になると思ったからだ。
その考えは間違ってはいない。開拓村側で暮らすつもりは今の沙更にはない。それに、開拓村の側は暮らし辛い。物資の量がウエストエンドまでと比べると格段に減ってしまうのが致命的だった。
盗賊が跋扈していて、それを放置してしまっているのも拍車を掛けていた。先代の辺境伯なら屈強な兵士たちを送り込んで排除していただろうが、今の辺境伯は上役に付け届きを送る腰巾着の為、領民には嫌われていたのだ。
「ウエストエンドで、聖女様を待ちましょう。ウエストエンドの孤児院から、救済を求める書状も来ていますしね」
アレクはそう言うと聖堂を振り返る。
(上役が糞なのは、どこの世界も変わりなしと言ったところなのだろう。少しずつでも教会の空気を変えねば、教会は権力を追い求める亡者になりかねない。少なくとも司教以上の人間は、既に権力欲に取り憑かれてしまっている)
アレク自身、まだ二十代ながら司祭に実力で上り詰めた異才だ。それ故に、上役からすれば煙たいことこの上なかった。優秀なのが鼻につくし、自分を失脚させようとしているのでは無いかと考えられるほどには優秀だった。
世襲で司祭以上の地位にいる人間は、特に毛嫌いするようだ。自身を脅かすと思っている当たり、完全に思考が硬直化してきている証でもあるのだから。
それ故に、アレクは聖女を探すことにしたのだ。その事は教会のみならず、この国に変化をもたらす事になるのだと信じて。
0
あなたにおすすめの小説
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
根暗男が異世界転生してTS美少女になったら幸せになれますか?
みずがめ
ファンタジー
自身の暗い性格をコンプレックスに思っていた男が死んで異世界転生してしまう。
転生した先では性別が変わってしまい、いわゆるTS転生を果たして生活することとなった。
せっかく異世界ファンタジーで魔法の才能に溢れた美少女になったのだ。元男は前世では掴めなかった幸せのために奮闘するのであった。
これは前世での後悔を引きずりながらもがんばっていく、TS少女の物語である。
※この作品は他サイトにも掲載しています。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる