月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第109話 古びた砦で3

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月の魔女とよばれるまで

第109話 古びた砦で3

ミリアの気配察知で、捕らえられている人が二人と分かった。微弱な気配で、察知が難しかったと言うが気配察知のスキルレベルが低ければ気付くことも出来なかっただろう。

そのうちの一人は、セーナの開拓村の生き残りらしい。セーナの魂が、知っている事を沙更に教えてくれる。それならば、助けだそうと考えるのは冒険者の常であり、盗賊退治よりもそちらが優先になった。

そもそも、盗賊退治はまた仕掛けられては困ると言う事と意趣返しがメインだっただけに、そちらよりも優先することが出来たことは良かったとも言える。

人命救助も盗賊退治も冒険者の仕事なのだから。

「セーナちゃんに出会ってなければ、街道沿いの盗賊退治なんて、あたしたちの腕だと荷が重かったはずなんだけどね」

「それもそうだな。ある意味、大それた事をしている気はするが何というか、今の相棒ならこのくらいは大丈夫だと思わせてくれるんだ」

「盗賊ごときじゃ俺は燃えねえけどな。なんだかんだで、こいつがしっくりきやがる」

やはり、武器のランクが上がったことと高ランクモンスターとの戦闘経験が荒野の狼の実力を押し上げていた。今までならば、これだけの盗賊を片付ける事が出来たかと言うと結構怪しい。

急成長したことで、出来る事が掴み切れていない部分もあったが、それでもミリアとガレムは感覚を既に掴んでいて、ぶれることは無い。


盗賊の頭は、行かせた盗賊の気配が消えたことに気付いた。

(ちっ、既にここまで掴まれてるってか?まったく、どんな手練れだ。こんなことが出来る冒険者なんて、ここ数年耳に入った覚えがねえ)

6.7年前ならウエストエンドにAランクに相当する冒険者パーティーがいた為、そういうことも出来ただろう。が、今のウエストエンドにそこまでの猛者はいないはずだった。居るとすれば、情報が流れてきていたはずだ。それだけ情報を収集するのに手下を使っていたからだ。

(だとすると王都からわざわざ呼び寄せたってことか!?となるとあのくそ貴族まるで役に立たねえ。その辺りの情報は貴族から貰うのが手っ取り早いだろうが!)

現状を考えるとかなり状況が悪化しているのを感じざるを得ない。そして、この状態を招いたのは自分たちだとは気付かない。そこまでの分析が出来る訳では無かった。

今のウエストエンドに、手練れの冒険者がいない以上王都から呼び寄せたと言う結論になる。が、そんな情報は入っていなかった。


まさか、古代遺跡で月女神の眷属とやり合って生き残った冒険者を自分たちが襲ったと言う間抜けな事実は、盗賊の頭の頭には無かった。そこは奪ってナンボなだけにそこまで頭に入れていなかったのだ。


ミリアは、盗賊たちが未だに自分たちを把握していないことを分かっていた。既に、侵入されていることを気づけるレベルならミリアと同格と言って良い。だが、ミリアレベルの気配察知を持つ人間はこの辺境にはいない。そして、相手にそんな力量の人間がいるなんて、盗賊側は想像もしていなかった。
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