月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第111話 古びた砦で5

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月の魔女とよばれるまで

第111話 古びた砦で5

盗賊たちを完全に討伐したことで、少しほっとした空気が流れる。流石に55人の盗賊団を相手に、怪我をしていないと言う事実がどれだけ凄いかは分かってもらえると思う。

「ガレム、なんだか不完全燃焼って顔してるけど大丈夫?」

「ああ、魔鉄の斧が泣いてたぜ。あいつじゃ、使い切れてねえんだよ。その点、俺のこいつは良い奴だな。全力だったら鉄のハンドアックスだったときは壊れてたが、付いてきてくれやがった」

ある意味、実力を出し切れる武器という感触を得られたこと自体が報酬だとガレムは思っていた。

スキルを使い、マイティアップを受けた自分の腕力に付いてこられる武器は今まで手にできなかっただけに、炭素鋼の斧はなかなか良い武器だと思えるほどに気に入った。

「そういう意味でも、セーナちゃんには感謝だぜ」

「思った以上に気に入ってもらえてよかったです。ミリアお姉さんもですけど、ガレムさんもかなり強くなってませんか?出会った頃に比べると大分変わった気がします」

「そうか?俺自身は変わった気がしねえがそう見えるならそうなのかもな」

ガレム本人は否定するものの、前よりも脳筋ではなくなりつつあるのは確かだった。前よりも理性が発達したと言う感じでバトルジャンキー気味だったのが少し変わってきた印象を受ける。

「前までなら、怪我するのも厭わなかったくせにセーナちゃんに出会ってから確かに妙に思う」

「言われて見れば、今までとは少し変わってきたかもな。立ちどまって考えられる位にはなっている気がする」

「そう言えばそうね。今までなら、盗賊相手に血塗れになりながらも相手を潰してた。こっちが怪我を治すのに苦労して治療した甲斐がないくらいすぐに怪我をしてたのに、無理をしなくなったのかしら?」

ミリア、パウエル、ヘレナと順番にそう言われ、ガレムとしては苦笑いを浮かべる。

「なるほどな、確かに聞けば無茶しなくなったと言うかする必要が無くなったからというべきか?」

ガレムとしてもどうしてそうなったかは説明しづらいようだ。なんとなくだが、沙更に分かった部分としてガレム自身が強くなったから、無茶をする必要が無くなったのが一番の理由になるのだろうと思う。

冒険者パーティー荒野の狼はメンバーの仲は大分良いようだ。ちやんと動きを見てることの証でもあったし、指摘出来るのは気に掛けている証拠でもあった。

そこまで話をしたところで、沙更から話を切り出すことにした。

「盗賊たちに捉えられた二人を確認しに行きませんか?」

あまり放置してしまうのも要救助者に取って辛くなる。だから、早めに動いておこうと沙更は考えていた。とうなっているかも確認していなかったのは厳しい。

一つ言えることは、遅くして良い事は無いということだろう。
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