月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第113話 古びた砦で7

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月の魔女とよばれるまで

第113話 古びた砦で7

話しかけて来た少女は品を持ちあわせていて、いかにも貴族の生まれだと感じさせた。

「盗賊たちがいたはずです。危険ですから戻って下さい!」

少女の言葉に、五人とも首を振る。既に、盗賊たちの討伐は済んでいる。危険なはずがなかったのだ。

その声に答えたのは、沙更だった。

「名乗らずに無礼とは思いますが、盗賊たちは既に討伐致しました。それに、その言葉遣いをする貴女は貴族の出ですね」

沙更の言葉に、息を飲む少女。そう、彼女は貴族の生まれであり、辺境伯の娘でもあった。

「貴女様は一体?」

「私はセーナ、冒険者さんに同行するものです。ここの盗賊に襲われた為、意趣返しに来てそれを完徹しました。なのでもう盗賊はいません」

「セーナ様…」

沙更の盗賊は既に退治したと言う言葉に、少女はほっとした表情を浮かべて倒れた。血の気が引いた為か、青白くなっている。

沙更は、少女の側に近寄るとヒールを唱えた。少女の身体にあった傷は、あっと言う間に消えていく。

だが、それでも少女は目覚めない。沙更は、少女の身体に細かい傷が残っていることに気づいてヘレナに代わる。

「セーナちゃん、大きな傷は消えてるのにどうして目覚めないの?」

「彼女の精神が限界なのです。ヘレナさん、細かい傷はお任せします。私は彼女を助けます。精神を癒やす魔法など、現代魔法士に伝わっていないでしょう」

「精神?」

「人の魂と言い換えた方が解りやすいかもしれません。それが出来るのは私だけ。だから、助けます。その手段を持っているから」

沙更は、それだけ伝えると月女神が司る月に願う。自身の魔力で、人工的に月明かりを創り上げると少女の身体にその光を当てていく。

(月よ、か弱い少女の精神を癒やして欲しい)

沙更の願いを神の器が聞き届けて、魔力を月の光へと変換していく。その光を浴びる少女の表情は、変化しないものの血色が徐々に回復していくのが見て取れた。

ヘレナを除く、パウエルたちはその光景を見ているしか出来なかった。ヘレナと沙更しか治癒魔法は扱えない上に、高度な治癒魔法に至っては沙更の独壇場と言うしかなく、手出し出来る状況でもなかった。

「やっぱり、セーナちゃんは凄いね」

「助けたいって言ってたな。だからこそなのか、その思いに魔力が応えてくれるのだろう」

「凄いと言うと違うだろ。セーナちゃんは助けたいと思って動いているだけだ。損得考えてないと思うぜ」

三人は、月の光で手当をしていく沙更を見ていた。
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