月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
130 / 365
領都へ

第120話 クルシス1

しおりを挟む
月の魔女と呼ばれるまで

第120話 クルシス

休憩を終えた後、クルシスに夕暮れ前に到着した。

街道沿いは、流石にモンスターが出てくること自体がまれの為、そこまで警戒せずに一気にクルシスまでの距離を縮められたのが大きい。

到着したのは良かったが、若干問題が出てきた。そう、沙更の身分証がないことと女性達と一緒と言う事である。衛兵達に説明が必要になるのは当然だったが、そこは冒険者ギルドのギルド証でなんとかなるだろうと言うことだった。

「セーナちゃんの身分証は、冒険者ギルドで作るか市民証を作るかになるんだけど、クルシスで登録はしないで欲しいかな」

「あそこだとどうしてもウエストエンドに比べると落ちる。エンシェントゲートで登録しなかったのと同じ理由だ。すまないが、ウエストエンドまで登録は待って欲しい。となれば、市民証か。確か銀貨2枚で作成可能だったよな?」

「詳しくは覚えてねえが、確かそれで間違ってなかったはずだぜ?」

「もう、リーダーもガレムも市民証は銀貨一枚で作成してくれるわ。確かに、セーナちゃんは開拓村の出身だから、身分証がないのよね。そこをすっかり忘れてしまっていたわ」

と言う話になり、市民証を作る事で決まったのだった。

この町で、ほとんどの女性達とお別れすることになる。ウエストエンドまで付いてくるのはリエットだけだ。

衛兵にお任せしようかと思ったが、休憩中にその話を振ったところ、そのまま送って欲しいと言われたのでそのまま送ることとなった。

ある程度、沙更の魔法を見せている事からこれ以上騒いだりはないと判断したのが大きい。それとムーンライトでの治療した後の経過観察が必要だったのもあってのことだ。

と思い返していたところで、衛兵たちがやってきた。

「クルシスの町に何の用だ?大人数で、しかも大半が女性となれば事情を聞かねばならん」

衛兵たちに、パウエルたちは自身の冒険者ギルド証を見せてから話を始めた。

説明をしていくと段々と事情を理解できたらしい。険しい表情が変わっていった。

「なるほど、ゴブリンの巣から助け出した女性たちだったか…。それならば大人数なのも納得だ」

「この町で、女性達を住まわせてもらえないだろうか?後、この子の市民証も頼みたいのだが」

「市民証ならば、銀貨一枚で作成は承る。女性達をこの町にか・・・。領主様に聞く必要性がある。すぐには決められないがそれでも良いか?」

衛兵の言葉にパウエルは頷く。もとより、それに拒否をする必要はない。わざわざ、領主に聞いてくれると言うのなら大丈夫だろうと思う。

クルシスの領主は、先代辺境伯の子飼いの部下である子爵が勤めていた。本当なら、先代と一緒に王都に向かうはずだったのだが、今代の辺境伯が無能なのでここだけでもましにしておきたいと残ったと言われる立派な方らしい。

衛兵達の話を聞いていての判断だったが、リエットを盗賊に売る親に比べれば落差が激しいと言うしかなかった。

早速、沙更は市民証を作る為の書類を出されて、それに署名していく。五歳とは思えない綺麗な文字に、衛兵達から感嘆の声が上がった。

「こんなに幼いのに、これだけの綺麗な字を書くのか」

「これだけ綺麗ならば、文官にもなれそうだ。幼いだけに、先が楽しみだろう」

と言われて、沙更はちょっと困った笑みを浮かべるしか出来なかった。誰かに仕える気は、全くと言って良いほど考えていなかったからである。

きっちりと書き終えた書類を提出して、十分後。銅の板で出来た市民証を手渡される。思っていたよりも重く、身につけておくとしても中途半端。

困った沙更は、そのまま虚空庫に入れることにした。必要な時には服のポケットから取り出した風を装えるからで、下手に持ち歩いてなくすよりは良いだろうと思ったのが本音だった。

2019/07/07 一部分、書き直しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が目覚めたのは断罪劇の真っ最中でした

アーエル
ファンタジー
「今北産業、説明ぷりーず」 「「「…………は?」」」 「今北産業、状況説明ぷりーず」 だれか説明してくださいな ☆他社でも公開しています

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

『公爵家を乗っ取った男爵一家は、家系図から消えました』 ―偽令嬢は王太子妃を夢見て国外追放、私は公爵として責務を果たします―

ふわふわ
恋愛
両親を亡くし、幼くして公爵家の当主となったエレノア。 後見人を名乗って入り込んできたのは、男爵である叔父一家だった。 「公爵家は私たちが守ってあげる」 ――そう言いながら、彼らはいつしか公爵を名乗り、財産を使い込み、娘を“公爵令嬢”と偽って社交界へ。 やがて王太子との婚約話まで進み、公爵家は完全に乗っ取られたかに見えた。 だが―― 「その公爵令嬢、偽物ですわ」 静かに微笑んだ瞬間、全ては覆る。 血統の証、一族会議での断罪、王家への正式告発。 爵位僭称、王家欺瞞、財産横領。 男爵一家は次々と罪を暴かれ、家系図から名を消されていく。 救済はない。 情もない。 あるのは責務のみ。 「公爵は、情より責務です」 本物の公爵令嬢エレノアが、奪われた家と誇りを取り戻し、王家と対等に並び立つまでの徹底ざまぁ恋愛譚。 偽物は消え、本物だけが残る。 これは、乗っ取られた公爵家を完全に取り返す物語。

処理中です...