月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第121話 クルシス2

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月の魔女とよばれるまで

第121話 クルシス2

沙更の市民証を受け取った後、女性達と少女三人と別れることになった。開拓村から遠く離れたここならば、滅多なことでは別の開拓村の面々に会うことはない。

基本、開拓村の面々が外に出ることは無い。買い物もエンシェントゲートに出る位のことで、クルシスやウエストエンドまで来ることは無い。

開拓村の村長ですら、書類などがあったとしてもエンシェントゲートに居る代官を通さなければならず、直接訴えかける等と言うことは許されてはいなかった。

それに、クルシスの町の住人と認められているのなら開拓村に引き渡すと言う事も出来ない。勝手に町の住人を連れて行くと言うことは犯罪になるからだ。

「「「ゴブリンの巣で助けて貰って、クルシスまで連れてきてくれてありがとう」」」

「「「何も出来なかったけれど、ここまで連れてきてくれて感謝してる」」」

「ここまで連れてきてくれてありがとう。クルシスの町なら、開拓村の面々が現れることも無いから」

村長の娘や助けた女性達がそう言うと沙更は首を振る。セーナに頼まれて開拓村出身の三人を助けたが、それ以上のことが思い浮かばなかったと言うのが正しい。

でも、開拓村から距離を離したのは悪くは無かったと考えてはいた。実際、助けた三人とも沙更をセーナだと気付いてはいなかった。魔力を持っていても使っていなかった事と髪の色も長さもそして纏う雰囲気すらも変わっていたのだから、そこまで変わってしまうともう別人なのだと思う。

沙更としても、力を持たない彼女達にこれ以上関わりを持って欲しいと思っては居なかったので、丁度良かったとも言えた。ある意味冷たいのかもしれない。けれど、関わったら下手すれば死に至る可能性が高いのだ。

ならば、離れて平穏に暮らして欲しいと思うのは果たして冷たいと言えるのだろうか?そこは、沙更が決めることでは無いと思う。

衛兵達のところで、女性達と別れてパウエルたちとリエットの五人になった。

「さて、これから市場に買い物に行くか」

「ある程度材料がないので、一杯買わないとダメです。ある程度の目利きは私がやります。パウエルさん達においしいものを食べさせたいと言うのは変わりありませんから」

沙更として、出来る限り調理をしておいしいものを食べて欲しいと言うのが念頭にある。ミリアを助けたようで、助けて貰ったのは自分じゃないかと思ったりもする。

一人だったら、既に精神的にすり切れていただろう。その自覚は沙更にはあった。セーナだけでも沙更だけでも、あの場を切り抜けることは出来なかった。二人そろってなんとかなったが正しい。

けれど、そこにミリアたちがいたからあれだけの力を発揮できたと今なら理解出来た。神の刃、ディバインブレードは守るために使う物だと知っているから。

「セーナちゃんの料理の腕はかなりのものだと思うけど?」

沙更の声に、ミリアがそう言いつつも気遣うような視線を送ってくる。それだけ、心配されていると言う事のようだ。思っている以上に、今の沙更の容姿は5才の女の子なのだ。本当なら、荒事に参加していると言うだけでもとんでもない話だったりする。

それに気付いていないのは本人だけで、リエットもその話を聞いていて顔を曇らせていた。

「あの、幼いのに凄腕の治癒士様であると同時に魔法士様でもあるのですか?」

「えっと、私の治癒魔法はヒールとムーンライトのみなのです。それで、大治癒士と言われても」

沙更としては、ヒールとムーンライトの二つしか使えない現状でそう言われることに首をかしげるしか無い。そもそも、ヒールで大怪我を治療出来るだけで十分凄いことと言うのがこの世界の認識だ。この世界の治癒士のハイヒールですら、治療出来ない怪我を治している実態があるのだから。

「どちらにしろ、市場で食材の仕入れをしよう。何が食べたいかで、決を採りたい」

パウエルがそう言ったところで、盛り上がる3人。それを見ている沙更とリエットは、なんとなく浮いているようで馴染んでいた。
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