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第125話 ゼオンの屋敷にて
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月の魔女とよばれるまで
第125話 ゼオンの屋敷にて
ゼオンの行動を見て、リエットは絶句していた。何故、幼い治癒士の彼女に剣を抜きかけているのか理解出来なかったのだ。
が、沙更は冷静にゼオンの行動に対しての事を許してくれていた。ゼオンもそれに関しては謝罪し、そのことを沙更も受け入れた。そういう点でも、沙更の器が大きいことをリエットは感じざるを得なかった。
「幼い治癒士様は、王者としての器すらお持ちなのですね」
「リエット様、私は私でしかあり得ません。魔法士で治癒士である事、それ以上を望むことはないでしょう」
沙更はリエットの言葉にそう返す。幼いこの身に、出来る事はそう多くは無いと知っているからだ。そもそも神の器を抱くこの身が王者であるわけがなかった。
そんな沙更の受け答えに、ゼオンも口を出す。
「お嬢様、彼女の器は大きい。少なくても主君である前辺境伯様にも劣らないでしょう」
「あの方に並ぶとなれば、英雄に匹敵すると言うことですよゼオン。確かに、幼い治癒士様はわたくしの傷や精神すら癒やして見せました。そんなことが出来る人間が他に居るとは思えません。でも、英雄と呼ばれることを好かないと思うのです」
ある程度沙更と話をしたリエットは、沙更が上昇志向ではないことを見抜いていた。それに、助けて貰った側として余りにも迷惑をかけてしまっていないかと思ってしまうのだ。
「お嬢様…」
「あの、ここで話をしても長くなってしまいます。出来れば、中に案内はしていただけないでしょうか?」
リエットとゼオンのやりとりで、思い出したように沙更がそう言った。
元々、案内したのはリエットであったし、ゼオン自身もそれを受け入れてくれたようなので、ここで立ち話もと思ったのだ。
ゼオンの勧めで、屋敷に入るとリエットとそこで別れる。元々、この屋敷にはリエットがたびたび遊びに来ていたこともあり、ある程度の衣装が置いてあるそうだ。それに着替えに行ったのだ。
リエットが着替えをしている間、リビングに案内されて、メイドにお茶をごちそうになると言う冒険者じゃなかなかない時間を過ごすことになった。
「お嬢様は、一体どこに居たのです?」
「街道沿いの盗賊のアジトよ。彼女自身囚われた時のことは覚えてないみたい」
「あそこは、凶悪な盗賊の頭がいたはずだ。君たちだけで潰したのか!?」
ヘレナから事実を聞いて、ゼオンは街道沿いの盗賊のことを知っていた。幾度か討伐をして逃げられていたからだ。それだけに、驚きの表情を浮かべざるを得ない。そして、リエットが捕らえられたことは知っていてもその事情までは知らなかったことに、愕然とするしかなかった。
「やはり、お嬢様はあの男にはめられたと言う訳か」
「相手はこちらでは分からないけど、街道沿いの盗賊はこの子も含めた五人で壊滅させたよ。わざわざ襲ってきてくれたから、全員返り討ちにしたんだよね」
ミリアが壊滅させた時のメンバーを伝えるとゼオンは沙更を見た。
「この子は、何者だ?これだけの魔力を有している人間を他に知らない」
「私のことは気にしないで大丈夫ですよ。それとも月女神の眷属とでもやり合うつもりですか?」
「なっ、月女神の眷属だと!?邪神になりかけで、シルバール王国の大罪をしでかした者ではないか!?」
「この子は、月女神の眷属と邪教の集団に狙われたの。自身の力に目覚めて、月女神の眷属を撃退したけど傷を癒やしたらまた来る。その時に、何か出来る?」
ゼオンの言葉に、ミリアがそう返す。その言葉に、この冒険者達はこの子の為に動いていると言うのを理解したのだった。
第125話 ゼオンの屋敷にて
ゼオンの行動を見て、リエットは絶句していた。何故、幼い治癒士の彼女に剣を抜きかけているのか理解出来なかったのだ。
が、沙更は冷静にゼオンの行動に対しての事を許してくれていた。ゼオンもそれに関しては謝罪し、そのことを沙更も受け入れた。そういう点でも、沙更の器が大きいことをリエットは感じざるを得なかった。
「幼い治癒士様は、王者としての器すらお持ちなのですね」
「リエット様、私は私でしかあり得ません。魔法士で治癒士である事、それ以上を望むことはないでしょう」
沙更はリエットの言葉にそう返す。幼いこの身に、出来る事はそう多くは無いと知っているからだ。そもそも神の器を抱くこの身が王者であるわけがなかった。
そんな沙更の受け答えに、ゼオンも口を出す。
「お嬢様、彼女の器は大きい。少なくても主君である前辺境伯様にも劣らないでしょう」
「あの方に並ぶとなれば、英雄に匹敵すると言うことですよゼオン。確かに、幼い治癒士様はわたくしの傷や精神すら癒やして見せました。そんなことが出来る人間が他に居るとは思えません。でも、英雄と呼ばれることを好かないと思うのです」
ある程度沙更と話をしたリエットは、沙更が上昇志向ではないことを見抜いていた。それに、助けて貰った側として余りにも迷惑をかけてしまっていないかと思ってしまうのだ。
「お嬢様…」
「あの、ここで話をしても長くなってしまいます。出来れば、中に案内はしていただけないでしょうか?」
リエットとゼオンのやりとりで、思い出したように沙更がそう言った。
元々、案内したのはリエットであったし、ゼオン自身もそれを受け入れてくれたようなので、ここで立ち話もと思ったのだ。
ゼオンの勧めで、屋敷に入るとリエットとそこで別れる。元々、この屋敷にはリエットがたびたび遊びに来ていたこともあり、ある程度の衣装が置いてあるそうだ。それに着替えに行ったのだ。
リエットが着替えをしている間、リビングに案内されて、メイドにお茶をごちそうになると言う冒険者じゃなかなかない時間を過ごすことになった。
「お嬢様は、一体どこに居たのです?」
「街道沿いの盗賊のアジトよ。彼女自身囚われた時のことは覚えてないみたい」
「あそこは、凶悪な盗賊の頭がいたはずだ。君たちだけで潰したのか!?」
ヘレナから事実を聞いて、ゼオンは街道沿いの盗賊のことを知っていた。幾度か討伐をして逃げられていたからだ。それだけに、驚きの表情を浮かべざるを得ない。そして、リエットが捕らえられたことは知っていてもその事情までは知らなかったことに、愕然とするしかなかった。
「やはり、お嬢様はあの男にはめられたと言う訳か」
「相手はこちらでは分からないけど、街道沿いの盗賊はこの子も含めた五人で壊滅させたよ。わざわざ襲ってきてくれたから、全員返り討ちにしたんだよね」
ミリアが壊滅させた時のメンバーを伝えるとゼオンは沙更を見た。
「この子は、何者だ?これだけの魔力を有している人間を他に知らない」
「私のことは気にしないで大丈夫ですよ。それとも月女神の眷属とでもやり合うつもりですか?」
「なっ、月女神の眷属だと!?邪神になりかけで、シルバール王国の大罪をしでかした者ではないか!?」
「この子は、月女神の眷属と邪教の集団に狙われたの。自身の力に目覚めて、月女神の眷属を撃退したけど傷を癒やしたらまた来る。その時に、何か出来る?」
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