月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第126話 ゼオンの屋敷にて2

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月の魔女とよばれるまで

第126話 ゼオンの屋敷にて2

月女神の眷属とやり合って生き残ったと言う冒険者たちと幼い娘の5人は、ゼオンから見て嘘を言っているようには見えなかった。それだけの実力を持つ冒険者など、王都でも数人居るかどうかだろう。

ゼオン自身、正騎士でも上位に入るほどの腕を持つ。が、それでも月女神の眷属と戦って満足に帰ってこられる自信は無い。それほどの相手だった。

「なるほど、月女神の眷属とやり合って生き残ったのならば街道沿いの盗賊くらいではやられないか」

「全ては、セーナちゃんのおかげだ。あの子が居なければ、俺たちとて生き残っては無かった」

パウエルの言葉に、ゼオンも頷く。沙更の持つ魔力量は、英雄と呼ばれ記憶の彼方に行った人間達の誰よりも高かったからだ。徐々に、世界から魔力が失われて行っていると言う状況下でこれほどの魔力を持つ者は他にいるわけがなかった。

既にこの世界は、神に見放されている。残った月女神を殺害したことで、既にこの世界を見守る神はいない。何故、月女神と敵対したのかすら古代魔法文明のかけらしか残っていない現代ではそれを知りようも無い。

魔力も神が生み出した物であるからにして、供給されることが無ければ失われていくのは当たり前のことである。そして、それが出来るのは神の器を持つ者。

そう、月女神の魂を分割されていたセーナと沙更の魂を結合した今の沙更だけ。神の器を持つと言う事がどれだけ凄いことなのかは、言うまでも無い。

それでも、沙更はそれに頼るつもりは毛頭無いし、月女神の意識もそれを望まなかった。切り札でもあるが、切った場合の被害がとんでもないことになると言う諸刃の剣なのだから。

「ゼオンさんとお呼びしても?」

「ああ、構わない。私は騎士で、貴族とは言えど末端でしかない故な」

沙更は、ゼオンの呼び名に関して許可を貰いつつも少し紅茶を飲む。飲んで再度口を開いた。

「ゼオンさんは、私がリエット様に害をなすとお思いですか?」

「すまない、出会った時には判断が出来なかった。故に剣に手をかけてしまったのだ。今なら分かる。君を信用しよう」

「そう言って貰えて助かります。騎士という役目上、素性が分からない者を信用しづらいのは分かりますので、無茶を言ったなと思っています。私は治癒士でもありますし、リエット様は患者です。医師が患者を害しては成り立ちませんし、そう言う思いであの方を見ています」

「そうか、治療士が治療した相手を襲う等と言うことはしない。と言う事はお嬢様を守ってもらえると?」

ゼオンの言葉に、沙更は頷く。治療士として、患者の治療後まで責任を持つと暗に伝えていた。

それで無くても、リエットは貴族の娘だけに敵が多い。両親ですらも敵に回っている可能性が高いこともあって、どこで命を狙われるか分からないのだ。

ここは、ゼオンの屋敷だけに守りとしてはかなり強固だ。だが、ウエストエンドに戻った後どうなるかは分からない。辺境伯の行動もそうだが、どう動いてくるかが読めなかった。
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