月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第130話 ゼオンの屋敷にて6

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月の魔女とよばれるまで

第130話 ゼオンの屋敷にて6

翌日、夜明けと共に沙更は起き出した。すぐ側に、ミリアが居る事を確認するとやはりうなされたのだと理解した。

(いつも、ミリアお姉さんと一緒に寝させて貰ってるから本当にありがとうって思う。セーナちゃんの心の傷は深すぎて、治るのにはもの凄く時間が掛かるはず。だから、しばらくはミリアお姉さんの力が必要になるのが、心苦しいところではあるけれど)

沙更は、昨日寝たあとでうなされたのだと確認しつつもささっと着替えて、厨房へ向かった。

食にうるさいと言うよりも、料理をする側として納得がいかないといった気持ちで、朝食を作り始める。どうやら、ゼオンの屋敷では鶏肉や腸詰めをよく食べるらしい。なので、それを料理人達から分けて貰って作るのは野菜たっぷりのポトフ。

二、三時間くらいしか煮込めないがそこは沙更の魔法を頼りにするしか無い。そもそも、沙更の料理は魔法ありきで構成されている。下手な料理人では真似すら出来ないのだ。

実際、見ている料理人達は沙更の調理の仕方に目を丸くしていた。

(おいおい、鍋一杯に水を魔法で生み出すとかお前出来るか?)

(今、あんな魔力を持ち合わせる人は居ないと思いますよ)

(だよなあ、俺もあれだけ魔法を使う料理人初めて見たぜ。しかもあんな幼い娘がだが、まったくすげえと言うしかねえ)

野菜も聖鋼の包丁で、音も立てずに刻んでいく。その速度と正確さは、なかなかの物であった。サラダとポトフだけでは足りないかもと思い、もう一品作ることにする。

(油があれば唐揚げに出来たりするんだけど、今回は塩で焼くだけかなあ)

やはり、できる事はそこまで多くは無い。実際、焼くのも焼きすぎては駄目なので加減は必要なのだが。

焼きもなかなか奥深いが、そこは沙更の感覚が手助けしてくれる。さらに、魔力が沙更に補助をしてくれているので失敗することはない。

それにも料理人たちは驚かされる。いきなり作れと言われて、失敗するだろうと思っていたのにだ。


しばらく経って、出てきた朝食にリエットとゼオンが驚いた顔をした。

「「「朝からしっかりした量だね」」」

「しっかりした量ですよね。ても、これを幼い治癒士さまが?」

「思っていたよりもしっかりした朝食が作られるとは」

ミリアたちは沙更の料理の腕を知っているから驚きはなかったが、しっかり作ってくれたことだけは感じ取れた。

沙更はいつも通り、少し申し訳なさそうな表情をしていた。

「やっばり、作りたいものを作ることができないのは辛いです。食べてほしいものを材料が足りないので、作れません」

それが、沙更のストレスになりつつあった。やはり、材料が足りなすぎたのだ。
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