143 / 365
領都へ
第132話 ウエストエンドへ向けて2
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第132話 ウエストエンドへ向けて2
ウィンドウォークがエアウォークに進化した事で、パウエルたちの移動速度は下手な馬車並みにまで向上していた。徒歩の六倍の速度を叩き出す事と歩きの体の負担軽減の2つの効果が一行を包み込んだ。
クルシスからウエストエンドまでは馬車で四、五時間程。近いと言えば近いと言える。が、道が整備されている訳ではないので誤差は生じてしまうのはご愛嬌だ。
だが、沙更のエアウォークなら多少のデコボコも風が補助してくれる。なので、リエットの足でも負担少なく動くことが出来ていた。
そんな中、いきなり魔法が進化した事で少し考え顔をする沙更。
(大気の力が私達を後押ししてくれているのが分かる。そう言えば魔法の進化って、誰でもできる事なのかな?)
ふとした疑問を感じた沙更は、ヘレナにその話を振ると彼女は呆れた顔をしていた。
「セーナちゃん、魔法の進化は未だ誰も成し遂げていない未踏の領域だった。それを成し遂げたというのがどれだけの事だと思っているのです?」
「えっと、もしかして私やらかしました?」
「ええ、特大級のをですわ。でも、ある意味セーナちゃんでよかったのかも知れません。今まで出来なかった理由がなんとなく分かった気がしますし」
ヘレナはそう言って、魔法の進化の条件がある程度見えてきた事を話してくれた。今まで、魔法が進化した例は一回もなかったそう。だから、沙更の魔力が飛び抜けているからこそ出来る事なのだろうと推測が付く。
魔法を使う人間として、魔法が進化した唯一の例となったウィンドウォークはまさに注目の的になりかねない。少なくても魔法を研究している人間からしてみれば調べたくなるのは当然のことだった。
とは言え、沙更がそのたぐいの人間に手を貸すかと言われれば首をかしげるしか無いのだが。
そんなやりとりを見つつも、リエットは近づくウエストエンドに内心揺れていた。
(わたくしがウエストエンドに戻る日が来るなんて思ってもみなかった。本当に、幼い治癒士様のおかげ。ゼオンにも会えたし、わたくしはなにであの子に返せば良いのかしら)
戻ってきたことに安堵半分、これからを考えて素直に喜べない部分が半分と言ったところだった。
クルシスからウエストエンドに向けての街道は、クルシスより先に比べて人が多い。馬車もある程度走っているが、その馬車と同じかそれ以上で加速していくパウエル達6人に驚きの表情を浮かべる人が多かった。
大分ウエストエンドに近づいてきたことで、パウエルたち四人の表情が大分ほっとしたものに変わっていった。依頼を終えることが出来たことと生き残ることが出来たこと、どちらにしろ古代遺跡での経験はかなり大きかった。
だが、どちらにしろ一つ言えることが沙更が居なければ生き残ることが出来なかったと言う事実だけ。
「どちらにしろ、セーナちゃんに助けて貰ったような物だよなあ」
「うん、それはそうだよね。あたしなんか、いろいろと貰っちゃったし」
「それはミリアだけじゃねえだろ。リーダーを含め全員だぜ。まったく、あの子に俺たちは何が出来るのか、そこだけは考えていかねえとな」
「そうよね、セーナちゃんに助けて貰ってここに居るのは確かなのだから」
四人とも沙更を見る。そんな視線に気付いた沙更は、四人を見返しつつ首をかしげたのだった。
第132話 ウエストエンドへ向けて2
ウィンドウォークがエアウォークに進化した事で、パウエルたちの移動速度は下手な馬車並みにまで向上していた。徒歩の六倍の速度を叩き出す事と歩きの体の負担軽減の2つの効果が一行を包み込んだ。
クルシスからウエストエンドまでは馬車で四、五時間程。近いと言えば近いと言える。が、道が整備されている訳ではないので誤差は生じてしまうのはご愛嬌だ。
だが、沙更のエアウォークなら多少のデコボコも風が補助してくれる。なので、リエットの足でも負担少なく動くことが出来ていた。
そんな中、いきなり魔法が進化した事で少し考え顔をする沙更。
(大気の力が私達を後押ししてくれているのが分かる。そう言えば魔法の進化って、誰でもできる事なのかな?)
ふとした疑問を感じた沙更は、ヘレナにその話を振ると彼女は呆れた顔をしていた。
「セーナちゃん、魔法の進化は未だ誰も成し遂げていない未踏の領域だった。それを成し遂げたというのがどれだけの事だと思っているのです?」
「えっと、もしかして私やらかしました?」
「ええ、特大級のをですわ。でも、ある意味セーナちゃんでよかったのかも知れません。今まで出来なかった理由がなんとなく分かった気がしますし」
ヘレナはそう言って、魔法の進化の条件がある程度見えてきた事を話してくれた。今まで、魔法が進化した例は一回もなかったそう。だから、沙更の魔力が飛び抜けているからこそ出来る事なのだろうと推測が付く。
魔法を使う人間として、魔法が進化した唯一の例となったウィンドウォークはまさに注目の的になりかねない。少なくても魔法を研究している人間からしてみれば調べたくなるのは当然のことだった。
とは言え、沙更がそのたぐいの人間に手を貸すかと言われれば首をかしげるしか無いのだが。
そんなやりとりを見つつも、リエットは近づくウエストエンドに内心揺れていた。
(わたくしがウエストエンドに戻る日が来るなんて思ってもみなかった。本当に、幼い治癒士様のおかげ。ゼオンにも会えたし、わたくしはなにであの子に返せば良いのかしら)
戻ってきたことに安堵半分、これからを考えて素直に喜べない部分が半分と言ったところだった。
クルシスからウエストエンドに向けての街道は、クルシスより先に比べて人が多い。馬車もある程度走っているが、その馬車と同じかそれ以上で加速していくパウエル達6人に驚きの表情を浮かべる人が多かった。
大分ウエストエンドに近づいてきたことで、パウエルたち四人の表情が大分ほっとしたものに変わっていった。依頼を終えることが出来たことと生き残ることが出来たこと、どちらにしろ古代遺跡での経験はかなり大きかった。
だが、どちらにしろ一つ言えることが沙更が居なければ生き残ることが出来なかったと言う事実だけ。
「どちらにしろ、セーナちゃんに助けて貰ったような物だよなあ」
「うん、それはそうだよね。あたしなんか、いろいろと貰っちゃったし」
「それはミリアだけじゃねえだろ。リーダーを含め全員だぜ。まったく、あの子に俺たちは何が出来るのか、そこだけは考えていかねえとな」
「そうよね、セーナちゃんに助けて貰ってここに居るのは確かなのだから」
四人とも沙更を見る。そんな視線に気付いた沙更は、四人を見返しつつ首をかしげたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜
みおな
恋愛
学校帰りにいきなり眩い光に包まれて連れて来られたのは異世界でした。
王子はこんなちんちくりんは聖女ではないと言い放ち、私を王宮から追い出しました。
元の世界に帰る方法は、魔王の持つ帰還の指輪が必要と言われ、途方にくれた私の前に現れたのは、美形の魔王でした。
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる