月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第134話 家令ジーク

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月の魔女とよばれるまで

第134話 家令ジーク

リエットの事が分かったことで、衛兵の一人が辺境伯の屋敷に向かうことになった。

「済まないが、行った衛兵が戻ってくるまで待ってくれ」

そう言われれば、待つ事以外にやることは無い。無視して行くのも出来ない相談である。だからこそ、困ってしまったわけなのだが…。

しばらくして、辺境伯の屋敷から壮年の男性が呼ばれてきた。その人は、リエットを見ると一気に距離を詰めてきた。

「お嬢様!!よくぞ御無事で」

「ジーク!ごめんなさい、心配をさせてしまって」

「お嬢様が無事ならそれで良いのです。すぐに屋敷へ向かいますか?」

ジークと呼ばれた壮年の男性は、どうやら執事のような者らしい。リエットを見つつ、ジークはそう言いつつもパウエルたちを見た。その中から強い魔力を感じていたからだ。

(まだ若い冒険者か…。うん!?この魔力の量、一体誰だと言うのだ!?)

いぶかしげに、パウエルたちを見ていくと幼い娘に目が止まる。そう、沙更の魔力を感知している当たりが強者の証と言えた。

沙更の魔力は強い為に、魔力での隠蔽を施してある。だが、一定以上の力量を持つ人間か魔力をよく知る人間ならば、その隠蔽しているものを感じることが出来るのだ。

「ジーク、この人たちも一緒ではだめかしら?わたくしを助けてくれた冒険者の皆さんと幼い治癒士様なの」

「お嬢様を助けてくれたとあらば、恩義を返すが道理と言うもの。大人数用の馬車を用意致しますので、少しお待ちを願う形になりますが…」

ジークはそこまで言った所で、パウエルが口を開いた。

「自己紹介をしておかないといけないな。俺はパウエル、そこに居る冒険者四人のパーティー荒野の狼のリーダーをやっている」

「同じく、荒野の狼の索敵専門ミリアです」

「荒野の狼の攻撃専門、ガレムだ」

「荒野の狼の治癒専門ヘレナよ」

「荒野の狼の皆さんに連れられて、ウエストエンドにやってきたセーナと言います」

沙更を含めて、五人とも名乗るとジークは頷いた。

「リエットお嬢様から聞いたかも知れませんが、私は辺境伯家令ジーク。執事と言った方がわかり良いかもしれないが、お嬢様を助けていただいてこちらとしては感謝しか無い」

ジークがそう言ったところで、パウエルがさっきの話に事情を話すことにしたようだ。

「馬車を呼ぶのに時間がかかるのならば、先に冒険者ギルドに寄ってきても構わないだろうか?期限が近いクエストがあって、依頼を終わらせておきたいのだが」

パウエルの返答に、ジークは戻って馬車を用意するのもある程度の時間が必要になるのが分かっていたし、その提案を蹴る理由もない。

冒険者である彼らに、クエストの終了の報告は義務であってそれを止める必要はこちらにはない。ジークはそう判断し、次の言葉を紡いだ。

「こちらもしばしの時間がかかります。なので、その間に行ってくると良いでしょう。もし、こちらの方が早かったとしてもお待ち致しますよ」

その程度の時間位待てないのなら、馬車を呼ぶ意味が無い。それに、リエットを助け出して貰った時点で礼をしなければならないのは辺境伯家側だった。それだけに、その場を失うと言う愚かな真似をジークはしない。

身動きが出来なかったことで、リエットを失いかけたことが頭に入っていない訳がないのだ。ジークとして、身動き出来ないこの身が恨めしいほどだったのだから。

助けに行ける時間を捻出することが出来ていれば、自ら助けに行くつもりだったが忙殺されすぎて行くことすら出来なかった。それを分かっていて、咎めだて出来るわけがない。

衛兵たちは、ジークがリエットを認めたことで荷が降りたような表情をしていた。

「領主様の娘様なら、俺達が出る幕はない。ジーク様、後はお願い致します」

「こちらこそ、確認とは言え屋敷まて来てもらいご足労ありがとうございました。少しばかりですが、今日の夜にお使い下さい」

そう言って、ジークは衛兵たちに金貨を数枚手渡す。衛兵たちは、ジークの心遣いに頭を下げた。
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