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新たなる住処
第148話 ウエストエンドの孤児院
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月の魔女とよばれるまで
第148話 ウエストエンドの孤児院
ミリアとアレクが険悪な雰囲気に包まれる中、沙更は冷静にアレクとその後ろから現れたシスター達がこちらに仕掛ける気がないことを察知していた。
「教会の司祭様とは言え、魔力での優劣は流石に分かりますか」
「今の聖女様に、魔法で相手を出来る人間はいませんよ。昔に存在した英雄たちですら厳しいと見ます」
そこまで言ったアレクに、沙更は首をかしげる。
「教会は私に何を望んでいるのです?アレクさんの望みと教会の望みは違う物と思うのですが?」
「流石に聖女様は鋭い。上層部と私の望みの違いを見抜かれてしまうとは」
「上層部の方は読むのが簡単だと思う。権力を失いたくない人間が取る行動なんて、たかが知れているはず。で、アレク司祭は何を望むのですか?」
そう、直球でアレクの真意を確かめることにした。
「私の望みはおいおい話すことに致しましょう。今は中に入ってください。少なくても私たちが聖女様の邪魔をすることはありませんよ」
さらっと交わされてしまうが、それでも沙更は敵対する気は無いのだろうと言うところだけは読めたので、それ以上は何も言わないことにした。
アレクに促されて、孤児院の中に入る。
するとミリアが沙更に耳打ちした。
「ごめん、実はセーナちゃんに助けて欲しい子が居るの」
「大丈夫ですよ、ミリアお姉さん。なんとなく困っているのは分かっていました。私の力で手助けになれますか?」
「むしろ、セーナちゃんの力でダメなら諦めが付くと言った方が良いかも」
ミリアの表情が暗くなる。孤児院で、病気をした患者を抱え込んでしまうとお金が足りなくなってしまうのは言うまでも無い。見捨てる訳にもいかないが、それでも余裕が無くなってしまうのは致し方ないことであった。
それで無くても、今の代での辺境伯はその手の施しを一切しない。そして、その分お金を巻き上げていくため貧しくなる一方であった。
当然、孤児院の運転資金もかなり減っており、病気をした子を満足に治療士に見せることすら出来なくなっていた。
そこで、ミリアが考えたのがセーナの力を借りることだった。ミリアとしては、勝手に頼みにしていることからセーナが怒るかと思ったのだけど、あっさり了承されてしまって逆に恐縮してしまっている格好だ。
「ミリアお姉さんが困っているのなら手助けをすると私は決めているのです。せめて、子供くらいは助けてあげなければこの国は立ちゆかなくなってしまうでしょう」
その考え自体が既に聖女そのものと言われれば、そうなのかもしれない。が、沙更は聖女の名を欲しいとは思わない。強いて言うならば、魔女の方が似合うだろうなと思う。
強いて言うならば、神が同居するこの身だけに異端であることを認めざるを得ない。確実に人とは違うし、それを人は受け入れられない。
だからこそ、沙更はそんな自分を助けてくれるミリアを助けると決めているのだ。
「ごめん、いきなりこんなことを言われても困るとは思ったんだけど頼りに出来る人が居ないの」
「ミリアお姉さんが謝ることは無いですよ。私ならば助けられると思ったのでしょう?もしかしたら、知っている病気かも知れません。治せるとは言い切れませんが、好転できるかも知れませんしやるだけやってみましょう」
ミリアに連れられて、孤児院の中に入っていく。アレクも付いてくるようだ。
「出来れば、聖女様の魔法を我らにも見せて欲しいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「私の魔法は、かなり特殊ですから見ても学べるところは無いと思います。それでも良ければ」
アレクの言葉に、あっさりと許可を出す沙更。古代詠唱に沙更の想像力と前世での知恵がミックスされた魔法は、まさに神の領域に手が届いていると言っても良かった。
第148話 ウエストエンドの孤児院
ミリアとアレクが険悪な雰囲気に包まれる中、沙更は冷静にアレクとその後ろから現れたシスター達がこちらに仕掛ける気がないことを察知していた。
「教会の司祭様とは言え、魔力での優劣は流石に分かりますか」
「今の聖女様に、魔法で相手を出来る人間はいませんよ。昔に存在した英雄たちですら厳しいと見ます」
そこまで言ったアレクに、沙更は首をかしげる。
「教会は私に何を望んでいるのです?アレクさんの望みと教会の望みは違う物と思うのですが?」
「流石に聖女様は鋭い。上層部と私の望みの違いを見抜かれてしまうとは」
「上層部の方は読むのが簡単だと思う。権力を失いたくない人間が取る行動なんて、たかが知れているはず。で、アレク司祭は何を望むのですか?」
そう、直球でアレクの真意を確かめることにした。
「私の望みはおいおい話すことに致しましょう。今は中に入ってください。少なくても私たちが聖女様の邪魔をすることはありませんよ」
さらっと交わされてしまうが、それでも沙更は敵対する気は無いのだろうと言うところだけは読めたので、それ以上は何も言わないことにした。
アレクに促されて、孤児院の中に入る。
するとミリアが沙更に耳打ちした。
「ごめん、実はセーナちゃんに助けて欲しい子が居るの」
「大丈夫ですよ、ミリアお姉さん。なんとなく困っているのは分かっていました。私の力で手助けになれますか?」
「むしろ、セーナちゃんの力でダメなら諦めが付くと言った方が良いかも」
ミリアの表情が暗くなる。孤児院で、病気をした患者を抱え込んでしまうとお金が足りなくなってしまうのは言うまでも無い。見捨てる訳にもいかないが、それでも余裕が無くなってしまうのは致し方ないことであった。
それで無くても、今の代での辺境伯はその手の施しを一切しない。そして、その分お金を巻き上げていくため貧しくなる一方であった。
当然、孤児院の運転資金もかなり減っており、病気をした子を満足に治療士に見せることすら出来なくなっていた。
そこで、ミリアが考えたのがセーナの力を借りることだった。ミリアとしては、勝手に頼みにしていることからセーナが怒るかと思ったのだけど、あっさり了承されてしまって逆に恐縮してしまっている格好だ。
「ミリアお姉さんが困っているのなら手助けをすると私は決めているのです。せめて、子供くらいは助けてあげなければこの国は立ちゆかなくなってしまうでしょう」
その考え自体が既に聖女そのものと言われれば、そうなのかもしれない。が、沙更は聖女の名を欲しいとは思わない。強いて言うならば、魔女の方が似合うだろうなと思う。
強いて言うならば、神が同居するこの身だけに異端であることを認めざるを得ない。確実に人とは違うし、それを人は受け入れられない。
だからこそ、沙更はそんな自分を助けてくれるミリアを助けると決めているのだ。
「ごめん、いきなりこんなことを言われても困るとは思ったんだけど頼りに出来る人が居ないの」
「ミリアお姉さんが謝ることは無いですよ。私ならば助けられると思ったのでしょう?もしかしたら、知っている病気かも知れません。治せるとは言い切れませんが、好転できるかも知れませんしやるだけやってみましょう」
ミリアに連れられて、孤児院の中に入っていく。アレクも付いてくるようだ。
「出来れば、聖女様の魔法を我らにも見せて欲しいと思うのですがよろしいでしょうか?」
「私の魔法は、かなり特殊ですから見ても学べるところは無いと思います。それでも良ければ」
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