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新たなる住処
第149話 孤児院の重病人1
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月の魔女とよばれるまで
第149話 孤児院の重病人1
沙更の魔法は、現代魔法士が真似したくても出来る代物では無いからこそ出した許可だった。アレク司祭やそのお供であるシスター達には知っておいて貰う必要もあったからだ。
「私が使う魔法はかなり特殊かもしれません。参考にならないかもしれませんが、それでも良いですか?」
「見せて貰えるだけでも光栄という物ですよ」
アレクはそう言うとミリアと沙更の後ろに付いてくる。ミリアが沙更の手を取って、孤児院の中を案内してくれた。
かなり古い建物である孤児院は、やはり、所々崩れかかっている部分があり危険な場所もあるようだ。
「そろそろ、建て替えるかなにかしなければならないのかもだけどそんなお金ないから」
ミリアの困った顔を見て、沙更は少し考える。
(完全に建て直しは難しいと思うけど、修復ならなんとかなるかも?石造りの建物だし、時間を巻きもどす形ならそこまで不自然にはならないはず…。でも、いきなり新しくなり過ぎたらそれもそれで不自然かも)
ウエストエンドの最初期からならば軽く数百年はここにあることを頭に入れておく。最低限、崩れた部分と崩れそうな部分だけでも手を入れればまだ住むことは出来るから。
孤児院は石造りながら地上三階、地下二階と言う珍しい造りをしている。後にミリアから聞いたところによると今では建てることが出来ないらしい。作った工法がかなり前に失われたものらしく、復元も難しいそう。
やはり、沙更が思っているよりも困窮している感じがする。なんとか食べていくだけで精一杯と言った形だろう。そう言う面でも前辺境伯と今の辺境伯の差が大きいのだろうと感じざるを得ない。
(この状態じゃあ、ミリアお姉さんが気にしないわけがないよね。私が混ざってこの状態を直せれば良いけど、ご飯も衣服とかもなんとかしないと辛いかな)
そう考えているうちに、地上階での、一番奥に辿り着く。古びた鉄の扉から異臭がする。どうやら隔離はしていたけれど、病人に対しての看病はあまり出来ていないらしい。
ミリアお姉さんは、その部屋を見て悲しい表情を浮かべていた。
「ごめんね、セーナちゃん。孤児院で、重病の子が出るとここに入れられるの。対して、世話もしてあげられない。シスターたちもここには近寄らない」
「隔離部屋なのでしょう?孤児院で、そういう子が出たら治療すら厳しいのは分かります。未知の病気が怖いのは当然のことですし、ミリアお姉さんが謝る話ではありませんよ」
異臭がする時点で、衛生状態は最悪なのは分かった。ここから好転させることはむしろ簡単だ。部屋を綺麗にしてしまえば良いのだから。
とは言え、そのまま入ればこちらも感染してしまう可能性が大きい。綺麗にしている間だけでも感染を防ぐ必要があった。
後ろを見れば、アレク司祭は良いとしてもシスターたちの表情が悪い。こんな所に、病人が押し込められているなんて思いもしなかったのだろう。こういう事実があるということだけ頭に入れて貰えればいいと沙更は思う。事実を知っているか、いないかは判断にかなりの差を生むからだ。
部屋に入る前に、沙更は自分の全身に風の膜を作ることにした。少なくてもこれなら空気感染を遮断する事ができる上に、汚れた空気を吸わなくても良くなるから。
「風よ、私の声に応えて我が身を風で纏え。エアスクリーン」
沙更の声が響くと同時に、風が沙更の身を覆いこむ。風が安定した所で部屋の扉を開けた。
第149話 孤児院の重病人1
沙更の魔法は、現代魔法士が真似したくても出来る代物では無いからこそ出した許可だった。アレク司祭やそのお供であるシスター達には知っておいて貰う必要もあったからだ。
「私が使う魔法はかなり特殊かもしれません。参考にならないかもしれませんが、それでも良いですか?」
「見せて貰えるだけでも光栄という物ですよ」
アレクはそう言うとミリアと沙更の後ろに付いてくる。ミリアが沙更の手を取って、孤児院の中を案内してくれた。
かなり古い建物である孤児院は、やはり、所々崩れかかっている部分があり危険な場所もあるようだ。
「そろそろ、建て替えるかなにかしなければならないのかもだけどそんなお金ないから」
ミリアの困った顔を見て、沙更は少し考える。
(完全に建て直しは難しいと思うけど、修復ならなんとかなるかも?石造りの建物だし、時間を巻きもどす形ならそこまで不自然にはならないはず…。でも、いきなり新しくなり過ぎたらそれもそれで不自然かも)
ウエストエンドの最初期からならば軽く数百年はここにあることを頭に入れておく。最低限、崩れた部分と崩れそうな部分だけでも手を入れればまだ住むことは出来るから。
孤児院は石造りながら地上三階、地下二階と言う珍しい造りをしている。後にミリアから聞いたところによると今では建てることが出来ないらしい。作った工法がかなり前に失われたものらしく、復元も難しいそう。
やはり、沙更が思っているよりも困窮している感じがする。なんとか食べていくだけで精一杯と言った形だろう。そう言う面でも前辺境伯と今の辺境伯の差が大きいのだろうと感じざるを得ない。
(この状態じゃあ、ミリアお姉さんが気にしないわけがないよね。私が混ざってこの状態を直せれば良いけど、ご飯も衣服とかもなんとかしないと辛いかな)
そう考えているうちに、地上階での、一番奥に辿り着く。古びた鉄の扉から異臭がする。どうやら隔離はしていたけれど、病人に対しての看病はあまり出来ていないらしい。
ミリアお姉さんは、その部屋を見て悲しい表情を浮かべていた。
「ごめんね、セーナちゃん。孤児院で、重病の子が出るとここに入れられるの。対して、世話もしてあげられない。シスターたちもここには近寄らない」
「隔離部屋なのでしょう?孤児院で、そういう子が出たら治療すら厳しいのは分かります。未知の病気が怖いのは当然のことですし、ミリアお姉さんが謝る話ではありませんよ」
異臭がする時点で、衛生状態は最悪なのは分かった。ここから好転させることはむしろ簡単だ。部屋を綺麗にしてしまえば良いのだから。
とは言え、そのまま入ればこちらも感染してしまう可能性が大きい。綺麗にしている間だけでも感染を防ぐ必要があった。
後ろを見れば、アレク司祭は良いとしてもシスターたちの表情が悪い。こんな所に、病人が押し込められているなんて思いもしなかったのだろう。こういう事実があるということだけ頭に入れて貰えればいいと沙更は思う。事実を知っているか、いないかは判断にかなりの差を生むからだ。
部屋に入る前に、沙更は自分の全身に風の膜を作ることにした。少なくてもこれなら空気感染を遮断する事ができる上に、汚れた空気を吸わなくても良くなるから。
「風よ、私の声に応えて我が身を風で纏え。エアスクリーン」
沙更の声が響くと同時に、風が沙更の身を覆いこむ。風が安定した所で部屋の扉を開けた。
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