月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第152話 孤児院の重病人4

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月の魔女とよばれるまで

第152話 孤児院の重病人4

体力も免疫力も低下している少女に、手術みたいな物をしたら体力が持たない。そこも頭に入れてある。

それに、ミリアが冒険者を続ける理由も稼ぐ理由も孤児院の事があるからだと知っている。だから、沙更も持てる知識と魔力を注ぎ込むことに決めた。

(ミリアお姉さんの憂いを取り除く。あそこから助け出してくれたお礼の一部をここで返さなきゃ)

となれば、やることは決まってくる。少女に沙更が魔力で生み出す水をさらに浄化した物を与えること。そして、しっかり栄養を取らせること。

それらをする前に、少女の身体が蠢き出す。部屋を一気に浄化したことで、少女の中で侵食していた病魔が形を取った。

「何者だ、貴様!?これだけの光魔法を操るなどこの世界に居るはずがない!!」

「文句は、数千年前の古代人に言って。それに、こんな少女に悪魔が浸食するなんて、それほどこの子の身体がおいしいと言う事?」

「貴様、人間では無いな!?その魔力、古代魔法士か?いや、その力はまさか!!」

病魔は沙更の力を感じて、畏怖を感じていた。そう、神の純度を持つ魔力を持つ少女など存在してはならなかった。最後の神であった月女神がいなくなって、数千年が経って神の加護を失った人間は脆弱になる一方。

だが、それを喜ぶ物もいた。モンスターである魔物の一団である。この世界とは別の世界に住み、光ある世界を手に入れたくて、この世界に攻め込んでは撃退されてきた。今でも高位のモンスターは、一万年前の大戦の傷が未だに癒えていない。

月女神一人に、全てのモンスターを撃退されてしまったからだ。その後、人間と神を離間させて神を殺し、モンスターたちの有利になるように画策したことは成功した。

今、また攻め込もうと魔力の高い子供を悪魔達は狙っていた。子供を殺し、その魔力を得ることで自分たちの力を得るために。

そして、この世界を攻略しやすくするために世界に混乱を引き起こさせていたのもそのモンスター達だ。月女神の眷属もそちらに属している。

「いや、ここで貴様を取り込めば上位モンスターに肩を並べるどころかこの世界を握ることすら出来よう」

「己に過ぎたる力は及ばざるがごとし、力を追い求めるばかりに自分の力を顧みない者に訪れるのは平等なる死だけ。死は安寧であり、輪廻でもある。けれど、それは神と人間の契約。魔の者に、それは準じない」

沙更は、さらっとそれだけ言うと病魔が沙更に襲いかかってきた。

いきなりの闇の気配に、ミリアもアレクもシスターたちもぎょっとする。ここで、魔の者と対峙することになろうとは誰も想像できない。

魔の者が襲いかかってくるが、それをエアスクリーンが弾く。高度に圧縮された空気が病魔の攻撃をいなしたからだ。下手な攻撃では、この高度に圧縮された空気の膜を打ち破ることは出来ない。

「くっ、我が攻撃を弾くだと!?」

「エアスクリーンの膜を打ち破ることも出来ないなら、あなたはそう高位の存在では無い。下手に仕掛けなければ、あなたと言う存在の力も察知されることもなかったでしょうに」

沙更は病魔の力をエアスクリーンの膜を貫けなかったことで把握することが出来ていた。そして、その事により月女神の眷属よりも下位の存在であることを理解したのだ。
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