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新たなる住処
第155話 治療を終えて
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月の魔女とよばれるまで
第155話 治療を終えて
寝ている少女の顔に、治療前とは違って苦しそうな感じは見受けられない。急速に体調が良くなったとは言え、まだ完全では無かった。
「ミリアお姉さん、しばらく私は彼女の治療をします。今日で確実に命を取り留めることは出来たとは思いますが、ちょっと経過をみたいです」
「セーナちゃんには感謝しか無いよ。だから、これからもよろしくね」
ミリアはそう言って沙更の手を握る。ミリアから手を握ってきたことに、沙更は自然と笑みを浮かべていた。
「ミリアお姉さんの手、温かいです。それに、そう言ってくれて嬉しい」
「もう、そう言われちゃうと照れくさいよ」
そう言いつつもミリアは沙更がそう言ってくれたことに嬉しそうな表情を浮かべる。
その一方、もの凄い治療を目の当たりにしたアレクとシスターたちは余りのことに衝撃を受けていた。聖なる属性に光属性を上乗せして人体に注ぎ込むなんて事は今の人間に出来ることではない。
聖女と言ったが、幼い彼女はそれを遙かに超える存在では無いかと思ったのだ。
そんなことを考えているアレクたちだが、沙更はそれに気付いていた。
(私は、人の尺度で測れるとは思ってないからそれを理解するまで時間が掛かると思う。その時にどういう判断をするかによるかな)
そう思いつつも、今は助けられた少女の顔を見つつもちょっとほっとした表情を浮かべる。ミリアの望むようにしてあげたかったから、それに添えたことだけで十分だったから。
「いきなり孤児院に連れてきて、助けてって言ったことを守ってくれちゃった」
「ミリアお姉さんがそれを望んでいたのは分かりましたから、それに応えてあげたいって思っただけです。ただそれだけ」
「もう、セーナちゃんにどれだけ恩を返せるんだろう。なんか、望んだら応えてくれちゃったから本当にそう考えちゃう」
ミリアとして、困った状態になっていたのは言うまでも無い。でも、ミリアが欲深い人間で無かったことが幸いしていた。
これだけのことが出来る子ならば、他にも欲しがってもおかしくは無い。だが、ミリアはそれをしない。望みすぎている事を知っているから。
望めば望むだけ自分の願いが叶えられるとするのなら、欲望の限り際限が無くなるはずだ。人間はそう言う意味でも弱い物だから。
だが、この場で言うのならミリアは強い人間で間違っては居ない。自分の欲望に忠実ではないと言う事。そして、沙更に願う事は、余程大事なことだけと心で決め込んでいたことだった。
沙更の存在は、そう言う意味でも劇薬なのだから。
そんな風に話をしていると沙更もミリアもお腹が減ってきたことを自覚する。既に夕暮れはとうに過ぎていた。お昼もまともに食べていなかった事を考えるとそろそろ厳しいのは言うまでも無い。
「頑張りすぎたからかお腹が減ってきました。ミリアお姉さんもでしょう?孤児院の食事事情も余り良くないのですよね?」
沙更の質問に、ミリアは苦笑を浮かべてしまう。何というか見抜かれてしまっている気がしていた。けれど、その感覚が何というか心地良いと感じてしまう当たり、毒されているなあと思う。
「セーナちゃんなら分かっちゃうよね。ごめん、そこもいろいろと助けて欲しい」
「助けた子の事もありますし、ミリアお姉さんが気にしているのも分かります。お世話になっているからってところでしょうか?」
「あたしはここで育ったから恩を返したくて・・・。でも、まだ上手くいってない気がするんだよね」
ミリアとして、ここまで育ててくれたこの場所に恩を返し切れていないと感じているのを沙更は理解した。現状が悪すぎるから、返しきれないのを肌で感じてしまうのだと。
第155話 治療を終えて
寝ている少女の顔に、治療前とは違って苦しそうな感じは見受けられない。急速に体調が良くなったとは言え、まだ完全では無かった。
「ミリアお姉さん、しばらく私は彼女の治療をします。今日で確実に命を取り留めることは出来たとは思いますが、ちょっと経過をみたいです」
「セーナちゃんには感謝しか無いよ。だから、これからもよろしくね」
ミリアはそう言って沙更の手を握る。ミリアから手を握ってきたことに、沙更は自然と笑みを浮かべていた。
「ミリアお姉さんの手、温かいです。それに、そう言ってくれて嬉しい」
「もう、そう言われちゃうと照れくさいよ」
そう言いつつもミリアは沙更がそう言ってくれたことに嬉しそうな表情を浮かべる。
その一方、もの凄い治療を目の当たりにしたアレクとシスターたちは余りのことに衝撃を受けていた。聖なる属性に光属性を上乗せして人体に注ぎ込むなんて事は今の人間に出来ることではない。
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そう思いつつも、今は助けられた少女の顔を見つつもちょっとほっとした表情を浮かべる。ミリアの望むようにしてあげたかったから、それに添えたことだけで十分だったから。
「いきなり孤児院に連れてきて、助けてって言ったことを守ってくれちゃった」
「ミリアお姉さんがそれを望んでいたのは分かりましたから、それに応えてあげたいって思っただけです。ただそれだけ」
「もう、セーナちゃんにどれだけ恩を返せるんだろう。なんか、望んだら応えてくれちゃったから本当にそう考えちゃう」
ミリアとして、困った状態になっていたのは言うまでも無い。でも、ミリアが欲深い人間で無かったことが幸いしていた。
これだけのことが出来る子ならば、他にも欲しがってもおかしくは無い。だが、ミリアはそれをしない。望みすぎている事を知っているから。
望めば望むだけ自分の願いが叶えられるとするのなら、欲望の限り際限が無くなるはずだ。人間はそう言う意味でも弱い物だから。
だが、この場で言うのならミリアは強い人間で間違っては居ない。自分の欲望に忠実ではないと言う事。そして、沙更に願う事は、余程大事なことだけと心で決め込んでいたことだった。
沙更の存在は、そう言う意味でも劇薬なのだから。
そんな風に話をしていると沙更もミリアもお腹が減ってきたことを自覚する。既に夕暮れはとうに過ぎていた。お昼もまともに食べていなかった事を考えるとそろそろ厳しいのは言うまでも無い。
「頑張りすぎたからかお腹が減ってきました。ミリアお姉さんもでしょう?孤児院の食事事情も余り良くないのですよね?」
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「セーナちゃんなら分かっちゃうよね。ごめん、そこもいろいろと助けて欲しい」
「助けた子の事もありますし、ミリアお姉さんが気にしているのも分かります。お世話になっているからってところでしょうか?」
「あたしはここで育ったから恩を返したくて・・・。でも、まだ上手くいってない気がするんだよね」
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