月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第161話 孤児院の現状6

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月の魔女とよばれるまで

第161話 孤児院の現状6

沙更がミリアの食事を作り終えるまでさらに15分ほど掛かった。だが、作り始めて30分で作った料理にはとてもじゃないが見えなかった。

溶き卵と鶏肉に葉野菜のすいとん汁。夜ご飯としてはかなり量が足りないとは思うが、それでも今作れる料理として栄養は豊富になるようにしたつもりだ。

「ミリアお姉さん、今の私が持っている材料だとこれが限界です。パンとかを焼くにも酵母がないので、ふっくらしたパンは望めません。ある程度工夫すれば、焼けなくはないかもですが現状だとそれにチャレンジしている状況でもありません」

「ううん、こうやってセーナちゃんが作ってくれたご飯はおいしいよ。本当に塩だけで作ったとは思えないんだよね。それだけでもかなりの腕だって分かるから、こちらこそいつもごちそうになってばかりだからごめんね」

沙更からしてみれば、腕を振るいようが無い事を謝り、ミリアからしてみればその状況下で作って貰っている事を謝ると言う面白い状態と言えた。

が、それは当人達の間のことであり、それがシスターヴァレリーみたいに助けて貰う側となればいたたまれない状況になってしまうのだ。

孤児達やシスターヴァレリーと他数人分をなんとか確保しているだけの状態で、ミリアと沙更に分け与えられもせず当人達が持っていた食料を使っての調理で、孤児院で作れない料理を作り出されてしまっては立場がなかった。

そして、孤児達よりも若干下である沙更がこれだけの立派な料理を作り出してしまうのだから、どれだけの知恵と経験を持ち合わせているのか気になってしまうのも無理は無かった。

さらに、そこに匂いに誘われたのかアレク司祭とシスター達までやってきたからまた混沌としてきてしまう。

「まさか、聖女様が料理を嗜まれるとは思いも寄りませんでしたよ」

「アレク司祭、料理は奥深いものです。それに、作れなければ飢えるのは自分なのです。作ってみることに挑戦しないわけがないでしょう」

アレクの言葉に、沙更がさらっと答える。料理が出来なければ飢えるだけと言うのは、この世界では当たり前のことである。お金があるのなら、食堂などで食べることが出来るだろうが孤児院でそんなことは出来るわけも無い。

それに、元々持ち合わせの食料を持つからこそ調理をすることでその幅を広げることが出来る。少しでも良い物をミリアに食べて貰いたいと言う心で、料理をする。それを止めることは今の沙更にとってあり得ないことだった。

葉野菜に鶏肉を煮込んだスープに塩で味付けをした簡単なものではあったが、それでも普通の塩スープに比べれば滋養もあるし、卵を溶いていれてあるのでそれだけでもかなりの違いがあった。

シスターたちもそのスープに、興味があるようだ。それもそのはず、沙更が作ったスープは徐々に繊細さを増してきているからだ。

「なんかこれだけの人数に見られていると落ち着きませんね。ミリアお姉さん、冷めないうちに召し上がれ」

「セーナちゃん、ありがたく食べさせて貰うね」

鶏肉と葉野菜と共にすいとんを食べるミリア。初めて食べるものの、薄味ながらしっかりとすいとんに味が付いていることでどんどん食べていってしまう。

なんだかんだで10分ほどで、作った分を完食してしまった。量もそこまでなかったことで、ミリアとして多少物足りない気がしたけれど、お腹は膨れたのを感じる。

その表情に、沙更はほっとした表情を浮かべる。実は自分の材料もミリアに使ってしまって、もう小麦粉と葉野菜くらいしか材料が残っていなかったのだ。
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