月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第164話 孤児院の重病人6

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月の魔女とよばれるまで

第164話 孤児院の重病人6

次の日、沙更はミリアに抱きしめられたまま眠ってしまい、起きたときにもそのままだった。おかげで、トラウマによる悪夢を見ることもなく、素直に眠ることが出来た。

静かに起きるとミリアに抱きしめられたままだったことを思い出しつつも、腕からするりと抜ける。そのまま、開拓村で着ていたもう一つの服に着替えると孤児院の一番奥の部屋までエアウォークを発動させると一気に駆けた。

実際、ミリアの部屋からだと一階外に出た方が近道だったりする。それもあり、一気に風の力を使って跳躍。大気が後からが沙更を後押ししてくる為、常人では出来ないほどの大ジャンプで一気に近道をして部屋の前までやってきた。

(昨日あれだけの治療を施したけれど、その後の経過も見ないと危険だから)

そう思いつつも沙更は部屋の扉に手をかける。昨日浄化したこともあり、扉自身もさび付いたりしていたのも今ではすっかり直っていた。

扉を開けると昨日治療をした子がまだ眠っていた。昨日よりも明らかに血色が良くなっていることを確認するとほっとした。いきなり魔力を与えてみたり、身体から浄化してみたりとかなりの荒療治と言えなくも無い。

一時的に効果が出ているだけと言う事も頭に入れていたから、経過を見たかったと言うのもある。

寝ている子の容態を見つつ、沙更は少なくてもあの治療法で効果が出たと言う事実が大きかった。子供であれば、あの病気から救う手立てがあると言うことは、少なからず希望になるものだったからだ。

沙更がしばらく寝ている子を見ていると寝ていた子が目を覚ました。

「う、うぅぅん…」

目を開けた彼女が沙更の姿に気付いて驚いた顔をする。

「ここ、孤児院でも隔離部屋だよ。病気の人間が居る場所だから、ここに居ちゃダメ」

「大丈夫ですよ、この部屋は完全に浄化しました。今は多分雑菌もそこまではいないはずです」

そう返されたことに再度驚くが、そう言われて見るといつもの異臭がしないことに気付く。それに、妙に部屋が明るい気がしているのも変だと気付かされる。

「えっ、ここの匂いもあの死が待つ感じも消えてる」

「病人が居る場所に相応しくなかったので浄化しました。それに、貴女にも治療を施しましたのでしばらくは大丈夫でしょう。これだけ話をして、血を吐かないのがその証拠」

沙更は、彼女が話をしていて咳き込まないことを確認して内心ほっとしていた。ここまで効果が出る魔法だとは思っていなかったからだ。

が、これは沙更がそう思っていたことであり、この世界の治癒士からしてみればどれだけの治療をしたと仰天されるレベルだと言うことをまだ知らない。

光、水、風の三属性を操り治療する。それがどれだけ高度な治癒方法だと言う事に気付くまでまだしばらくの時が掛かるのだが、それはまた別の話。

沙更に吐血していないことを知らされ、驚きの表情を浮かべる。そう言えば、いつもに比べると全然苦しくない事を感じた。

「あの、もしかして貴女が治療してくれたの?」

「そう、ミリアお姉さんに頼まれたの。ずっと寝たままの子が居るから助けて欲しいって」

彼女の言葉を素直に肯定する沙更。きちんとミリアが頼んだことも教えてあげる。そもそも沙更とこの子に接点はない。ミリアが困っているから、沙更が手助けになるならと治療を施した格好だった。
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