月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第169話 セーナの冒険者登録1

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月の魔女とよばれるまで

第169話 セーナの冒険者登録1

ウエストエンド冒険者ギルドの中に入ると冒険者達がかなりいた。辺境唯一の都市であるウエストエンドは、それなりに仕事が多い。質が下がったとは言え、それでも仕事が多いことには変わりは無いからだ。

そんな中、唯一と言って良い五歳の沙更は完全に周囲から浮いていた。ギルドについて村娘の隠蔽を解いた。エーテルドレスにスターサファイアのロッドの二つは、どうしても目立つ。

それに、漏れ出る魔力量に魔力視などの魔力を感知できる魔法士達の顔色が悪くなっていく。それもそのはず、漏れ出ている魔力量ですら数十万単位を越えている。そんな強大な魔力を感じたら、恐怖を感じたとしてもおかしくは無い。

魔法士達は、どこからこの魔力を感じるかを探る。そうして行き当たったのが沙更だった。

「なっ、こんな小娘がこれだけの魔力を!?」

はっきり言えば、これだけの魔力を持てる人間はいない。そして、魔族自体も既にこの世界から消えて久しい。残るは神を目指してなりきれなかった者くらいだろう。

だが、沙更はその神になりきれなかったと言うカテゴリーからは外れる。それ故に、理解の外になってしまうのだが今回はそれでも問題は無かった。

そこに、40後半の男と20代前半の女性が三階から降りてきたからだ。

「なかなかに騒がしいなあ、おい」

「昨日、予約をしてくれた荒野の狼のメンバーと貴女が今回の予約者ね」

三階から降りてきたのはギルドマスターのダイスとギルドのチーフで、暫定でサブギルドマスターを務めるルーカであった。

「この前のクエストでいろいろと不具合があったとは聞いた。てか、相手が月女神の眷属だったとはな」

「ギルドマスター、その件ですけどやっぱりこの前解雇したサブギルドマスターが関与していたみたいです。本当ならAランク冒険者でも厳しい案件だったはず」

「そんなクエストでも生きて帰ってきたんだから大したもんだ。で、その嬢ちゃんが今回の対象者ってことか?」

ダイスはそう言って、沙更を見る。漏れ出ている魔力とは違い、沙更は漏れている魔力を一端遮断する。漏れていた魔力が消えたことで、一気に空気が軽くなるのをダイスもルーカも感じて驚きの表情を浮かべた。

「驚いたな、あれだけの魔力をあっさり制御しやがっただと!?」

「凄いですね、あれだけの魔力をあっさりと制御してのけるなんて」

驚く二人を見つつ、沙更は何事も無かったかのように口を開く。

「いろいろとお手数をおかけします。この年で、冒険者になると言うのはかなりの異例だと思うのですが大丈夫でしょうか?」

余りにも丁寧な言葉が、この幼い娘から出てきた事にダイスもルーカも驚くばかり。

「むしろ、ミリアたちに付いていく気なら冒険者の資格が無ければ付いていくことすらままならないぞ?」

「だから、貴女の力を教えてちょうだい。ミリア達を救ってくれた貴女だからこその特例と言ったところよ」

普通ならば、五歳と言う年で冒険者になることなど出来ない。冒険者見習いになるのが本当なら13歳からなのだ。だが、ミリア達を助けてあの高難易度のクエストから生還させたと言う事実はその規定よりも衝撃的だったのだ。
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