月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
192 / 365
新たなる住処

第177話 ギルドマスターの悪い癖

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第177話 ギルドマスターの悪い癖

ダイスとの模擬戦と言うより、尋常なる果たし合いになってしまうのがルーカの頭痛の種である。高ランク冒険者の心をへし折るその行為に王都へ逃げる冒険者が多くなってしまった。

必然的に質が落ちてしまったのはダイスが片棒を担いでいたからでもある。それ以前に、ギルドマスターが果たし合いをしている時点でおかしいのだが。

どちらにしろ、拒否権は無いのをミリアは理解していた。

やはり、今まで元であってもAランクの冒険者と戦うことなどなかったことで、身体が緊張してしまうがそれも無理はなかった。

それでも、受けるしか無い為平静を保つことにする。

ルーカが頭を抱えている中、ダイスがミリアを見据えて口を開く。

「真剣勝負。俺の愛剣でいざ尋常に勝負と言いたいんだが、マジで真剣勝負するとなると命のやりとりになりかねん。流石にそれはまずいので、命の結界を張らなければならん。セーナちゃんに魔力を込めて貰いたいが出来るか?」

そう言われて、沙更としては首をかしげるしかない。命の結界自体を知らないのだから。だが、装置に魔力を込めるのならばそれは思ったところで、沙更を好む魔力がその意思に応えてくれる。

かくして、装置に魔力が込められた事により、命の結界が発動する。だが、それは死なないだけで怪我はそのままになる欠陥品であった。元々、死ぬことも怪我もしない物であったそうだが年月を経るごとに破損していき、今では命を守るだけの結界になってしまっていたのだ。

そのことをダイスもルーカも知らない。だが、沙更はこの装置に魔力を込めた時にその記憶を感じ取っていた。時空間魔法を操る事が出来るからかもしれない。

欠陥があることを感じ取った沙更は、いつでも怪我を癒やせるようにスターサファイアのロッドを手に取っておく。全力で魔力を使うことになるかもしれないから。

命の結界が張られたことをダイスは確認するとおもむろに腰の袋に手を突っ込む。どうやら、その袋がマジックボックスになっているらしい。沙更の虚空庫の劣化版で、小さい袋に魔法をかけてある程度の容量まで拡張したものだ。ダイスが現役の時に、古代の遺跡から手に入れた物で今も効力は落ちていないらしい。

そのマジックボックスからミスリルで出来たブロードソードを取り出す。冒険者時代からの愛剣のようだ。それに対して、ミリアはいつものように白の直刀を握る。

命の結界の範囲内は、どうやらこの部屋から一時的に別空間となるらしい。刃物を振るってもこちらには影響が無いようだ。結界だけに、範囲外には中の効力は及ばないと言う事。命を失わないのとその範囲内での出来事にこちらが干渉できないこともだ。

結界が張られたのを確認して間もなく、開始の言葉もないままいきなりダイスが動く。そもそも、結界を張ったところで始める気満々だったからそれでも待った方なのだろう。

そう言う意味では、少なからず脳筋気味なのは否めない。いきなり仕掛けてきたダイスの剣をミリアは白の直刀で打ち合わせる。刃渡りでは確実に負けるけれど、それでも小回りが効く白の直刀で守りに入ったことで膠着状態に陥ることになるとはダイスも思っていなかった。

実際、守りならば小回りが効く方が優れる。とは言え、ミリアの力量がダイスに近づいていなければそれすら難しい。が、今のミリアの力量はあの月女神の眷属とのつばぜり合いをこなした事による経験が加味されていることで、大分臆せず動けていた。

これに、驚いたのがダイスだ。それもそのはず、急激な成長を遂げたとは言え元Aランクの冒険者だけに自分の能力に自負を持っている。その動きに対応してくると言う時点で、同ランクに近い力を持つ事を証明していたのだから。

(まさか、俺の動きに対応してくるとはな。まさに予想外だ。ここまで成長しているとなれば、ゴブリンロードであったとしても倒してこれると言う事か、面白い)

まず、ミリアと打ち合わせたことでそこまでの力量がある事を見抜くあたりは、腐ってもギルドマスターなのだろう。だが、ミリアの力はこの程度ではない事をまだ知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

私が目覚めたのは断罪劇の真っ最中でした

アーエル
ファンタジー
「今北産業、説明ぷりーず」 「「「…………は?」」」 「今北産業、状況説明ぷりーず」 だれか説明してくださいな ☆他社でも公開しています

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

処理中です...